流浪の戦国貴族近衛前久―天下一統に翻弄された生涯 (中公新書 1213)
- 中央公論新社 (1994年10月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121012135
作品紹介・あらすじ
干戈轟く群雄割拠の時代、朝廷最高の官職の家柄に生まれた近衛前久は、抗争渦巻く武家社会に身を投じて、上杉謙信とは盟約を結んで関東に下り、織田信長とはその意を受けて石山本願寺との講和に貢献し、豊臣秀吉とはその関白就任にあたって自分の猶子とし、家康とは叙任、徳川改称について朝廷に斡旋するなど、公家でありながら、武家に伍して天下統一の大事業に挑んだ人物であった。公家社会最高権門の行動に時代の大転換をみる。
感想・レビュー・書評
-
朝廷の、家系も官職も最高に位置する、近衛前久。
しかし世は戦国時代。公家でありながらも武家に伍して、
奔走する、近衛前久の生涯を綴る。
序章 天下一統世代の誕生
第一章 戦国時代 第二章 織田時代 第三章 豊臣時代
終章 天下一統の完成
近衛家略系図、近衛前久略年譜、参考文献有り。
戦国時代、近衛家は天皇家よりも将軍家と密接でしたが、
前久が関白に就任した頃、朝廷最高の地位は政治でも、
京の政情に対しても無力でした。
数度にわたる京からの出奔と7年間の放浪。その中での
島津氏や家康等の交流は、伝統文化の師範であり、
また馳走や官途の斡旋。彼はそれらを生かし、
多くの縁を作り、以後の活動に役立つことになります。
上杉謙信との蜜月、足利義昭との確執、そして織田信長!
とりわけ、鷹や馬等での趣味が親交を深めます。
信長の信頼は厚く、様々な場面で活躍する機会を与えられます。
本能寺の変後、挫折し出家し徳川家康の元へ。
再び京に戻れば、官位に目覚めた羽柴秀吉に利用された挙句、
武家の公家成りが遂行されてしまいます。憤る子息信伊は配流に。
そして徳川家康の覇権確立。
公家官位と武家官位は分離されましたが、朝廷は隔離され、
幕府による干渉が強められていきます。
出家してからは島津家との深い交流の日々。
ふともらした“武家の真似事をしている暇に、もっと公家としての
教養を深めるべきであった”という述懐。
武家にはなれなかった挫折感。
しかし、交渉、講和に奔走した前半生の情熱は大したものでした。
公家でありながらアグレッシブな行動力には驚きです。
また、戦国時代の歴史の流れと、武家と公家の関わりについて、
当時の公家社会の所領や官位、家礼の存在、社交等について、
詳しく書かれていて、得る事が多い内容でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
近衛前久の生涯を上杉謙信や天下人を通じてわかりやすく面白かった
-
本書を手に入れたのは、今まで断片的な知識のみであった近衛前久について、麒麟がくるでの活躍を見て、俄然興味がわいたためです。本書はその期待に充分に答えてくれます。それは、序章 天下一統世代の誕生~第一章 戦国時代~第二章 織田時代~第三章 豊臣時代~終章 天下一統の完成迄前久は全ての時代に積極的にかかわり、生き残ります。
特に織田信長と親しく、本能寺の変により『前久が主体的に政治活動をする道は閉ざされ』直後に出家するほど大きなショックがあったとあります。当然ながら著者は前久が明智光秀と共謀する説には組みしていません。変後、前久を妬む公家の讒言により、一次徳川家康に身を寄せます。
果たして麒麟がくるでは本能寺の変とのかかわりを何か描くのでしょうか?楽しみです。
2020.3再版
-
戦国時代の公家と武家の関係が、これほどわかりやすく理解できる本は他にない。関白になった秀吉の意図や家康の公家政策なども初めて理解した。土佐で武家となった一条氏に見られるように、現代の我々が思う以上に、当時は公家と武家の境界は意外に曖昧だった。
-
こいつなら大河で1年いける。