魔女幻想: 呪術から読み解くヨーロッパ (中公新書 1494)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121014948

作品紹介・あらすじ

魔女狩りという妄想と迫害の結合は現代社会に何を語るのか。本書は英語圏の魔女幻想を中心に、歴史上の事実と文化的なうねりをエピソード豊かに検証する。

感想・レビュー・書評

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  • さまざまな文献から中世ヨーロッパで跋扈した「魔女狩り」という名前の幻想の事例をまとめた一冊であって、それ以上のものではない。本当に事例を集めて、そこに著者のちょっとした感想みたいなものを付け加えているだけで、資料としての価値はあるかもしれないが、魔女に興味がある人であっても、楽しみながら読める本ではないと思う。最後のほうに総論のようなものはあるが、あまり内容がなく「ふーん」っていう感じ。もう少し持論を展開するなり、多少乱暴でもいいからまとめが欲しかった気がする。

  • 難しい論理展開も単語もなく、するすると読めるが、
    実は魔女裁判だけでなく、その周辺、悪魔、魔術師、キリスト教の教義の広範囲にわたって情報量が非常に多い。例えば、

    魔術師はもともと、神の名と権威とラテン語等の学識をもって悪魔を支配し使役してしたのであり、
    呪術や薬草を使ったり、いけにえを捧げるような低級な魔法使いとは一線を画していた。

    魔女は超自然的な魔力が身体に宿っていると考えられていたが、
    後に悪魔との契約という概念が生まれ、契約により魔女になれると考えられるようになった。

    旧約聖書では、
    悪魔は神に逆らった元「天使」なので知性的な本性を持っていると考えられ、
    蛇は狡猾な動物だが悪魔ではなく、
    サタンは神への告発者ではあったが敵対者ではなかった。
    BC200年ごろペルシャ思想の善悪二元論が入ってきた影響により、サタンが悪魔となり、
    ヨハネ黙示録では蛇(龍)=悪魔=サタンとなった。

    魔女裁判は財産没収を目的として拡大していったという意見に対し、
    実際には貧乏な施しを求めるような人々が魔女とされたことも多く、
    物乞いをする隣人に対して中世以降の伝統である施しをせず、資本主義精神むき出しの利己心で追い払った罪の意識が投射され、その隣人を魔女とみなしたのではないかという意見もある。

    魔女裁判における宗教改革とは、
    カトリック教会が温存しているさまざまな呪術(聖体拝領や悪魔祓い)を異教の残滓として排撃したこと、
    神の摂理を強調し、
    村に疫病が流行ってもそれは魔女の仕業ではなく、
    神の意志なのだと主張したことであった。

    など、様々な事例や知識がちりばめられていて、
    奥が深かった。

  • 「幻想とあるがままの現実をつきあわせる精神。幻想であると承知しながら、それを生真面目に信じる精神。そしてまた、信じながらも、それが幻想であるという覚めた精神をもつこと。そのような複眼が、狂気と精気とを秘めた文化という幻想の海のなかで、溺れることなく生きていく道なのではないだろうか」 ー 287ページ

    思えば『うみねこのなく頃に』の主題はまさにこれであった。幻想であるということを否定するのはこの現代においては難しいし、無茶であるし、無知であるとすら思われうる。

    かといって、それで切り捨ててしまえるもの中には輝かしい宝石が存在しているわけで、それは幻想とのうまい付き合い方という問題系を導く。

    過去、「戯れ」の発展形としてのオウムが失敗したように、それは本当に絶妙なバランスと判断力のもとに成り立つようなものなのだろう。オウムの反省を生かした現代日本社会では、おそらくより幻想の自覚性を担保できるような形で、幻想とのふれあいを大事にするようになるだろう。

    それはおそらく宗教とサブカルチャーの中間領域を行き来するような文化において最も色濃く見える事柄であり、この辺りのところをもっとつぶさに観察していきたいなあと思う次第。

  • 魔女裁判などの記録から「魔女」という幻想を語る。
    キリスト教圏は、本当に『女性』という存在が恐ろしかったのかな、とちょっと思ったり。
    地域による魔女裁判の実態などが大変面白かった。

  • 魔女狩りについて詳しく解説。
    ジャンヌ・ダルクの異端審問と比較していたり、地域によっては男の「魔女」も多く処刑されているとか、とてもわかりやすいです。

  • すごい!ちょっと中だるみ期があったけど、そのあとは勢いで読めた!脱魔術化なんて永遠にできないのかなー?

  • 魔女裁判は近代の夜明けである16〜17世紀、ヨーロッパ各地を吹き荒れ、多数の人々を無実の罪で処刑した。その背後にはヨーロッパに根強い魔女信仰があった。愛する子供の死、インポテンツや作物の不作といった身の回りの不幸や不安を魔女のせいにするという、呪術的思考の存在は、科学的知識がいきわたった現代社会とも無縁ではない。本書は英語圏の魔女幻想を中心に、歴史上の事実と文化的なうねりをエピソード豊かに検証する。

  • 魔女狩り、魔女裁判・・・。なんで魔女って聞くとこうも反応しちゃうんだろう。

  • 実例を挙げての解説が解りやすい(取っ付き易い)。コッチ系の入門書としてお勧め。

  •  魔女裁判の様子から、その人がどのような事情で魔女と訴えられるようになったかをわかりやすく説明してくれた本。訴えた人の性格、地域の事情、歴史などの理由がきちんとあって、物語を読むような感じで読めました。

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