長崎奉行: 江戸幕府の耳と目 (中公新書 905)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121009050

作品紹介・あらすじ

鎖国の時代に、唯一の海外への公認窓口であった長崎-この要衝を管掌するため江戸から派遣されたのが長崎奉行である。旗本の中でも,特に有能な人材が選ばれ、近隣の西国大名にさえ影響をおよぼすほどの権限が与えられた。本書は、それゆえに、弊害と悲喜劇を引き起こしたエリートたちの姿を描く。

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  • 鎖国の時代に、唯一の海外への公認窓口であった長崎―そこは異国の文化、情報、物流が流入するだけでなく、軍事、宗教、経済などによる侵略、侵害の可能性が予想された。この要衝を管掌するため江戸から派遣されたのが長崎奉行である。旗本の中でも,特に有能な人材が選ばれ、近隣の西国大名にさえ影響をおよぼすほどの権限が与えられた。本書は、それゆえに、弊害と悲喜劇を引き起こしたエリートたちの姿を描く。(1988年刊)
    ・はじめに
    ・Ⅰ 近世都市・長崎の成立
    ・Ⅱ 長崎奉行の性格
    ・Ⅲ 幕府と諸藩の狭間
    ・Ⅳ 碧い眼と長崎奉行
    ・Ⅴ 二〇〇〇人の地役人
    ・Ⅵ 禁教と鎖国政策
    ・Ⅶ 行政の展開
    ・Ⅷ 事件の中の奉行
    ・Ⅸ 幕末の奉行
    ・あとがき
    ・資料

    長崎奉行の概要がわかる良書。江戸幕府においては遠国奉行の一つであるが、長崎の行政官・司法官としての役割だけでなく警備司令官、商務官としての役割もあった。また、幕末には外交官としての役割も大きくなる。江戸初期は「将軍の買物掛」としての将軍の家政機関としての側面をもっており、地位もさほど高いものではなかった。キリスト教が禁止されると信徒弾圧に辣腕を振るうが、貿易量の増加に伴い次第に経済官僚としての役割が高くなってくる。
    これに伴い、幕府内での地位も向上し、元禄二年には諸大夫(五位)とし、十二年以降には、遠国奉行の筆頭に位置付けられた。
    長崎奉行の特色は2000人もの地役人が実務をに担っていたことであろう。通訳を務める、唐通事、オランダ通詞も地役人であった。唐通事は、単なる通訳にとどまらず、貿易取引についてはかなりの裁量権を持ち、その役割は、中国人との間の外交官でもあり商務官でもあったという。(ゆえにオランダ通「詞」とは異なり特に唐通「事」と書かれたという)
    フェートン号事件の概要を知ることが出来たのも良かった。1808年、イギリス船がオランダ国旗を掲げ長崎港へ入港し、オランダ商館員を拉致した事件である。食料や水と引き換えに人質は解放され、船は退去したものの、日本側はなすすベがなく、責任を感じた長崎奉行松平図書頭は自害する。

    新書という性質上、概要の解説に留まるが、長崎奉行を知る上で、参考となった。

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著者プロフィール

1932年、長崎市生まれ。1961年、広島大学大学院博士課程国史専攻単位修了。佐世保工業高等専門学校助教授、長崎大学教育学部教授、長崎県立シーボルト大学教授などを歴任。2013年、没。
【主要著書】『大友宗麟』(吉川弘文館、1975年)、『長崎奉行』(中公新書、1988年)、『中世長崎の基礎的研究』(思文閣出版、2011年)、『長崎史の実像 外山幹夫遺稿集』(長崎文献社、2013年)

「2022年 『大村純忠』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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