批評理論入門: 『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書 1790)
- 中央公論新社 (2005年3月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121017901
感想・レビュー・書評
-
小説の技法や各批評の特徴を解説した一冊。 普段読まないタイプの本なので、読み終わるのに時間がかかりましたが、各技法や批評分野の特徴を、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を題材にして解説しているので、分かりやすかったです。 そして全ての事柄に対して、『フランケンシュタイン』で解説できてしまう廣野さんの愛が素晴らしい。
私も、廣野さんにとっての『フランケンシュタイン』のように、どんな角度からでも切り取って解説できるくらい愛してしまう一冊を見つけたいものです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』を題材に、文学理論上のさまざまな概念や手法を解説している本です。
テリー・イーグルトンの著書をはじめ、批評理論の入門書は数多くありますが、じっさいに一つの題材をさまざまな手法で料理してみせるところに本書の特色があります。具体的な批評の実践に触れることができると同時に、そうしたさまざまな批評を可能にする『フランケンシュタイン』というテクストそのものの豊かさを感じ取ることができるという点で、優れた入門書ではないかと思います。 -
これ、眉間に皺寄せまことしやかに文芸理解のポーズで読む本ではないのでは?
「ポスコロ風に批評するとこうだよね」
「新歴史好きの批評屋ならこう書くんでね?」
と次々繰り出されるパスティーシュへ「よくできてるじゃん」「んー?これはちょっとイマイチこじつけ臭い」などと微笑みながら楽しむ本ではないかと。たぶん。
ちなみに脱構築批評風の箇所、とりわけリキはいってます。
前半の技法分析はロッジ『小説の技巧』http://booklog.jp/users/donaldmac/archives/4560046344 の劣化コピー技じゃね?と思いながら読んでいたら、あとがきでネタばらしされてました。 -
『フランケンシュタイン』を読んだことがなくても理解し易い本です。併せて読めば、より理解が深まると思います。
※
間テクスト性についての記述が少し足りない。
間テクスト性とは、先行テクストの影響だけではない。後続のテクストを含めての、読みの可能性を示唆したものである。つまり、時間軸は関係ないのである。
この本では先行テクストの記述だけであるが、『フランケンシュタイン』の間テクスト性として、他にはディケンズ作『大いなる遺産』のピップも挙げられるのではないだろうか。
2005.3.25 初版/2009.4.9 購入/2009.7.15 読了 -
この本を読んでいて、以前に聞いた「実はOfficial髭男dismの『Pretender』は同性愛を歌った歌だ」という話を思い出した。
まさかと思って曲を聴き直したら、本当にそんなふうにも解釈できて驚いたのだけれど、あれってまさにこの本に紹介されている『ジェンダー批評』だったのかもと再発見した気持ちになった。
批評理論とは、世間一般的な作品理解(月並みな感想)から離れて、一味違う視点で作品を読み解くための技術のようです。 -
特に、後半の「批評理論篇」は、さまざまな批評理論を取り上げて、それぞれにわかりやすい解説が施されている。1篇の小説についても、いろいろな「読み」が可能であると知った。
-
モノローグ ポリフォニー イメジャリー メタフィクション 形式主義 脱構築 決定不可能姓 コロニアル
「小説の技巧」と似通う部分が多いという話を聞いた。目を通すべきだろう。
-
廣野由美子『批評理論入門』中公新書 読了。『フランケンシュタイン』を題材に、小説に用いられる技法や作品分析の方法論を概説する。実例を通じて具体的に解説してくれるので、テキスト未読でも問題ない。これほど徹底的に解剖されても耐え得る作品であることがよくわかる。原作にも当たってみたい。
-
小説『フランケンシュタイン』を題材にした解説により、小説を深く理解する為の技法や視点を与えてくれる良著。
どこか自分の中で怪物は暴力的で短絡的というイメージが先行していたのだが、本書のおかげで新たな視点を持って多様な解釈を知った。
本書を読んでフランケンシュタインによって作られた怪物には、常に知的な冷静さがある事に気づき、それによって小説『フランケンシュタイン』は人間の狂気や浅ましさを印象づけている事が分かった。 -
この本で紹介している知識(小説技法、批評理論)を持って、今まで小説を読んだことがなかったので、遅ればせながら、それらの視点を自分が得ることができ非常に有益であった。
題材としてフランケンシュタインの小説を上げているが、恥ずかしながらこの小説を読んだことがなく、本書で初めて、そのあらすじを知った。しかし、小説ってこうやって読む遠くが深く楽しめるのだなということを初めて知った。
フランケンシュタインの小説は奥深く楽しめるものなんだな。