登山の誕生: 人はなぜ山に登るようになったのか (中公新書 1592)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121015921

作品紹介・あらすじ

古来ヨーロッパにおいて山は悪魔の棲家として忌み嫌われていた。一方、日本人にとっては聖地であり、信仰にもとづく登山は古くから行われていた。だが近代的登山が発祥したのは二百年ほど前のヨーロッパで、楽しみとしての登山が日本で普及するのはそれから百年後の明治末期になってからである。この差はなぜ生まれたのか。日欧を比較しながら山と人の関わりの変遷をたどり、人々を惹きつけてやまぬ山の魅力の源泉に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 娯楽としての登山が西洋で始まったのは、実はつい最近、200年前の話。それまで山は崇高なエリアとして恐れられていたのです…。西洋と日本とで、人間が山という自然とどのような関係を結んできたのかを思想史的に紐解く。

  • 2023/3/11購入

  • 若干理屈っぽく、最後は最近の若者の癒しを求めた登山に苦言を申すところがじじくさくもあったが、それでも得るもの多し。
    私は何で山に登ってるのだろう、と思ったが、ただ楽しいから、という結論。それは田部重治と小暮理太郎が提唱した日本らしい登山であるようす。

    日本らしい登山というのは、山がそこそこ低いので、危険を伴うことなく歩いて登れて、色々な草花を楽しめ、遠くの山々を眺めることができる。渓流や滝や渓谷が多く本来危険な谷を楽しめること。

    ・明治時代に剣岳に誰かが登ってみたら、矢じりと祠を見つけて、どうやら奈良時代くらいに誰かが上ったらしいといいうことが分かった話。

    ーーーーーーーーーーーーーー
    読むべき
    ・剣岳点の記(新田次郎、剣岳で錫杖(しゃくじょう、スズの杖)が見つかった話)
    ・日本の山はなぜ美しい(小泉武栄、たぶん地学的な話)
    ・日本アルプスと秩父巡礼(田部重治)
    ・吉田武三「松浦武四郎」(江戸時代、登山にはまった人)
    ・日本の江戸時代(能登の人たちが黒船を見にツアーを組んだ話とか、田中圭一)
    ・「かもしかみち」網笠山で矢じりが見つかった話
    ーーーー
    登山メリット
    ・体力を養う
    ・志を大にす
    ・冒険の気象を養う
    ・忍耐力を養う
    ・人の思慮を周密にす
    ・自然と親しむ
    ・同心協力を救う
    ・学術研究に資す
    ・自我を脱す

    ーーー
    歴史
    ・開山ー最澄:比叡山、空海:高野山
    ・仏教系、修験道系
    ・信仰登山・集団登山(1000年以上の歴史)
      -六根清浄、疲労や苦痛を克服して登る
      ー登る山は決まっていた
      ー登拝によって極楽に行ける、身を清め、山頂で神仏に祈る
    ・好奇心・冒険心・探検心に基づく登山
    ・スポーツ的な登山
    ・レジャー的な登山(万葉集の頃から)
    ーーーーーー
    海外の影響
    ・中国
     ー山岳思想、神仙思想
     ー山岳は神仙の住処、神そのもの

  • いつから人間は、またなぜ人間は、スポーツやレジャーとして山に登るようになったか?を歴史的・考証的に解き明かす本。

    アルプスやエベレストのヒラリー(英国隊:NZ人)を引くまでもなく、本場といえばヨーロッパかな~という気がするが、「登山」の歴史から言えば日本なんかの方がよほど早かったらしい(お山参詣や講、修験道など宗教的な対象として)。

    一方ヨーロッパでは、山は「魔物の棲む場所」として恐れられこそすれ、近年までとても人間が入り込むところではなかったという。それがなぜスポーツへと発展したかと言えば、やはりパイオニア的な変人がいたせいなのであるな…。

    世界の登山界を牽引して来た英国だが、やはり貴族の遊びで山岳会組織なども硬直していたゆえ、庶民が参加する他国に次第に遅れをとって行った…など、さまざまなエピソードが面白い。日本の山岳会小史も瞥見される。

    *
    なお、孫引きになるが、日本山岳会の二代目会長(確か)だった木暮理太郎氏の言葉がよかったので、ここにも引かせてもらおう。

    「私達が山に登るのは、つまり山が好きだから登るのである。登らないではいられないから登るのである。なぜ山に登るか、好きだから登る。答えは簡単である。しかしこれで十分ではあるまいか。
    登山は志を大にするという。そうであろう。登山は剛健の気性を養うという。そうであろう。その他の曰く何、曰く何、皆そうであろう。ただ私などは好きだから山に登るというだけで満足する者である。」

  • 登山と博物学の深い関係を再確認。博物屋とも山屋とも言えない私だが、鍛えていきたいもの。
    説明が何かと冗長で読みにくかったのが残念。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00004469

  • [ 内容 ]
    古来ヨーロッパにおいて山は悪魔の棲家として忌み嫌われていた。
    一方、日本人にとっては聖地であり、信仰にもとづく登山は古くから行われていた。
    だが近代的登山が発祥したのは二百年ほど前のヨーロッパで、楽しみとしての登山が日本で普及するのはそれから百年後の明治末期になってからである。
    この差はなぜ生まれたのか。
    日欧を比較しながら山と人の関わりの変遷をたどり、人々を惹きつけてやまぬ山の魅力の源泉に迫る。

    [ 目次 ]
    第1章 好奇心は山へいざなう(アルプスは悪魔の棲家?;薬草採りか鉱山か ほか)
    第2章 アルプスへの憧れ(アルプスの発見;アルプスの美をうたった人々 ほか)
    第3章 山と日本人(縄文人は山に登ったか;稲作の開始と自然崇拝 ほか)
    第4章 日本近代登山の発展(日本山岳会の発足;登山思想の伝道者たち ほか)
    終章 現代の登山を考える(登山大国日本;ブームの変遷 ほか)

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著者プロフィール

1948年、長野県生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。理学博士。
専門は自然地理学、地生態学。現在、東京学芸大学名誉教授。著書に、『日本の山ができるまで』(A&F出版)、『地生態学から見た日本の植生』(文一総合出版)、『山の自然学』(岩波新書)、『日本の山と高山植物』(平凡社新種)など。

「2022年 『日本の自然風景ワンダーランド』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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