金が語る20世紀: 金本位制が揺らいでも (中公新書 1464)

著者 :
  • 中央公論新社
3.62
  • (2)
  • (5)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 66
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121014641

作品紹介・あらすじ

二〇世紀は金本位制とともに開幕し、マクロ的には外貨国債と金現送が同一平面上にあって、金に振りまわされた時代だった。金本位制の挫折期には金の現送が行なわれた。一九七一年、変動相場への移行で、金は表舞台から退場したかにみえたが、ユーロの誕生など金融市場が変化する今も、国際経済で金を活用しようとする勢力と、金廃貨で固まった勢力が併存する。金本位制が揺らいだとしても、金の裏付けを欠いた通貨は信認されるのか。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • これは凄い。久しぶりに濃厚なものを感じた。金に限られず近代史の集大成。具体的な数値も用いてこと詳細に纏められている。よくぞここまで調べられていることに脱帽。

  • 日清・日露から現代に至るまでの歴史を、金・債権・財政のトピックを絡めて語る本。面白いかと言われると微妙だが、興味深いとは言える。戦争はお金ないとできないねということがよく分かる。金本位制への移行さえも、日清戦争の莫大な賠償金があったから実現したというのは、少々驚きだった話しだ。常識をひっくり返されたというか、全く考えていなかったというか、とにかく驚いた。歴史の授業もこういう観点も絡めながら学習すれば面白かったかなと思ったりした。



  • mmsn01-

    【要約】


    【ノート】
    ・新書がベスト

  • 金の歴史の流れを叙述している一方で金や経済貿易に関する知識がないとイメージしづらい記述も多い


    それにしても、金をアメリカに現送して、軍需物資をなんとか調達していた日本が、当のアメリカを敵にして開戦するとは無謀極まりない。…むしろ4年近くもよく頑張ったと言える。海鮮までの4年間、日本が国力には不似合いなほど砂漠の金をアメリカに現送し続けていた事は、当時、どの程度知られていたのだろうか。33ページ

    伊藤は午前会議終了後の夕刻、大日本帝国憲法起草で伊藤の助手を務め、アメリカにセオドアローズベルト大統領以下の知人を持つ法相金子堅太郎を呼び寄せた。渡米してアメリカ世論の操作と大統領に講和斡旋を出せるように工作するためだった。外交的処理を前提としての開戦だった。64ページ

    フランスがイギリスを引き込んで敗戦国ロシアに融資したのは、イギリスとロシアを結びつけるためだった。190 4年の英仏協商をモデルに英露協商締結交渉に入るようにロシアに圧力をかけた。インドを抱えるイギリスにはロシアとの接近に異論はなかった。ただ、イギリスはポーツマス講和会議中の8月12日に日英同盟を更新し、インド方面をも対象にしていた。英露協商の成立には日露協商が先行していなければならない。この点ではフランスが日本に圧力をかけた。フランスでの外積募集続行には、ロシアとの関係を改善し、日本とロシアが友好国になるのが前提になる、と。日露戦争の復讐をおそれる日本として、ロシアとの関係改善に異論はなかった。フランスは日露協商のモデルとなる日仏協商締結交渉を始めた。こうして、フランスの肝いりで日仏協商は190 7年6月10日、日露協商が7月30日、英露協商が8月31日に成立した。74から75ページ


    特に191 6年のジャガイモの不作はドイツに痛手だった。比較的容易に入手できるのは蕪だけになってしまった。191 6年から翌年にかけては「蕪の冬」だった。配給だけでは1人いちにちあたり1,000キロカロリーを保証できるかどうかが疑問になった。配給外食量を調達できない刑務所、老人ホーム、孤児院などの施設収容所の間では餓死者も見られるようになった。「無制限潜水艦戦」が宣言されたのはこのような事情を背景にしてだつた。109p

  • [ 内容 ]
    二〇世紀は金本位制とともに開幕し、マクロ的には外貨国債と金現送が同一平面上にあって、金に振りまわされた時代だった。
    金本位制の挫折期には金の現送が行なわれた。
    一九七一年、変動相場への移行で、金は表舞台から退場したかにみえたが、ユーロの誕生など金融市場が変化する今も、国際経済で金を活用しようとする勢力と、金廃貨で固まった勢力が併存する。
    金本位制が揺らいだとしても、金の裏付けを欠いた通貨は信認されるのか。

    [ 目次 ]
    序章 太平洋戦争と金現送
    第1章 為替管理なき金本位制
    第2章 第一次大戦と金本位制の停止
    第3章 二つの大戦のあいだで
    第4章 経済大国をめざして
    終章 海図なき航海

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • おすすめ度:90点

    381頁におよぶ大著。
    まさに「金」から20世紀をみつめている。当時の金・外貨準備額を重量に純金換算しているので、時代の比較がしやすく読者の理解を助けている。
    20世紀の日本の歩みと外貨国債が切っても切れない関係にあったのは、金本位制を前提にしていた。
    金本位制の挫折期には金の現送が代わりになった。
    外貨国債と金現送は同一平面上に位置し、20世紀はマクロ的には金に振りまわされていた時代であった。
    以下の史実は、そのことを如実に物語っている。
    ・極東の小国日本が日露戦争中に募集した大量の外貨国債に欧米人個人投資家が応募してくれた。
    ・太平洋戦争開戦の年までにも米国への金現送を行った。
    ・第2次世界大戦真っ只中、敗戦濃厚の中、ドイツへ金現送を行った。
    またニクソンショックにより、金本位制から変動相場制へ移行し、各国通貨の名目的金平価を廃止した時期の記述からは、本質として「通貨とは何なのか」ということを、改めて考えさせられる。もっと知りたい。

  •  20世紀という激動の世界史を歴史という視点からではなく、経済的〜この時代は金本位制だったので、金という資産から考察した面白い本。
     歴史は得てして政治的、民族的、宗教的な側面から語られることが多いが、金(ゴールド)という資産からみると違った側面が見えてくる。
     特に、当時の日本の軍事物資は米に頼りっきりであるのに、米に戦争を仕掛けたというのはただの馬鹿としかいいようがない。はじめから負けが決まっていた戦いであったことが改めて感じられた。

全9件中 1 - 9件を表示

鯖田豊之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×