マイクロファイナンス: 貧困と闘う「驚異の金融」 (中公新書 2021)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020215

作品紹介・あらすじ

貧困は遠い国の出来事ではない。統計によれば、日本でも五日に一人の割合で餓死者が発生している。貧困に苦しむ人々を救うために、バングラデシュで始まったマイクロファイナンスはアメリカ、フランスなど先進国でも、その力を発揮している。担保のない人々に融資をしながら、貸倒れ率一〜二%という実績を残す「驚異の金融」-これは日本の貧困問題にも有効か。この国の貧困の現状をデータに基づき明らかにし、導入の可能性に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 貧困というものがなかなか解消することがないのは
    こうやって感想を書いている自分自身も
    そうだけれども、
    そういう感覚に陥ることも
    それがいかなることかもわからず、理解しようとも
    しないからだと思います。

    「自業自得」それだけで片付けるのは
    たやすいことでしょう。
    だけれども、その貧困にあえぐ人たちは
    もはや看過できない状態になりつつあります。
    それでも「自業自得」と言い続けますか?
    そのしわ寄せが私たちの生活へと
    直撃しても?

    ここに出てくるシステムは
    あくまでも一定年収以下の人に
    融資する向けのものです。
    その代わりその人たちを手厚くサポートするので
    貸し倒れ率は低くなっているのです。

    いわゆる公的なものは
    かくかくしかじかな理由で
    限界でしょうから
    民の力も必要なのだと思います。

  • まさに入門といった感じか。
    各国の事例や具体的なモデル、またマイクロファイナンスの有効性と限界そして今後の課題などが丁寧にまとめられていてバランスがいいと思う。ただ、現在の日本の貧困の現状に言及し過ぎてる嫌いがなくもないが、それは読者にマイクロファイナンスが貧困対策として重要であることを意識付けしたいためだと思うので、個人的には全然問題なし。

    マイクロファイナンスについてもっと詳しく知るためには他の書籍も読む必要がある。

  • 面白かった。なぜ日本でマイクロファイナンスが活発化しないか、どうしたら企業が社会活動に目を向けるかというところには結局市民社会意識の役割も大きいのではないかと感じた。

  • 官民協力して貧困問題の解決を。

  • 2013/09/30
    経済学的になぜマイクロファイナンスが成り立つか解説してる部分はいいね。

  •  最近、社会的な問題に対して非営利事業(慈善や政府)ではなく最低限以上の採算を得るビジネスとして取り組む「ソーシャル・ビジネス」が注目されつつありますが、マイクロ・ファイナンスはその先駆けだといわれたりします。

     基本的な仕組みは、貧困者への無担保少額融資によって貧困者が貧困から脱出するためのきっかけを作るというものです。貧困者へお金を貸しても収入をもたない貧困者は返済しようがないわけですが、いいかえれば、収入を得られる見込みのある貧困者にお金を貸すことで自立を促すことができるとすれば、それは経済の活性化の基盤となるわけですね。

     では、その貧困者とはどのようなものか。一言でいえば「自分の能力を活用できる層」ということですが、じつは先進国である日本にも貧困が存在し、そのなかにも、ほんらい「自分の能力を活用できる層」がいる。そしてそこにマイクロ・ファイナンスを導入する意義があるといいます。そして、マイクロ・ファイナンスを日本に導入するためのビジネスモデルも検討されています。

     本書を読んでみると、企業や金融機関、貸し手と借り手、貧困者、いろいろな存在が社会との関係のなかで活動しているということを認識せずにはいられません。この考え方から企業の社会的責任などということがいわれますが、同時にそれを評価する人々も社会的存在でなくてはならないのではないでしょうね・・・。明るい未来への道のりは見えますが、遠いです。

  • 日本の相対的貧困(全国の平均家計所得の半分以下の収入しかないこと)率はOECD加盟国中ワースト4位。深刻な貧困が着実に進行している日本。他方、世界ではグラミン銀行をはじめとして、マイクロファイナンス(貧困に苦しむ人たちに提供する無担保融資サービス)が積極的に行われており成果をあげている。いまや、発展途上国のみならず先進国の間にも普及が進んでいるという。日本の窮境脱出の切り札ともなりうる日本版マイクロファイナンス。熱い期待が膨らむ。

  • マイクロファイナンスの具体的な事例を例示してその仕組みを解説する本かと思いきや違いましたね。

    世界の絶対的貧困や先進国の相対的貧困に関して触れ、特に日本の現状、つまり相対的貧困層がどの程度いるのか、彼らをどうマネジメントしていくべきかの選択肢の一つとして、従来の金融機関と違うマイクロファイナンス機関を挙げていたりします。

    相対的貧困層が潜在的にどの程度いるのか、具体的な数値をあげ、生活保護をこれまでの制度のまま拡大していった場合莫大な支出が発生する、ようなことを数値を示しながら議論しています。また、マイクロファイナンス機関の例を挙げて、そのシステムについて説明したりしています。

    特に焦点が先進国、日本であった為、まぁこれはこれで良いと思うのですが、新興国でのマイクロファイナンスについての説明を拡充させて欲しかったなぁと言う感じですかね。まぁ容量的な問題もあったでしょう。

  • マイクロファイナンスについてよく分かる。

    日本でも5日に一人、餓死してる。
    貧困の定義。

    でも一番勉強になったのは“Boys be ambitious!”に続く言葉。

  • マイクロファイナンスはバングラデシュの
    グラミン銀行が有名なので、開発途上国の貧困対策として
    活用されているものとのイメージでしたが、
    米英仏など先進国でも貧困層向けに行われていると。
    しかし日本ではマイクロファイナンスは細々としか
    おこわなれておらず、本書でもなぜ日本ではさかんにならないのか、
    と問題提起はしております。
    本文に切れ切れに説明がありますが、
    通読しても「なぜ無いか」はうまく理解できませんでした。
    また、著者は元官僚のようですが、
    金融実務に関しては精通してはいないようで、
    ところどころ説明がおかしい点や、理想を追っているためか
    営利事業への敵意を表わすような発言も散見されますね。
    資金調達には既存民間金融機関の力も必要でしょうから、
    できることを互いにするためには、
    相互理解が必要ではないでしょうか。

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著者プロフィール

米国コロンビア大学ビジネススクール客員研究員
グラミン・アメリカ シニア・アドバイザー
グラミン・プリマケア シニア・アドバイザー

1956年福島県生まれ。1980年東京大学経済学部卒業、同年大蔵省入省。
1984年英国ケンブリッジ大学修士(MA)。相馬税務署長、国税庁・証券局課長補佐、主計局主査、OECD(経済協力開発機構)税制改革支援室長、財務省国際局・関税局課長、大臣官房参事官、北海道大学公共政策大学院教授、アフリカ開発銀行理事(日本、ブラジル、オーストリア、サウジアラビア、アルゼンチン代表)などを経て、2013年より現職。
現在、北海道大学公共政策大学院研究員、FDA(NPO)理事、難民起業サポートファンド(難民マイクロファイナンス)顧問などを兼務。2014年7月から世界銀行日本代表理事。

主な著書・論文:『マイクロファイナンスのすすめ――貧困・格差を変えるビジネスモデル』(東洋経済新報社、2008年)、『マイクロファイナンス――貧困と闘う「驚異の金融」』(中公新書、2009年)、「チュニジア『ジャスミン革命』の衝撃」(『ファイナンス』財務省、2011年3月)、「鉄道共済年金対策関連法案について」(『ファイナンス』大蔵省、1990年2月)、「証券分野の規制緩和について」(『証券業報』日本証券業協会、1996年2月)、「自由貿易協定(FTA)について」(『貿易実務ダイジェスト』日本関税協会、2003年11月)、“Emerging Issues In Future Tax Reforms.Challenges for Tax Authorities in a Globalizing Economy”(OECD, September 1998)など。

「2014年 『貧困克服への挑戦 構想 グラミン日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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