日米地位協定-在日米軍と「同盟」の70年 (中公新書 2543)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025432

作品紹介・あらすじ

日米地位協定は、在日米軍の基地使用、行動範囲、米軍関係者の権利などを保証したものである。在日米軍による事件が沖縄などで頻発するなか、捜査・裁判での優遇が常に批判されてきた。冷戦崩壊後、独伊など他の同盟国では協定は改正されたが、日本はそのままである。
本書は、日米関係と在日米軍の戦後70年の軌跡を追う。実際の運用が非公開の「合意議事録」で行われてきた事実など、日本が置かれている「地位」の実態を描く。

感想・レビュー・書評

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  • ひめゆりの塔を知っていますか? 戦争を知らない世代が歴史を学ぶ切実な意味 - 山本章子|論座 - 朝日新聞社の言論サイト
    https://webronza.asahi.com/politics/articles/2021052300001.html

    日米地位協定|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2019/05/102543.html

  •  本書は今年読んだ本の中でも図抜けている。私は本書が、日米同盟並びに日米地位協定に対する国民の考えに根本的な変化を引き起こす力を持っているとすら言いたい。もし今年、自分の周りの人に読んでもらいたい一冊を選ぶならこれを選ぶだろう。
     筆者はあとがきで沖縄への感謝を口にする。
    私は、筆者がこのあとがき部分を含めた本書全体を通して読者対し非常に大きな配慮をしたことを感じた。筆者の配慮を台無しにしないためにもそれについて多くは語るまいが、その配慮があってこそ本書はその読者がどんな立場にある人だったとしても読みやすく、価値のあるものになっていると思う。

    ぜひ皆さん読んでください。

  • 【合意議事録という不誠実】
    沖縄で事件・事故が起こるたびに在日米軍の権利を保証する日米地位協定の改定が叫ばれてきたが、本書はそれでは問題は解消され得ないと主張する。なぜか。
    日米地位協定は1960年の日米安保改定時に、占領期の米軍特権が色濃く残る日米行政協定を改正したもの。自国の利益を最大限追求するアメリカをなんとか説得するために、日本政府が「合意議事録」という「密約」を取り交わしてようやく改正にこぎつけたという経緯がある。
    文言上は「改正」されたのだが、実際は「合意議事録」によって占領期そのままの米軍の排他的な自由運用は担保されてきた。しかもそれは国民の与り知らぬところで2000年代初頭まで非公開とされてきたのだ。だからこそ著者は、この不誠実な「合意議事録」こそまず撤廃すべきだと主張する。
    では、どうすればそれができるかというと世論が動かすしかないという。世論とはつまり私たちのこと。折しも衆院選が近い。各政党・候補者の公約を吟味しつつ投票行動で示していきたい。(さとちん/本土に沖縄の米軍基地を引き取る福岡の会)

  • 日米地位協定に関する本を読んでみたいと思っていたところ、書店で見かけて購入。
    本書のとおりであるならば、日本政府の対応は当初、少しでも日本に不利な部分を取り戻そうとしていたのに対し、近年は、改定の努力はしていない上に国民感情を宥めることに腐心しているだけと思える。また、アメリカの思うがままにされている印象を受ける。
    自分自身無知であったが、日本国民はもう少し、日米地位協定についての理解を深める必要があるだろう。

  • 【書誌情報】
    日米地位協定――在日米軍と「同盟」の70年
    山本章子 著
    初版刊行日:2019/5/22
    判型:新書判
    ページ数:272
    定価:924円(10%税込)
    ISBN:978-4-12-102543-2

    日米地位協定は、在日米軍の基地使用、行動範囲、米軍関係者の権利などを保証したものである。在日米軍による事件が沖縄などで頻発する中、捜査・裁判での優遇が常に批判されてきた。冷戦後、独伊など他国では協定は改正されたが、日本はそのままである。本書は、協定と在日米軍を通して日米関係の軌跡を描く。実際の運用が非公開の「合意議事録」に基づいてきた事実など、日本が置かれている「地位」の実態を描く。
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2019/05/102543.html

    【簡易目次】
    はじめに 
    第1章 占領から日米安保体制へ──駐軍協定 
    第2章 60年安保改定と日米地位協定締結──非公開の合意議事録 
    第3章 ヴェトナム戦争下の米軍問題──続発する墜落事故、騒音訴訟 
    第4章 沖縄返還と膨大な米軍基地──密室のなかの五・一五メモ 
    第5章 「思いやり予算」の膨張──「援助」の拡大解釈 
    第6章 冷戦以後の独伊の地位協定──国内法適用を求めて 
    第7章 沖縄基地問題への注目──度重なる事件、政府の迷走 
      1 二度の改定要求の機会──独、伊、韓国との岐路 
      2 沖縄から米国への改定要請──地位協定への自治体関与 
    終章 日米地位協定のゆくえ──改定の条件とは 

    あとがき 
    参考文献
    付録 
      沖縄県による日米地位協定見直し要請
      日米地位協定
      日米安全保障条約(新)
      日米地位協定
    関連年表

  • 日米同盟を扱う本は多々あるが、本書は、同盟の骨格を為す日米安保条約の更に奥の院である日米地位協定の成立経緯を紐解き、最近まで明らかになっていなかった合意議事録こそが第一次安保の日米行政協定下における特権構造を維持するシステムの核心であり、外務省・防衛省など政府がひた隠しにしてきたことを明るみに出す名著。

    終戦時から米軍駐留の歴史や特権成立の歴史を簡潔にまとめ、これが第二次安保・沖縄返還時に合意議事録制度として成立し、見かけ上は改善したように見えて実態は変わってなかった事実を指摘。

    また、その頃までは協定改正や基地返還に取り組んできた外務省が、冷戦の終結や米国における対日感情の悪化により、フィリピンのように米軍撤収となることを恐れ、当時の防衛庁に引きずられる形で渋々運用改善に応じてきたという歴史も面白い。

    さらに、ドイツやイタリアとの比較や、それぞれの置かれた環境から単純な比較は困難であることも誠実に指摘。

    合意議事録を撤廃という結論・提言はやや乱暴に過ぎて実現可能性は低いようにも思えるが、アカデミズムの成果として闇を明るみに出したことは見事。

    今後、米中対立、沖縄世論の硬化、長期低落の日本の国力といったことを見据えて国民全体で考えていくべき課題であるという認識を広め、政府・自治体に誠実な対応を求めていくことが重要と思う。

    なお、筆者は、これまでこの問題がジャーナリズム主導で扱われ、アカデミズムの怠慢であったと指摘するが、とんでもない。東大含めて軍事研究はしてはならないという思考硬直の中で当然のことだったと思う。こうした中でこれを書き上げた筆者の努力と勇気に敬服。今後は、左右の思想対立はあっても、こうやって重要問題を議論できる学界になって行ってほしい。

  • 日米安保条約の運用を規定した下位の規約として日米地位協定があることは周知の事実だが、その核心は国会審議さえ経ていない合意議事録なる密約であることが、巷間囁かれる陰謀論ではなく研究成果として明らかにされたことは非常に意義がある。惜しいのは、もともと専門用語が頻出する類の本なのに、ところどころ文意が辿りづらい長文が見られた点。改訂の際には修正をお願いしたい。

  • 難しい言葉ばかりで頭が混乱するかと思いがち、
    んなこたあ全くない。私達の生活と地続きな話だ。

    究極、日本よ、この状態や立ち位置でいいの?
    という疑問も投げかけてくる本。宿題も多い。

    国を愛する者こそ読むべき一冊。

    沖縄返還〜戦後の政治的動きはもちろん、
    特にここ30年の米軍基地をめぐる日米の政治的な動きや
    モチベーションに目から鱗。

    在日米軍基地問題は、「沖縄の」問題ではないのに、
    そう切り取られてきた経緯がよく分かる。

    結局国レベルの政治の話で、
    地元がずっと置いてきぼりなことに改めてため息。

  • 1960年に締結された合意議事録の方が、米軍の優越の根源的な原因であることを殆ど認識していなかった。この破棄無くして平等化は実現できそうに無い。マスコミ等はもっとこの問題を取り上げるべきではないか。
    それにしても自民党はこの問題に何故こんなにも弱腰なのか、本書でも指摘されているように、世界情勢が改訂に適した時期もあったと思われるが、そのような動きはなかった。
    政治家の怠慢が最大の問題であろう。

  •  地位協定の見直し、つい最近も地方議会の決議数がコロナの陰に隠れて話題になっていた。沖縄問題、駐留米軍基地問題などがおこるとき、その大元である安保条約が問題視されるが、個々の事件の問題点の根源にあるのは、実は、安保条約と表裏の関係にある行政協定であり、それが改定された現在の地位協定だ。要は米軍の日本における特権を是認したものであり、日本の弱腰外交の最たる汚点のひとつだ。平時は日本国法に従うが有事はその限りではない、と一見NATO並みの妥当な内容に見えて、実は、アメリカが有事だといえばすべてが治外法権になってしまっている。だから沖縄で事件が起きてもうやむやになってしまう。広く読まれるべき労作だと思う。

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著者プロフィール

1979年北海道生まれ。 2003年一橋大学法学部卒業、2007年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。 2007年から2012年第一法規株式会社に編集者として勤務、2015年一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)、沖縄国際大学非常勤講師を経て、2018年琉球大学人文社会学部国際法政学科講師、2020年より同准教授。専攻は国際政治史。著書に、石橋湛山賞を受賞した『日米地位協定-在日米軍と「同盟」の70年』 (中公新書 2019年)、『日米地位協定の現場を行く――「基地のある街」の現実』(岩波新書 2022年)、『米国アウトサイダー大統領――世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書 2017年)など。共著に『沖縄と海兵隊――駐留の歴史的展開』(旬報社 2016年)などがある。

「2023年 『沖縄のZ世代と考える「基地問題」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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