北朝鮮帰国事業 - 「壮大な拉致」か「追放」か (中公新書 2029)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (258ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020291

作品紹介・あらすじ

一九五九年から四半世紀にわたって行われた北朝鮮帰国事業。「地上の楽園」と宣伝された彼の地に在日コリアン、日本人妻など約一〇万人が渡った。だが帰国後、彼らは劣悪な生活環境・監視・差別に苦しむ。本書は、近年公開された史料や証言を基に、南北統一への"活用"を意図した北朝鮮の思惑と、過激な政治分子と貧困層排除を目論んだという「日本策略論」を検証し、どのように事業は行われ、「悲劇」が生まれたかを追う。

感想・レビュー・書評

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  • 北朝鮮への帰国事業が生まれた時代背景から始まり、帰国事業の終了までをまとめた一冊。

    「8時間働けば生活できる、大学は無料、医療費も無料」などの嘘や甘言にだまされ、多数の人々が北朝鮮に渡った「背景」を知ることができた。普通に考えれば「そんな社会あるわけないだろ」なのだが、イデオロギーのために人をだますという「彼ら」の手口のは今も変わらない。

  • かつて北朝鮮に帰国を希望した/希望せざるをえなかった人たちがたくさんいたこと、日本側もこれを好機とばかりに熱心に後押ししたこと、この相乗効果で起こった悲劇の流れがとてもよくわかる。日本人妻の帰国できる日がくることを祈るばかり

  • 筆者は、日本側の「厄介払い願望」や帰国者自身の自由意志を否定はしていないが、一番の原因は帰国事業を政治的・経済的に利用しようとした北当局と朝鮮総連の宣伝だとしている。300件以上の資料を使って事実関係を丁寧に追っているので思想書とは一線を画すが、その中で本書に収められた帰国者や日本人妻が北の実情に愕然とする肉声は切ない。また、現在の観点でつい忘れがちになるのが、当時の日本にとって対北・対南関係のバランシングが必要であり、帰国事業の進行もそれにも左右されていたということだ。

  • [ 内容 ]
    一九五九年から四半世紀にわたって行われた北朝鮮帰国事業。
    「地上の楽園」と宣伝された彼の地に在日コリアン、日本人妻など約一〇万人が渡った。
    だが帰国後、彼らは劣悪な生活環境・監視・差別に苦しむ。
    本書は、近年公開された史料や証言を基に、南北統一への“活用”を意図した北朝鮮の思惑と、過激な政治分子と貧困層排除を目論んだという「日本策略論」を検証し、どのように事業は行われ、「悲劇」が生まれたかを追う。

    [ 目次 ]
    序章 問い直される帰国事業
    第1章 「在日社会」の激動-戦前~朝鮮戦争
    第2章 朝鮮戦争と帰国運動の始まり
    第3章 帰国実現の模索
    第4章 帰国事業をめぐる攻防
    第5章 北朝鮮はなぜ「帰国」を推進したか
    第6章 なぜ「未知の祖国」へ渡ったか
    第7章 なぜ「帰国」は四半世紀も続いたか
    第8章 「虚構の楽園」での悲劇
    終章 現在進行形の問題

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    [ 参考となる書評 ]

  • 漠然とした記憶の「帰還」「地上の楽園」の理解が深まる。

  • 日本から帰国した人たちは貧乏で大変だと聞かされていたはずなのに、想像以上にきれいでよい洋服を着ていたのを見て、北朝鮮人は吃驚したそうだ。あまりにも無茶苦茶で理不尽な歴史に言葉もない。

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著者プロフィール

1965年、東京都生まれ。博士(国際文化)[法政大学大学院、2018年]。早稲田大学第一文学部(英文学専修)卒業。1987年に読売新聞社入社。地方部、社会部、『読売ウイークリー』編集部の記者として韓国・北朝鮮関連の取材などに携わる。その後、東北総局長などを経て東京本社勤務。この間、1994年~1995年に韓国・成均館大学校大学院(史学科)修士課程に留学。「在日韓人北送に関する研究」(韓国語論文)で文学修士(2001年)。現代韓国朝鮮学会監事。アジア政経学会会員、朝鮮史研究会会員。
【著書】『北朝鮮帰国事業 「壮大な拉致」か「追放」か』中央公論新社(中公新書、2009年)
【共著】『激動 信州の20世紀』(読売新聞長野支局編、郷土出版社、2002年)、『韓流ハンドブック』(小倉紀蔵・小針進編、新書館、2007年[コラム2編])、『北朝鮮帰国者問題の歴史と課題』(新幹社、2009年)、『信州ミステリー紀行』(読売新聞長野支局編、ほおずき書籍、2012年)
【編集協力・解説】『北の後継者 キム・ジョンウン』(藤本健二著、中央公論新社[中公新書ラクレ]、2010年)
【主な論文】「北朝鮮帰還事業『前史』の再検討-在日コリアンの帰国運動と北朝鮮の戦略を中心に-」(現代韓国朝鮮学会編『現代韓国朝鮮研究』第8号、2008年11月)、「北朝鮮帰国者の適応問題と現地社会との葛藤」(現代韓国朝鮮学会編『現代韓国朝鮮研究』第17号、2017年11月)

「2020年 『北朝鮮帰国事業の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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