- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121011657
作品紹介・あらすじ
「聖徳太子」といえば、多くの日本人はかつて高額紙幣に描かれた肖像を思い浮べるだろう。しかし太子像はこれだけではない。日本の古代を語るうえで不可欠の重要人物であり、しかも死後間もなく太子信仰が誕生、その生涯は神秘のベールに隠れ、実像を不鮮明にして、さらに異なる太子像を生む結果となった。時代の流れの中で変容してきた太子のイメージを多面的に検証、そこに込められた造像者の意図とエネルギーの源泉を探る。
感想・レビュー・書評
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「唐本御影」を中心に、聖徳太子にまつわる肖像画や彫刻の来歴をたどることで、聖徳太子像の変遷の一端を解明している本です。
かつて紙幣の肖像としてつかわれていた、聖徳太子の「唐本御影」は、現在にいたるまで太子本人の肖像ではないという疑惑が向けられてきました。そのなかで著者は、今枝愛真の主張を検討し、その論駁をおこなっています。
また著者は、太子をモデルとしてつくられたとされる夢殿救世観音像についても考察しており、それが秘仏とされるにいたった経緯を明らかにしています。さらに聖徳太子が俗形で表現されるようになったことが、その後の歴史のなかで仏法と王法をめぐる考えと結びついていったことをとりあげ、山岸凉子によるマンガ『日出処の天子』にも言及して、その聖徳太子のイメージの変遷過程が論じられています。
聖徳太子の実像については、大山誠一による実在を否定する議論をはじめ、さまざまな論者たちが考察を展開しています。これに対して著者は、「太子のベールをはがし、虚像をこわしていくことよりも、長い年月を経てつくり上げられてきた太子像、幾度も塗り重ねられて肥大化し、さらにあらたな解釈のもとでつくり変えられてきた太子像のほうに興味を持つようになった」と述べています。こうした関心のもとで、絵画や彫刻によって表現された聖徳太子の、とりわけ衣服や髪形などに目を向け、歴史的に形成されてきた太子のイメージを解明することが、本書のねらいとされています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・開架 B1/5/1165/K