日本経済の底力 - 臥龍が目覚めるとき (中公新書 2124)
- 中央公論新社 (2011年8月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121021243
感想・レビュー・書評
-
2011/12/21
どっちかというとネトウヨ系日本マンセー本かなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「日本経済」の実力と展望について楽観的な見解をるる展開することを全否定するものではないが、本書の考察はピンボケと言っては失礼かもしれないが、全く賛同できるものではないと思えた。
「敗戦を乗り越えた日本」において「戦争が創造的破壊として作用した」との見解については、戦後日本の経済成長は今では「開発独裁」とよばれる、一定の条件のもとでの有効な政策に基づいて進められたものというのが一般であり、本書の見解には全く同意できない。
「労働生産性」や「全要素生産性」などの専門用語を駆使しての海外展開などの「グローバル化」の考察においても、「輸出が生産性に与える効果」などを取り上げて様々な考察をしているが、本書でいうように「海外への生産委託によって日本企業の生産性が1~3%上昇」との考察はピントがずれているようにしか思えない。
製造業のグローバル化の現状は、個別企業の海外展開というよりも、製造業という事業構造が東アジアをはじめとした世界に分散展開しているというべきではないのかとも思えた。
また「三人寄れば文殊の知恵」とか「臥龍企業」として海外展開すれば飛躍できる企業があるとの見解は、まともな経済考察とは言えないとも思えた。
「声を出せば元気が出た実例はアントニオ猪木だけだ」と書いていた経済書があったが、経済は「言葉で気合を入れれば元気がでる」ものとは到底思えない。
本書は、全く残念な本であると思う。 -
復興するだけじゃダメ。日本人全員が相当な危機感を持ち、復興を超えた飛躍的成長のために、これから各人の役割を担っていく必要がある。
-
TPP賛成派の意見を知るためならオススメです。
-
東日本大震災以降の、日本のあるべき姿をグローバル化と産業集積というキーワードをもとに教えてくれる本です。
現在、復興に向けて様々な支援、活動が行なわれているものの、原発問題やがれきの処理など、まだまだ解決できていない問題が山積しています。大震災は短期的に見れば日本にとって大きなダメージです。しかし、統計的には自然災害が多い国が必ずしも経済成長が低いわけではなく、過去の歴史をなぞれば、第2次世界大戦後の焼け野原から日本は成長を成し遂げた例を挙げて、今後の復興・成長への期待感を教えてくれます。
著書では、グローバル化と産業集積が、今後の日本の将来を決めるキーワードになると主張しています。グローバル化に関しては、異論を挟む余地は無いでしょう。少子高齢化で人口減少が既に始まっている日本だけに目を向けていても先は無く、世界市場に目を向けてビジネスを行なわざるを得ない状況になっています。
一方、産業集積に関しては、世間での浸透率は今ひとつかもしれません。著書でも例を挙げているように、アメリカのシリコンバレーのような、ある特定の産業に特化して、多数の企業が集積するような例は、日本ではそれほど多くないと思います。著書では分かりやすく、「3人寄れば文殊の知恵」といフレーズを用いて、同じ仲間が寄り集まるメリットを挙げています。
著書を読んで感じたのは、人間、危機的な状況に追い込まれると、何もかも捨ててゼロベースで物事を考えるようになるという考えです。何かドラスティックに変えるにも、キッカケが無いとなかなか実行できないことがあると思います。
現状の慣習に甘えていると、今まで歩んできた道を踏み外して進んでいくのは相当な勇気が入ります。しかし、退路を絶たれると、今までのようにはいきません。道が無いので、自分で道を造るしかありません。一人で道を切り開くのは大変なので、みんなでチカラを合わせて協力しながらがんばっていこう、と自分は読み取りました。
今回の震災をひとつのキッカケとして、自分を変えていく機会として捉えられるかどうかは自分次第だと思います。震災という出来事を、ひとつのターニングポイントとして自分の心の中でプラスに変えていけるかどうか、認識を変えていく必要があると思います。
目次
第1章 復興と成長
第2章 経済成長の鍵その1―グローバル化
第3章 グローバル化の方策―TPPを中心に
第4章 経済成長の鍵その2―産業集績
第5章 震災前の産業集積の実態
第6章 「つながり」と「技術」による集積
終章 日本人の底力 -
東日本大震災によって甚大な被害を受けた日本であるが、筆者は「復興」だけではダメであり、復興を越えた「飛躍的成長」が必要であるとする。
なぜなら震災前の日本経済は停滞しており、復興しても長期的には凋落していくだけだからである。
そこで震災後の今こそ、日本経済の飛躍的成長のために手を打つべきであると述べている。
その方法として、①TPPへの参入により企業のグローバル化を図ること、②東北など地方に特区を設け、産業集積による発展を図ること、の二つを主張している。
日本には力を持った臥龍企業が多くあり、TPPによって海外とつながり、特区により企業同士や大学などとのネットワークを拡充して、産業集積による技術向上を図ることで、生産性が大きく向上するとしている。
このような主張には賛成である。そしてそのタイミングは今しかないと思う。
筆者も述べているように、明治維新や戦後など、日本は混乱期に制度を大きく変え成長してきた。
今がまさにその混乱期であり、21世紀の日本の発展のために大転換を図るべき時であると思う。 -
グローバル化に賛成の内容でありそれもデータに基づいた論述で過去に読んだグローバル化反対のものと比較出来て面白かった。
-
グラフを用いた説明等もあり、理論展開が分かりやすい。多用される「文殊の知恵」論には少し疑問に思うところもあったが、経済特区に関する内容には目新しさこそないものの納得させられる。
-
明解なロジックで日本の底力を示してくれる。日本は明治維新や第二次世界大戦後に成し遂げたように、復興を超えた飛躍的成長を遂げる必要があると説く。そのためには、制度的転換によって、企業のグローバル化と、地方の産業集積の創出を、図る必要があるとする。ポイントとなるのは人と人とのつながりであり、若者に期待を寄せている。
-
震災からの復興、東北の再興等挙げられているが、どうもTPP擁護というのが透けて見える。タイトルだけでつられて読んでしまった事を後悔。日本の底力という事で歴史的な事実を踏まえた論証もTPPという一時のトピックを大きく扱うことでげんなりしてしまった。