日本型資本主義-その精神の源 (中公新書 2502)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (281ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025029

作品紹介・あらすじ

長期にわたって停滞を続ける日本経済。産業革命を経験することなく短期間で高度経済成長を実現したにもかかわらず、混迷から抜け出せないのはなぜか。本書ではその解明のために歴史を繙き、経済システムを支える日本人の「資本主義の精神」を探究。強欲な金儲け主義への嫌悪感、ものづくりや品質の重視、個人主義ではなく集団行動の重視など、欧米はもとより、中国・韓国など東アジア諸国とも異なる特質を明らかにし、現代日本のシステム改革への道筋を示す。

感想・レビュー・書評

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  • よく考えれば、至極当然のことであるが、資本主義にも国ごとの特色がある。日本において、明治の近代化以降の資本主義の進展は事実として受け入れられているが、実はそれ以前にも、資本主義精神が根付いていたということに、目から鱗が落ちた。日本型といったときに、経営活動の基盤として語られる「日本的経営」として特徴づけられている(いた)その内容はさらなる基底として「日本型資本主義」があると考えられるのではないだろうか。今こそ表層的なファッションになりがちの経済・経営の議論をもっとコアなところから考え直す時である。5つ星としたいが、文章の読みにくさと、それ以上に注釈の長さに閉口したということから1点減点です。

  • 欧米とも中国・韓国とも異なる経済システムはいかに生まれ、発達したのか。日本型資本主義の特質を踏まえたシステム改革を提唱する

  • 個人的に日本の仏教を評価していないせいかもしれないが、著者の議論は腑に落ちない。

  • 第1章 イギリスと日本の近代資本主義
    第2章 資本主義の精神の宗教的基礎
    第3章 高度成長期としての江戸時代
    第4章 西洋との出会い
    第5章 異種精神の相克と共存の時代へ

    著者:寺西重郎(1942-、尾道市、経済学)

  • 日本と西洋の資本主義の違いの根本にあるのは宗教的基礎であるのではという論。
    マックスウェーバーが唱えたプロテスタントの精神に比較した場合、日本は大乗仏教の易行化という革新からそれぞれの職業においての求道や身近な他者といった概念が生まれ、それが社会的分業とそれに適合する道徳律を発展させたと。そしてそれが信頼をもたらし、社会資本構築の取引コストが引き下げられたと。
    西洋と日本だけでなく、儒教圏はまた違った資本主義の精神を持っており、当然ながら他地域は他地域の資本主義の精神を持っている。今は異種資本主義の精神の対立が起きている。

  • 正座して熟読すべき一冊。鎌倉新仏教に端を発する易行化をキーワードに、マックスウェーバーを意識しつつ、日本における資本主義発展の仕組みが語られます。海運・鉄道といったインフラ整備や、特に近年の金融システムにも言及があるのは嬉しいところ。最後に少し出てきますが、同様の文脈で中国とかも考えてみると面白そうです。

  • Ⅿ・ウェーバーの「プロ倫」は既に100年前。中国・韓国などアジア諸国の急激な経済発展は、日本だけがその例外でなくなってきた。その社会学を見直しが必要な場面になっているのでは…。この宣言から始まるこの論文は「プロ倫」の向こうを張って新しい定式を打ち立てようとしている壮大な意気込みを感じる。著者は日本型はアジアの儒教とは異なり、鎌倉仏教にその源があり、鎌倉仏教の在家信者でも成仏(易行化)できるという現世社会における求道的職業倫理が、「プロ倫」同様に経済行動への文化的伝統、日本社会の基礎となり、それが江戸時代には日本人の行動規範として定着してたことから、既に日本独自の資本主義経済がかなりの発展段階にあったことを主張している。私たちの想像と異なって決して儒教ではなく仏教がそれを生み出したのであり、中国などの儒教型資本主義とはまた別であることを強調している中で、仏教、儒教、キリスト教(その中でもカトリック、プロテスタント)に分けた分析がⅯ・ウェーバーを意識させ、知的興奮さえ感じさせられる大作だ。英訳も決まっているらしい!タイムリーな本であり、反響が楽しみ。

  • 東2法経図・6F開架 B1/5/2502/K

  • 332.1||Te

  •  大風呂敷な『経済行動と宗教』を2014年ごろ読みました。〈https://booklog.jp/item/1/4326550716

     面白かったので、エッセンス版といえる本書を購入。著者は、長年このテーマに取り組まれてきたようです。
     仏教への言及は鵜呑みに出来ないものもありますが、専門外なので予想通り(果敢な姿勢に感動しています)。ここに続く研究に期待すべきだと私は思います。


    【版元】
    初版刊行日 2018/8/20
    判型 新書判
    ページ数 304ページ
    定価 本体880円(税別)
    ISBN 978-4-12-102502-9

    長期にわたって停滞を続ける日本経済。産業革命を経験することなく短期間で高度経済成長を実現したにもかかわらず、混迷から抜け出せないのはなぜか。本書ではその解明のために歴史を繙き、経済システムを支える日本人の「資本主義の精神」を探究。強欲な金儲け主義への嫌悪感、ものづくりや品質の重視、個人主義ではなく集団行動の重視など、欧米はもとより、中国・韓国など東アジア諸国とも異なる特質を明らかにし、現代日本のシステム改革への道筋を示す。
    http://www.chuko.co.jp/shinsho/2018/08/102502.html

    【簡易目次】
    まえがき [i-xiii]
    目次 [xiv-xvi]

    第1章 イギリスと日本の近代資本主義 003
    第1節 グローバル資本主義と精神の相克 006
    第2節 制度、技術、精神 016
    第3節 ウェーバーの予見した問題 030

    第2章 資本主義の精神の宗教的基礎 045
    第1節 宗教と経済行動 050
    第2節 鎌倉新仏教の革新 063
    第3節 室町・戦国の市場経済 092
    第4節 成長な準備した経済システム 113

    第3章 高度成長期としての江戸時代 127
    第1節 生産力の拡大と商業の発展 134
    第2節 仏教が支えた資本主義の精神 154
    第3節 儒教と資本主義 181

    第4章 西洋との出会い 193
    第1節 産業革命なき経済成長 195
    第2節 戦後的対応とグローバリズム 208

    第5章 異種精神の相克と共存の時代へ 223
    第1節 三つの資本主義の精神 227
    第2節 日本型システムの可能性 250

    あとがき(二〇一八年春 寺西重郎) [269-273]
    参考文献 [275-281]


    【図表一覧】
    表1 新しい宗教の伝来とその改革 052
    表2 救済方法の違い 056
    表3 宗教改革の経済行動への影響 059
    表4 産業部門別の生産量の構成比 093
    表5 生産と人口の成長率 123
    表6 江戸時代の人口と耕地 147
    表7 原型的な異種の資本主義の精神 228


    【目次】
    まえがき [i-xiii]
      日本の資本主義、西洋の資本主義  「大きな物語」による考察  仏教的伝統とキリスト教的伝統  異なる世界観に立つ経済社会との共存共栄  本書の構成
    目次 [xiv-xvi]


    第1章 イギリスと日本の近代資本主義 003
    第1節 グローバル資本主義と精神の相克 006
      西洋以外に資本主義はない  アメリカの資本主義も「謎」が多い  金融資本主義をどう見るか  宗教に由来する行動様式が埋め込まれた社会
    第2節 制度、技術、精神 016
      商業資本主義と近代資本主義  近代資本主義の条件  技術的条件――二種類の「規模の経済」  精神的条件――労働の規律と規範  
    第3節 ウェーバーの予見した問題 030
      プロテスタンティズムと禁欲的な職業労働  予定説とは何か  功利主義の倫理的基礎  ウェーバーの予見した現代資本主義の問題  ウェーバーの予見しなかった「ウェーバー的問題」

    第2章 資本主義の精神の宗教的基礎 045
    第1節 宗教と経済行動 050
      宗教の変化発生の状況類似性  救済方法の違い  救済の結果 
    第2節 鎌倉新仏教の革新 063
      大乗仏教における廻向の概念  易業化の社会的背景  天台本覚思想  鎌倉新仏教の登場  法然が採用した専修〔せんじゅ〕念仏  親鸞、道元、日蓮  易業化の衝撃  身近な他者の重要性 
    第3節 室町・戦国の市場経済 092
      大乗仏教の道徳律  在家信者のための道徳律  社会的分業の進展と宗教  一向一揆  「無縁」の空間論と一向一揆  戦国の社会 
    第4節 成長な準備した経済システム 113
      求道主義の下での社会構造  萌芽的な商業主導の経済システム  戦国期までの成長制約と江戸期の高成長 

    第3章 高度成長期としての江戸時代 127
    第1節 生産力の拡大と商業の発展 134
      経済成長をもたらした江戸期のシステム  都市化と生活  海運の発展  地域間分業に基づく経済発展  生産システムの不変性  流通と商業・金融の発展  江戸の経済成長
    第2節 仏教が支えた資本主義の精神 154
      通俗道徳と廻向  道徳律と職分  二宮尊徳の思想  石田梅岩の思想  制度化された不平等性にも逆説的な意義があった  武士階級の職分  
    第3節 儒教と資本主義 181
      統治論と道徳思想  朱子学は日本社会の現実に合致したか  通俗道徳についての誤解  知識の世界市場という視点の重要性

    第4章 西洋との出会い 193
    第1節 産業革命なき経済成長 195
      原型としての日本資本主義の精神  なぜ日本で自生的な産業革命が生じなかったか  西洋との接触――戦前期的対応  西洋との接触――戦後期的対応 
    第2節 戦後的対応とグローバリズム 208
      「身近な他者 vs. 公共」と金融システム  職業的求道と労働市場のシステム  戦後の労働市場の激変    

    第5章 異種精神の相克と共存の時代へ 223
    第1節 三つの資本主義の精神 227
      キリスト教世界の資本主義の精神  仏教世界の資本主義の精神  儒教世界の資本主義の精神  三つの資本主義の精神  三つの資本主義の精神の進化  比較精神論から見た日本の資本主義の精神  死生観と自然観
    第2節 日本型システムの可能性 250
      資本主義の精神の収斂への動き  差異化と多様化  金融システム  労働市場  自由貿易 vs. 自由要素移動

    あとがき(二〇一八年春 寺西重郎) [269-273]
    参考文献 [275-281]

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著者プロフィール

一橋大学名誉教授
1965年一橋大学経済学部卒業、70年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学、83年経済学博士(一橋大学)。1970年一橋大学経済研究所専任講師、73年助教授を経て84年教授、2004年名誉教授。この間、1976~78年イェール大学客員教授、85~86年オーストラリア国立大学客員教授。2006年より日本大学大学院商学研究科教授などを経て、2015年より一橋大学経済研究所非常勤研究員。
主著に、『経済行動と宗教――日本経済システムの誕生』(勁草書房、2014年)、『戦前期日本の金融システム』(岩波書店、2011年)、Evolution of the Economic System in Japan(Edward Elgar, 2005)、『日本の経済システム』(岩波書店、2003年)、『経済開発と途上国債務』(東京大学出版会、1995年)、『工業化と金融システム』(東洋経済新報社、1991年)、『日本の経済発展と金融』(岩波書店、1982年)、などがある。

「2017年 『歴史としての大衆消費社会』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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