信仰の王権聖徳太子: 太子像をよみとく (中公新書 1165)

著者 :
  • 中央公論新社
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (6)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 31
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121011657

作品紹介・あらすじ

「聖徳太子」といえば、多くの日本人はかつて高額紙幣に描かれた肖像を思い浮べるだろう。しかし太子像はこれだけではない。日本の古代を語るうえで不可欠の重要人物であり、しかも死後間もなく太子信仰が誕生、その生涯は神秘のベールに隠れ、実像を不鮮明にして、さらに異なる太子像を生む結果となった。時代の流れの中で変容してきた太子のイメージを多面的に検証、そこに込められた造像者の意図とエネルギーの源泉を探る。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「唐本御影」を中心に、聖徳太子にまつわる肖像画や彫刻の来歴をたどることで、聖徳太子像の変遷の一端を解明している本です。

    かつて紙幣の肖像としてつかわれていた、聖徳太子の「唐本御影」は、現在にいたるまで太子本人の肖像ではないという疑惑が向けられてきました。そのなかで著者は、今枝愛真の主張を検討し、その論駁をおこなっています。

    また著者は、太子をモデルとしてつくられたとされる夢殿救世観音像についても考察しており、それが秘仏とされるにいたった経緯を明らかにしています。さらに聖徳太子が俗形で表現されるようになったことが、その後の歴史のなかで仏法と王法をめぐる考えと結びついていったことをとりあげ、山岸凉子によるマンガ『日出処の天子』にも言及して、その聖徳太子のイメージの変遷過程が論じられています。

    聖徳太子の実像については、大山誠一による実在を否定する議論をはじめ、さまざまな論者たちが考察を展開しています。これに対して著者は、「太子のベールをはがし、虚像をこわしていくことよりも、長い年月を経てつくり上げられてきた太子像、幾度も塗り重ねられて肥大化し、さらにあらたな解釈のもとでつくり変えられてきた太子像のほうに興味を持つようになった」と述べています。こうした関心のもとで、絵画や彫刻によって表現された聖徳太子の、とりわけ衣服や髪形などに目を向け、歴史的に形成されてきた太子のイメージを解明することが、本書のねらいとされています。

  • 東2法経図・開架 B1/5/1165/K

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1948年東京都生まれ。大阪大学名誉教授
専門は日本史学・服飾史・女性史。大阪外国語大学教授(1997年)、大阪大学理事・副学長(2007年)を経て現在、追手門学院大学地域創造学部教授。
おもな著書に『古代国家の形成と衣服制』(吉川弘文館1984年)、『信仰の王権 聖徳太子』(中公新書1993年)、『衣服で読み直す日本史』(朝日選書2000年)、『娘が語る母の昭和』(朝日選書2000年)、『太子信仰と天神信仰』(思文閣出版2010年)、『交錯する知』(思文閣出版2014)、『いにしえから架かる虹』(いりす・同時代社2014年)などがある。サントリー学芸賞(1985年)、濱田青陵賞(1995年)、紫綬褒章(2003年)を受賞。


「2016年 『礼服 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

武田佐知子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×