勝海舟 (中公新書 158 維新前夜の群像 3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (194ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121001580

作品紹介・あらすじ

維新前夜の群像 第3;参考文献: 188-190p

感想・レビュー・書評

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  • 書物の勉強や、オランダ人の授業からでは解らなかったこと、外国へ来てみて初めてその根本的な違いに気付かされたのは、むしろ社会制度の問題である。
    福沢も、「理学上の事に就いては少しも胆を潰すと云うことはなかったが、一方の社会上の事に就いては全く方角が付かなかった」と書いて、例の有名な、ワシントンの子孫の話をもちだしている。―福沢はふと気がついて、ワシントンの子孫はどうなっているかと聞いたところ、だれも知らない。アメリカでは共和国で大統領は四年交代と書物では知っていても、一方では、ワシントンといえば日本では徳川家康で、その子孫は代々将軍だ、とすぐに頭が働いてしまう。そのためアメリカ人がワシントンの子孫のことなど知らないというのを非常に驚き、「是れは不思議と思うた」わけである。(p.71)

    もちろん海舟も、そうした中間的、つなぎ的な位置に甘んじていたわけではあるまい。海舟は海舟なりに、自己の道を開こうとしている。彼は自己のもつ最大の武器である海軍を通じて幕閣の中枢に近づき、幕府全体を自分の構想する道へ引っぱっていこうとする。彼はまだここでは幕府を見限っていないのだし、幕府を公然と見限っていては、彼の立場も、またその専門知識を生かす場もなくなってしまうのである。海舟は、どこまでも実務家であって、思想家ではない。(p.100-1)

    この「必勝を未前に察」して、しかも戦わないのが、海舟の「公」なのである。いま征東軍は、天子を擁し、大勝に気をよくしてかさにかかってきている。しかし「我今至柔を示して、之に報ゆるに誠意を以し、城渡す可し、土地納む可し、天下の公道に処して、其興廃を天に任せんには、彼また是を如何せむや」である。こちらが「公」を貫けば、先方もまた「公」でもって応ぜざるをえまいというのだ。(p.166)

    海舟は、自分の方に「公」があると信じている。しかも彼はその自分の立場を、外国人の前で日本人同士が争うのはやめようという、非常に強固な議論でもって補強している。(p.178)

  • 明治維新の成就には、高杉晋作、坂本龍馬など倒幕の志士たちと並んで、幕府内開明派の役割を無視することはできない。咸臨丸を指揮して日本人初の太平洋横断、神戸海軍操練所の開設による志士との接触、西郷隆盛との会談を通しての江戸城無血開城実現など、そのには、時代の要請する海軍の技術を習得しつつ、官僚としての地位を昇りながら、なお統一国家のビジョンを持つにいたる幕臣勝海舟の紆余曲折に満ちた生涯がある。(1968年初版、1996年第37版)
    ・はじめに
    ・Ⅰ 修業時代
    ・Ⅱ 海舟の登場
    ・Ⅲ 長崎伝習と咸臨丸渡洋
    ・Ⅳ 国内一致への模索
    ・Ⅴ みずから倒れ、みずから削り
    ・Ⅵ 最後の仕事
    ・むすび

    1968年刊という古い本、生い立ちから江戸開城までを解説している松平慶永の大政奉還論など面白い。長州征伐の後始末、宮島の会談では一新(大政奉還)をもって長州藩を説くも慶喜の裏切りによって梯子を外されたとの事。

  • 同じ著者の「勝海舟と西郷隆盛」より古いが読みやすい。アプローチが全然違うが。要査読。

  •  松浦玲『勝海舟』(中公新書 158)

     同じ方の『勝海舟と西郷隆盛』 (逆か?)という本を読んだ事があるのですが、あちらが明治以降が中心なのに対し(当然と言えば当然なのかもしれませんが)、こちらは幕末中心です。
     幕末に幕臣として活躍した勝が何を考えながらどのように行動したのか、幕末は苦手だったのですがわかりやすかったです。
     しかし、ペリー来航時の皆の年齢が最初に列挙されているのですが、活躍した人たちの若い事(笑)
     一方でその師匠クラスの人たちはもうすぐ還暦という感じの人たちばかりで、世代の差って怖いなあとか思ったりもしました。
     しかし…30代って本当に大変な時期なんだなとか感じた一冊です、30代で歴史的大事件には巻き込まれたくないですね…

     ところでこれ、岩倉さんの年齢は間違えています…よね………?

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    [ 参考となる書評 ]

  • 勝海舟。
    ほとんど唯一、最後の幕臣にして、江戸無血開城の立役者。

    この時期の人物なのに、キッタハッタの話が一つも出てこないところも興味深い。

    ………

    スルト、皆は、海軍所の所に集って、火を焚いて居た、
    慶喜公は、洋服で、刀を肩からコウかけて居られた。
    己はお辞儀もしない。頭から皆に左様言うた、
    アナタ方、何んと云う事だ。此れだから私が言わない事じゃあない、
    もう斯うなってからどうなさる積もりだ、とひどく言った、
    上様の前だからと、人が注意したが、聞かぬ風をして十分言った。
    刀をコウ、ワキにかかえてたいそう罵った、
    己を切ってでも仕舞うかと思ったら、誰も誰も、青菜のようで、少しも勇気はない、
    かく迄で弱って居るかと、己は涙のこぼれるほど嘆息したよ。

    ………

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