西洋音楽史: 「クラシック」の黄昏 (中公新書 1816)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018168

作品紹介・あらすじ

一八世紀後半から二〇世紀前半にいたる西洋音楽史は、芸術音楽と娯楽音楽の分裂のプロセスであった。この時期の音楽が一般に「クラシック音楽」と呼ばれている。本書は、「クラシック音楽」の歴史と、その前史である中世、ルネサンス、バロックで何が用意されたのか、そして、「クラシック後」には何がどう変質したのかを大胆に位置づける試みである。音楽史という大河を一望のもとに眺めわたす。

感想・レビュー・書評

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  • クラシック音楽が辿ってきた道を、時代背景も含めて俯瞰して見られる名著。文中に登場する数々の曲をYouTube再生しながら読み進めると、格段に理解も深まり最高に面白いのでオススメ。
    大好きなバッハについての言及が少なかったことだけが寂しかったですが、、素晴らしい本に出会えました。

  • 「一八世紀後半から二〇世紀前半にいたる西洋音楽史は、芸術音楽と娯楽音楽の分裂のプロセスであった。この時期の音楽が一般に「クラシック音楽」と呼ばれている。本書は、「クラシック音楽」の歴史と、その前史である中世、ルネサンス、バロックで何が用意されたのか、そして、「クラシック後」には何がどう変質したのかを大胆に位置づける試みである。音楽史という大河を一望のもとに眺めわたす。]

  • 一般読者が音楽史の大きな流れを理解できるように音楽を説く本。
    型を抑えるから、そこからの逸脱が個性の表現として意味を持つ。

  • クラシックの聴ける幅が広がったことと、ヨーロッパ渡航の前に良い予習ができた。
    また読み返したい。

  • 概要を大きく知るに当たって、とても参考になりました。時々と見返したい、講義のようなスタイルでした。

    第一章 グレゴリオ聖歌 
    【800-】
    ・中世の音楽史はグレゴリオ聖歌を軸に発展していった。
    ・『グレゴリオ聖歌』→単旋律によって歌われる、ローマ・カトリック教会の、ラテン語による聖歌。
    ・音楽史へのアウフタクトとしての認識。
    「西洋芸術音楽」の定義→「知的エリート階級(聖職者ならびに貴族)によって支えられ」、「主としてイタリア・フランス・ドイツを中心に発達した」、「紙に書かれ設計される」音楽文化のことである。
    ・『オルガヌム』→グレゴリオ聖歌に別の声部を加えたもの。中世前半の音楽を占めた。

    【1000-1100】
    ・オルガヌムの声部が独立して動き出す(メリスマ・オルガヌム)

    【1100年代末】レオナン、ペロタン
    ・オルガヌムの頂点時期は『ノートルダム楽派』
     →レオナン(オルガヌム大全)、ペロタン
    ・第一回十字軍遠征

    【1200年代-1300年代】マショー
    ・中世後半の中心はオルガヌムから生まれたモテットである→違いは上声にのる歌詞がフランス語で書かれている
    ・アルス・ノヴァ・ノタンディ→新しいリズムの記譜法の提示

    【1400年代】ルネサンス前半 ジョスカン
    ・フランドル楽派→デュファイ、オケゲム、バンショウ、ジョスカン
    ・イギリス⇔フランス(100年戦争)
    ・イギリスの影響あり
    ・作品名に作曲者が入り出した時代
    ・和音はメロを束ねる紐の役割

    【1500年代】ルネサンス後半 パレストリーナ
    ・舞台はフランスからイタリアへ
    ・『多元化』の時代
    ・ジャンルの多様化→器楽曲の隆盛(チェンバロ、オルガン、リュート、ヴァージナル)
    ・『マドリガーレ』の流行→イタリア語の合唱でバロックの元となっていく
    ・ルターはジョスカンの崇拝者
    〇カトリック⇔グレゴリオ聖歌
    〇プロテスタント⇔コラール(ドイツプロテスタント音楽文化の土台)
    ・宗教曲の伝統はパレストリーナへ引き継ぐ
    ・『ヴェネツィア楽派』→ガブリエリ(エコー効果)
    ・和音は紐から柱の役割へ移行
    ・不協和音の表出→ジェズアルド(美から表現への移行)、モンテヴェルディ(マドリガーレを開拓)

    【1600前後】バロックへの移行期
    ・ルネサンスの終焉→バロックの始まり
    ・プリマ・プラツテイカ「第1のやり方」
    ・セコンダ・プラツテイカ「第2のやり方」
    →バロックへの扉

    【1600-1750】バロック時代
    バッハ、リュリ、ヘンデル、スカルラッティ、ハッセ、テレマン、
    ・王侯貴族の生活を彩る音楽、その頂点はオペラ
    ・バロックとか「音楽がドラマになった時代」
    ・劇的音楽がルネサンスとバロックを分かつ要素
    ・オラトリオ「メサイア(ヘンデル)」、カンタータ受難曲「マタイ受難曲(バッハ)」、バロックオペラ
    ・バロックの感情表現は定型的→劇音楽に限る
    ・器楽曲はあくまでBGMの役割
    ・作曲技法の点ではバロックは「通奏低音と協奏曲の時代」と定義されることが多い。
    ・通奏低音→ジャズにおけるピアノとベースの役割
    ・モノディの登場→通奏低音の上で1人の歌手が歌う
    ・協奏曲の時代→競走の時代「声⇔楽器」「声⇔声」「独奏楽器⇔伴奏楽器」「独奏楽器⇔オーケストラ」
    ・カトリック文化圏とプロテスタント文化圏で区別して考える
    ・ドイツプロテスタント文化圏で「バッハ」が登場した。→教会での質素な暮らし、カントールとしての仕事。音楽は神への捧げ物という意識。
    ・フーガの技法はルネサンスを源流としており、バロック時代においても古風なスタイル。バロックにおいては和音のスタイルに向かうことがスタンダード
    ・バッハはドイツプロテスタントのナショナリズムの隆盛に絡めて発掘された面もある
    ・フランス、イギリス音楽 VS ドイツ音楽の構図

    【1750前後-1815頃】古典派への緩やかな以降
    (バロック最末期の作曲家たち)
    クープラン、スカルラッティ、テレマン、ラモー、〔バッハ〕
    ・市民階級の隆盛→【啓蒙主義】が流行した時代。権力からの独立
    (前古典派)
    ・大バッハの息子達の活躍した時代
    →エマニュエル、クリスチャン、フリーデマン
    ・マンハイム楽派→シュターミツ
    ・ウィーン古典派
    ・作曲技法における古典派の特徴→「対位法の廃止」「旋律と和音伴奏によるシンプルな演奏」
    「通奏低音の廃止→旋律主導による音楽」
    ・旋律の魅力へのフォーカス
    ・演奏会、楽譜印刷擬似、お金を出せば家でも
    ・演奏会・楽譜印刷→作曲家の自立の機会
    ・ソナタ形式の確立
    〇バロック→オペラ・セリア
    〇前古典→オペラ・ブッファ
    ・モーツァルト没 -1791 フランス革命前
    ・ハイドン 最終作 1801 フランス革命移行期
    ・ベートーヴェン初作 1800- フランス革命後
    ・ベートーヴェンと同時期の作曲家
    →ロッシーニ、シューベルト、ウェーバー
    ロマン派の作曲家と大きく重なる時代がある。

    【1800年代】ロマン派
    シューベルト、シューマン、リスト、ショパン、ワーグナー、ブラームス、ベルリオーズ、ロッシーニ、ヴェルディ、スメタナ、ドヴォルザーク、チャイコフスキー
    ・作曲家に求められたのは強烈なキャラクター性
    ・市民階級か音楽に手が届くようになった
    ・「職人的うまさ」→「芸術家の独創性」に変化
    ・批評家の登場→名曲の誕生
    ・音楽学校の登場→音楽の民主化
    ・超絶技巧の競走→タールベルグのハープ、リスト「ノルマの回想」
    ・楽器の大音量化
    ・グランド・オペラとサロン音楽
    〇サロン音楽の技巧面→後のロシア楽派(ラフマニノフ等)
    〇サロン音楽のダンディズム→後の近大フランス楽派(フォーレ、ドビュッシー)
    ・ドイツ音楽は器楽曲が隆盛した、ドイツロマン派である。
    ・このドイツの器楽文化は3つの方向に分かれる。
    〇詩的ピアノ小品→子供の情景(シューマン)、無言歌(メンデルスゾーン)詩的世界観の表現
    〇理念的な表現「標題音楽」→幻想交響曲、ロメオとジュリエット(ベルリオーズ)、ファウスト交響曲(リスト)
    ベルリオーズの交響詩はリヒャルト・シュトラウスに引き継ぐ、その後ワーグナーへ
    〇文学的要素の排除「絶対音楽」→ブラームスは標題作品をほぼ残していない
    ・ロマン派の旋律の特徴は「胸の奥から絞り出す吐息」と言えるだろう

    【1883-1914】後期ロマン派
    マーラー、シュトラウス、プッチーニ、ドビュッシー、ラヴェル、サティ、ラフマニノフ、スクリャービン、ファリャ、アルベニス、グラナドス
    シェーンベルク、ストラヴィンスキー、バルトーク
    ・国民楽派モダニズムの隆盛
    ・1890-ヴェルディ、ブルックナー、ブラームス、ドヴォルザークの終盤の時期
    ・フランスで国民音楽協会が設立→ドイツへの対抗心(著名な作曲家が輩出されていなかった)
    ・ドビュッシーやラヴェルの時期には国民音楽協会への反発の動きが強くなる。
    ・国民音楽協会との違いは、ダンディズムの違いである。場末の音楽への興味を示した。
    →サティ(ジュトゥヴ)、ドビュッシー(ゴリーウォークのケークウォーク)、ラヴェル(ピアノ協奏曲)
    ・ドビュッシー→近代フランス音楽の幕開け、ガムランなどの東洋音楽との出会い、和声の変化
    ・シェーンベルクやストラヴィンスキーに繋がっていく

    【1915-】近代音楽 第一次世界大戦
    プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ヒンデミット、ミヨー、プーランク
    ・ロマン派への嫌悪感
    ・喧騒に対する好み、テンポをほとんど揺らさない、感情を抜いた音楽性
    ・1920-ストラヴィンスキー新古典主義(プルチネルラ)→ピカソのコラージュ技法との類似点
    ・1910-シェーンベルク→調性の解体
    ・1920-シェーンベルク→十二音技法

    【1950-】現代音楽 第二次世界大戦
    ブーレーズ、シュトックハウゼン、ノーノ
    ・西洋音楽史の終焉
    ・十二音技法の複雑化→総音列主義
    ・管理された偶然音楽→ケージ「4分33秒」
    ・クラスター技法、コラージュ音楽
    1970-前衛音楽に陰りが見られる

    〈作者の視点〉
    〇前衛音楽の系譜→作品史としての歴史
    講習の不在
    〇巨匠によるクラシックレパートリーの演奏
    →「誰が何を作るか」から「誰が何を演奏するか」
    〇アングロサクソン系の娯楽音楽→ポピュラー音楽の隆盛
    ルーツは西洋音楽からの系譜、サロン音楽とアメリカ音楽との結びつき
    ・ロマン派からの呪縛に今も囚われている部分がある。

  • グラウト/パリスカ『新 西洋音楽史』と比べ,当時における作曲者の立ち位置や大衆文化との関係についてより踏み込んだ記述が見られる。有名な作曲者と代表作品を知っていることは前提としている。

  • わかりやすいけど大事なポイントを抑えられていて、いろんな人におすすめできると思った!
    これぐらいさっぱり分かる西洋音楽史の本って少ないよな〜。

  • クラシック音楽をハイライトとする西洋芸術音楽の歴史の大きな流れを解説。
    西洋芸術音楽の流れについて理解が深まった。フランス、イタリア、ドイツなど各国での音楽文化の違いも興味深かった。

  • 西洋音楽の歴史的系譜がわかりやすい。

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著者プロフィール

1960年京都生まれ。京都大学人文科学研究所教授。専門は近代西洋音楽史。著書に『リヒャルト・シュトラウス 人と作品』(音楽之友社、2014)、『音楽の危機』(中公新書、2020、小林秀雄賞受賞)、『音楽の聴き方』(中公新書、2009、吉田秀和賞受賞)、『西洋音楽史』(中公新書、2005)、『オペラの運命』(中公新書、2001、サントリー学芸賞受賞)、共著に『すごいジャズには理由がある』(アルテスパブリッシング、2014)など。

「2023年 『配信芸術論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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