ドイツ・ナショナリズム-「普遍」対「固有」の二千年史 (中公新書 2666)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 219
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121026668

作品紹介・あらすじ

アメリカの世界覇権が陰りを見せるなか、欧州で主導権を握り、存在感を増すドイツ。しかし英仏など周辺国からの反撥は根強い。そこには経済をはじめとする国力の強大化への警戒感だけでなく、放漫財政を指弾し、難民引き受けや環境保護を迫るなど、他国にも西欧的=「普遍」的価値観に照らして「正しい」ことを求めるドイツの姿勢がある。二千年にわたる歴史を繙き、ドイツはいかにしてドイツとなったのかをさぐる。

感想・レビュー・書評

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  • かなり独特のわかりにくい文章で辟易した。結局言いたことは「おわりに」と「後記」に書かれている程度のこと。どんな義理で出版することになったのかはしらないが中公新書の編集部にも責はあると思う。

    なんなんだこの人?と思って検索していくと著者のマックス・ウェーバーについての既出版物に対する論評が見つかった。本書で私もこの論評者とまったく同じ感想を持ったので参照しておきたい。

    (引用)以上、総じていえば、今野書は、その自負の大きさにもかかわらず、得意なはずの史実の発掘という点でも先行のマリアンネ『伝』およびモムゼン『伝』を大きく超えるものとはいえず、また、その史実、つまりウェーバーの政治的発言・政治思想の「分析」・解釈という点では、結局皮相で突っ込み不足が目立ち、しばしば一面的な解釈に陥っている。(引用終わり)

  • ドイツの政治と思想の歴史が凝縮して整理されており、現在に至るまでの流れがよくわかった。ナチ政権の反省から、過去を忘れようという動きだけでないとか、西欧の普遍とドイツの固有との狭間で、今もドイツは(実は)悩んでいるということも知ることができた。
     ただ、史的事実に忠実に描かれ、著者の意見はほとんど書かれていないので、読むのに少し退屈した面がある。著者撮影のものも含めて写真も多いのだが、各年代ごとの地図(一部しかない)や年表などの資料もあるとよかったかなと思う。

  • 2022I103 234/Ko
    配架場所:C3

  • 「普遍」と「固有」の対立は近代日本、そして昨今ではロシアが直面している問題ではあるが、その先輩格?としてのドイツ史を辿る内容。所謂「戦後史」が半分を占めており、昨今の欧州事情まで言及されている点が特徴的で、東西分裂やその後の統合等については殆ど知らなかったので勉強になった。また著者のある種相対化されたドイツ愛?も随所に感じられる点も面白い。時には批判され、時には模範となる、評価が定まらない印象のあるドイツだが、本書を通読するとその理由がなんとなくわかるような気がしてくる。題名から社会科学的な内容を期待したのだが、基本的には通史的な叙述でかなり細かいし、特に前半は西洋史の前提知識がないと結構読むのが大変(ちなみに後半は思想史的要素もある)。とはいえ、非西欧の日本や準?西欧のロシアが直面する「普遍」と「固有」の対立を理解する上で、ある種の「モデルケース」としてのドイツ史を把握しておくことは有益かつ重要であると言えるだろう(まとめ部分に相当する「おわりに」と「後記」は必読)。

  • 読みごたえがあった。「ドイツ的なもの」を考察するために2000年史になるとは思わなかったが、ドイツ史って、英仏と違い、国としての形が時代によってずいぶん変わるから、いまひとつピンと来ていなかった。メルケル後のドイツはどうなるのだろう、注目したい。
    サブタイトルの「「普遍(=西欧的)」対「固有」の二千年史」の通り、歴史を紐解きながら丁寧にナショナリズムはどのようなものなのかを検討している。考えたらドイツ=ドイツ語を話す人、ではないのだよなー

  • 234||Ko

  •  本書を一言で言うなら、西欧的「普遍」とドイツ的「固有」の相剋又は共存の歴史だ。神聖ローマ帝国時代はキリスト教的「普遍」を自任しつつも、その中の各領邦や領地という「多層構造」の愛国主義も存在した。
     フランス革命とナポレオンを通じた新たな「普遍」が押し寄せて来ると、抵抗派から「固有」のドイツ帝国が生まれる。この帝国はWWIで英仏に敗れると、西欧的「普遍」の劣等生扱いされてしまう。ナチス政権時代は「固有」が重視されるも、欧州制覇に近づいた段階ではドイツ文字を廃止するなど、欧州のドイツ的=「普遍」支配に備える。
     戦後の東西ドイツは2つの「普遍」にそれぞれ従属する。西ドイツでは、西欧的「普遍」を前提とした中で「修正による再出発」を図る。そして現代ドイツは、環境保護といった価値の面も含めて西欧的「普遍」の優等生となるが、一方で特に君主制、教会、軍隊について「固有」の面が肯定的に再評価されているというのが意外だ。軍事史博物館や軍事祭典の復興なんて、ドイツは戦争の過去を反省したのに日本は、というよく聞く論調の中ではどう位置づけられるのか。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5/2666/K

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著者プロフィール

1973年、東京都に生まれる。1995年、東京大学法学部卒業。2002年、ベルリン大学第一哲学部歴史学科修了(Dr. phil.)。2005年、東京大学大学院法学政治学研究科修了、博士(法学)。著書に、『マックス・ヴェーバーとポーランド問題』(東京大学出版会、2003年)、『マックス・ヴェーバー』(同、2007年)、『多民族国家プロイセンの夢』(名古屋大学出版会、2009年)、『教皇ベネディクトゥス一六世』(東京大学出版会、2015年)など。

「2018年 『吉野作造と上杉愼吉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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