- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121011374
作品紹介・あらすじ
十二使徒のひとり、聖トーマスに由来する地名サントメは世界各地にある。南インドのマドラス市にもある。サントメの名に欧米人は殉教の聖者を連想し、江戸中期の日本人は、粋な縦縞「さんとめ」を思う。十二使徒の名が、なぜ南インドの地名に変身し、近世日本の「粋文化」を飾る木綿縞に転じたのか。舞台を江戸日本と、近世初期の南インドに求め、英蘭両海洋帝国の盛衰のドラマに、マドラスの歴史文化を探り、「さんとめ」縞の日本伝播を見る。
感想・レビュー・書評
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●構成
第一部 江戸の天竺文化、「桟留」
第二部 南インドの港市・聖地、サントメ
第三部 商館都市、マドラスの台頭
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綿布を通じて、日本の江戸時代に流行した「桟留」(さんとめ;縦縞模様)と世界各国の地名「サン・トメ」(聖トーマス)、そのうちの一つであるインドのサントメの宗教的含意、東インド会社によるインド産の布の交易の3つを繋ぐ。
著者自身も三部それぞれがほぼ独立していると書いているが、確かに独立している。どちらかというと議論が発散していて全体として違和感を感じる。もう少し有機的な関連性を見せて欲しかった。
個人的には桟留模様の部が一番面白かった。縦縞の粋を宣言する九鬼周造の論考が興味深い。要約すると、縞模様の中でも縦縞が最も粋である。その理由は、日本人の気質としての二元性――意気地と諦め――視覚的に表現するものが縞模様の平行線であること、縞の中でも横と縦の直線がもっとも粋であること、縦縞は横縞より全体をスリム・スマートに見せる視覚効果がある。人間の目は左右に並んでおりそれと直行する縦縞のほうが視覚的に捉えやすいこと、縦縞は重力に逆らわないで容易に受け入れやすいこと、をあげている。これが正しいかどうかはともかく、気持ちのいい考え方だと思った。
インドと日本の布の関連、インドにおける聖者伝説、西洋との交易関係などについても論じているが、筆者には合わないのか、琴線に触れなかった。読み直すとまた違うのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
南インドにはユダヤ人が昔から定住していた。
14世紀の天竺の地図に、ボンベイが出ている。漢字で書くと放拝。オランダは神に対する支配は意図しなかった。それは彼らにとってあまりにも負担が大きく関心もなかったから。むしろインドでの金儲けに強い関心があった。さすがだ。