北朝鮮帰国事業 - 「壮大な拉致」か「追放」か (中公新書 2029)
- 中央公論新社 (2009年11月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121020291
作品紹介・あらすじ
一九五九年から四半世紀にわたって行われた北朝鮮帰国事業。「地上の楽園」と宣伝された彼の地に在日コリアン、日本人妻など約一〇万人が渡った。だが帰国後、彼らは劣悪な生活環境・監視・差別に苦しむ。本書は、近年公開された史料や証言を基に、南北統一への"活用"を意図した北朝鮮の思惑と、過激な政治分子と貧困層排除を目論んだという「日本策略論」を検証し、どのように事業は行われ、「悲劇」が生まれたかを追う。
感想・レビュー・書評
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北朝鮮への帰国事業が生まれた時代背景から始まり、帰国事業の終了までをまとめた一冊。
「8時間働けば生活できる、大学は無料、医療費も無料」などの嘘や甘言にだまされ、多数の人々が北朝鮮に渡った「背景」を知ることができた。普通に考えれば「そんな社会あるわけないだろ」なのだが、イデオロギーのために人をだますという「彼ら」の手口のは今も変わらない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
かつて北朝鮮に帰国を希望した/希望せざるをえなかった人たちがたくさんいたこと、日本側もこれを好機とばかりに熱心に後押ししたこと、この相乗効果で起こった悲劇の流れがとてもよくわかる。日本人妻の帰国できる日がくることを祈るばかり
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筆者は、日本側の「厄介払い願望」や帰国者自身の自由意志を否定はしていないが、一番の原因は帰国事業を政治的・経済的に利用しようとした北当局と朝鮮総連の宣伝だとしている。300件以上の資料を使って事実関係を丁寧に追っているので思想書とは一線を画すが、その中で本書に収められた帰国者や日本人妻が北の実情に愕然とする肉声は切ない。また、現在の観点でつい忘れがちになるのが、当時の日本にとって対北・対南関係のバランシングが必要であり、帰国事業の進行もそれにも左右されていたということだ。
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漠然とした記憶の「帰還」「地上の楽園」の理解が深まる。
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日本から帰国した人たちは貧乏で大変だと聞かされていたはずなのに、想像以上にきれいでよい洋服を着ていたのを見て、北朝鮮人は吃驚したそうだ。あまりにも無茶苦茶で理不尽な歴史に言葉もない。