日本語を翻訳するということ - 失われるもの、残るもの (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024930

作品紹介・あらすじ

「古池や蛙飛び込む水の音」芭蕉のこの俳句を英語で説明するとき、「蛙」をfrogとfrogsのどちらで訳すべきだろうか。単数か複数かを決めないまま翻訳することは英語では許されない。
ほかにも「ちらちら」「どんどん」などのオノマトペ、「雨ニモ負ケズ」の漢字カタカナ交じりの表記、「顔が能面のようだ」といった比喩など、翻訳困難な日本語表現を紹介。
夏目漱石も村上春樹も登場する、海を越えた日本語論。

感想・レビュー・書評

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  • 今までにも言語について少し学んでいたが、初めて知ることもあっておもしろかった!!
    言語そのものについて学ぶと、外国語を学ぶのも文学を読むのも音楽を聴くのももっと楽しくなるだろうなと思えた

    日本語と英語を行き来することで、「認知的な視点」の違いを明らかにできる。英訳された、あるいは英語の詩を読むのもいいな。

  • めちゃくちゃ面白い

    ひとつだけ気になったのは、翻訳によって、失われるものと残るものは何か、という問いだ

    私はこれは片手落ちと思う

    翻訳によって、失われるものと残るものに加えて、得るものは何か、を考えたい

    この本のしている考察は、まさに得るもののひとつであるし、例えば、「古池や 蛙飛び込む 水の音」の蛙が、英訳されたときに単数形か複数形かを選ばざるを得ないことで失われる曖昧さは確かにある。
    あるのだが、それは画一的な見方であり、単数を獲得してるともいえる。
    翻訳は、失ったばかりでなく、何かを得ている。というか、何も失わないように翻訳するのが無理なように、何も得ないように翻訳することも不可能だろう。

    そこで得てしまうものは正しいものではないのか?

    意味や価値の領域で正しさというものを問うてしまっている時点で、この質問自体が失敗している

    つまり翻訳は、何かを失い、何かが残り、何かが加えられる

    それは正しいか正しくないかではなく、原理的にそうなるので、そのことをどう用いるか、にしか問いの意味が生まれ得ない

  • すべての日本語を扱う人にオススメです。

    自分でも読み返したいかも。

  • 横書き。茶屋町のジュンク堂で購入。

    【書誌情報】
    初版刊行日 2018/6/21
    判型 新書判
    頁数 208頁
    定価 本体780円(税別)
    ISBN 978-4-12-102493-0

    「古池や蛙飛び込む水の音」芭蕉のこの俳句を英語で説明するとき、「蛙」をa frogとfrogsのどちらで訳すべきだろうか。単数か複数かを決めないまま翻訳することは英語では許されない。ほかにも「ちらちら」「どんどん」などの擬音・擬態語、「雨ニモ負ケズ」の漢字カタカナ交じりの表記、「顔が能面のようだ」といった比喩など、翻訳困難な日本語表現を紹介。夏目漱石も村上春樹も登場する、海を越えた日本語論。
    http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/06/102493.html


    【目次】
    はじめに [i-ii]
    目次 [iii-vii]

    序章 翻訳とは、つまり、何だろう 003
    0-1 重訳も翻案も通訳も 003
    0-2 本書の目的 004
    0-3 消える音 005

    第1章 こぼれ落ちる響き 007
    1-1 詩を翻訳すると? 007
    1-2 日本語の擬音語と擬態語の英訳はできるか 009
    1-3 口蓋音と鼻音は心理的な距離感を表せるか 013
      「ので」か、「から」か  

    第2章 ひらがな、カタカナ、漢字 019
    2-1 4つの表記法 019
      ひらがなのやさしさ  ウチか、ソトか  カタカナのジェンダー性  小説の技法として
    2-2 原語の句読点は翻訳できるか 034
      きのう借りた本を読んだ 
    2-3 書字方向――縦書きか、横書きか 038
      「情緒的で湿った感じを避けたかった」 

    第3章 比喩は翻訳できるのか 045
    3-1 直喩(シミリー) 048
    3-2 隠喩(暗喩) 050
      隠喩と宗教
    3-3 擬人化 055
      表れる共感  英語は擬人化を嫌う
    3-4 提喩(シネクドキ) 062
    3-5 換喩(メトニミー) 065
      換喩は、省略ではない 
    3-6 創造的な比喩の翻訳 070

    第4章 過去の話なのに、現在形? 075
    4-1 現在形と過去形しかない日本語 075
    4-2 意識の流れを、現在形で 079
    4-3 リービ英雄の時制 081
    4-4 日本語の再構成 084

    第5章 日本語の数はおもしろい 091
    5-1 「無数」とは? 091
      ヒントは俳画のなかに  芭蕉、晩年の感慨 
    5-2 複数標示の「タチ」は一体何か 098
      共感は、人間以外にも?  英語の「集合名詞」の場合 

    第6章 「ですます」が「である」に替わるとき 105
    6-1 コミュニケーションの矛先 105
    6-2 追憶の独り言 108
    6-3 「発話権」に注目すると 111
    6-4 モダリティはウチ形につく 114

    第7章 受動文の多い日本語、能動文の多い英語 119
    7-1 受動態の声 119
      受動態の作り方  「自発自動詞」は受動態に使えない  英語は、能動の声を選ぶ 
    7-2 自発態の声 131
      英語の自発動詞 
    7-3 可能形の声 138
      「が‐可能形」と「を‐可能形」  自然に、偶然、無造作に 

    第8章 翻訳に見る「日本語」の文体 149
    8-1 繰り返しと翻訳 149
      「冗長」はマイナスか、プラスか  
    8-2 省くか、繰り返すか、それが問題だ 155
      反復はアナログ、省略はデジタル  余白を解釈する 
    8-3 リズムと繰り返し 165
      英語で反復が起こる場合  漱石の不自然な日本語  漱石と村上春樹の共通点  村上春樹の戦略

    参考文献 
     日本語文献 [185-187]
     英語文献 [187-189]
     引用文芸作品 [189-190]

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1284732

  • 日本語を英訳することの難しさを様々な事例を用いて紹介してあります

    【こんな人におすすめ】
    翻訳に興味がある人

  •  皆さんは日本語を英語に訳した経験はありますか。その際、何か違和感を感じませんでしたか。
     著書は著名な作家の原文と英訳されたものとを比較し、英訳の際に原文から失われたもの、両言語の「認識的な視点の違い」を解明しています。
     著者は失われたものの一つを「音(音韻)」と見ています。それ自体は言語の違いだから致し方ないと言えばそれまでですが、詩のような音自体が重要なものにとっては、看過できないことです。作者も提案しているように、原音をCDなどで聴き
    ながら読むのも手段の一つですが、受動文の多い日本語に対し、英語は能動文が多いなどの相違から、完璧な翻訳は不可能に近い有様です。本書はそんな英訳の苦悩と同時に、両言語の持つ性質の深層に迫っています。

    京都外国語大学付属図書館所蔵情報
    資料ID:627343 請求記号:801.7||Mak

  • 翻訳することよりも、日本語について翻訳を通じて考察する本。著者独自の理論を説明するための本で、論文的な印象が否めない。全体として、さほど興味を引かれることもなく、後半は流し読み。

  • 日本語を英語に翻訳することについて書かれた本なので、日本語の勉強にも英語の勉強にもなり学びの多い本でした。英語と日本語で省略・反復する部分が違う、文化の違いで比喩が機能しなくなるといった話は意識するといった話など、言語という身近なテーマだけに確かにそうだなと思える部分が多く、知的好奇心を満たす面白さがありました。特に日本語の特性について意識してなかった指摘が多く、このあたりを意識すると日本語の使い方が上手くなる気がします。

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00260635

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著者プロフィール

1935年東京生まれ。早稲田大学で英文学(学士号/修士号)を、東京大学で言語学(修士号)を学ぶ。64年にフルブライト給費生としてアメリカに留学、イリノイ大学でPh.D.を取得。68年から91年までイリノイ大学で日本語・言語学・日本文化を教え、91年にプリンストン大学東洋学科教授に就任。2005年に退任し、名誉教授となる。2003~05年に全米日本語教育学会長を務め、07年には日本語教育学会賞を受賞。2014年、瑞宝中綬章受章。主な日本語著書に、『ことばと空間』(東海大学出版会、1978年)『くりかえしの文法』(大修館書店、1980年)があるほか、2017年に『日英共通メタファー辞典』(くろしお出版、共著)を刊行した。

「2018年 『日本語を翻訳するということ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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