平氏―公家の盛衰、武家の興亡 (中公新書 2705)

著者 :
  • 中央公論新社
3.87
  • (8)
  • (6)
  • (7)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 134
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027054

作品紹介・あらすじ

「平氏」と聞いてイメージするのは、平安時代末に活躍した平清盛ら桓武平氏(のなかの伊勢平氏)の武士だろう。だが、清盛の一家以外にも歴史に名をとどめる平氏は数多い。例えば、源平合戦で功績を挙げ鎌倉幕府を支えた御家人(北条氏、梶原氏、三浦氏など)の多くは平氏出身とされる。著名な歌人や、貴重な家記を残した公家も少なくない。本書は、それら公家・武家にわたる平氏の全貌を明らかにする試みである。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 武家だけでなく、公家や桓武平氏以外までも丁寧に解説する。
    公家平氏は堂上平氏として貴族の地位を維持した家があったはものの、多くは代が進むごとに天皇のミウチとしての縁が薄くなっていき総じて没落するというのは興味深かった。
    本書全体としては、事実羅列系で読みにくかった。

  • 平家といえば全てが栄えていたと思っていたら、そうではなく平家一門のなかでも栄達した家もあれば、していない家もあったり、武士的な関東と中央でも権力を握った伊勢平氏もあるなど、常識とは大分違う平家像であった。

  • 【請求記号:288 ク】

  • 平氏というと、どうしても平清盛一族を思い出しますが、この本では平氏を体系的に整理されていて、俯瞰しやすかった。

    縦の繋がりは分かりやすいが、横の繋がりが今ひとつ分からないので、改めて読み直しが必要かも知れません。

    なかなか、興味が尽きにくい1冊です。

  • 源氏を理解するには、平氏を理解するべき。

    政治機構を作った一族は、本来なら滅びる必要は無いはず。

    時代の流れは怖いものだ。

    中世を勉強しよう。

  • 著名な武門の桓武平氏のみならず、庶流も含めた全賜姓平氏を対象に、その起こりから平家政権滅亡までの歩みをたどる内容。網羅的に紹介される平安末にいたるまでの公家平氏の盛衰や、残された数々の日記に関する解説は興味深いものがあった。

  • タイトル通り「平氏」の本。
    いわゆる清盛の一族の「おごれる平家は久しからず」といった一般常識の範囲ではなく、あらゆる平家の系統を網羅した決定版という感じ。

    825年(天長2年)に賜姓された桓武平氏は、都で実務官人(いわゆる朝廷の官僚ですね)を輩出した高棟流平氏と、坂東で武家となった高望流平氏に分かれ、それぞれ別々の道を歩んできて、王家として君臨した清盛一派の平家滅亡後も明治維新までつながっている平家もあり、単純な「源平合戦」などと割り切れないことが良くわかりました。

    直前に読んだ南朝の研究もそうでしたが、物語やイメージによる単純化には、一長一短があるな、ということを再認識した本でした。

  • <目次>
    第1章  桓武平氏の誕生
    第2章  その他の平氏
    第3章  公家平氏の人びと
    第4章  武家平氏の葛藤
    第5章  公家平氏と武家平氏の邂逅

    <内容>
    『尊卑文脈』などを元に、平氏について語っていく。新しい解釈というより、文献から確実な史料を紹介し、裏付けていくやり方。古代日本史の資料集としての使い方がいいかもしれない。

  • 平氏
    ~公家の盛衰、武家の興亡~

    著者:倉本一宏(国際日本文化研究センター教授)
    発行:2022年7月25日
    中公新書

    以前、作家・森岡浩氏と歴史学者・本郷和人氏が書いていた新聞記事をまとめ、平家と平氏について整理してFBに書き込んだ。
    平氏には公家になった平氏と武士になった平氏があり、さらに武士になった平氏には棟梁になれる血筋となれない血筋があった、と。棟梁になれたのは京都で貴人に使えた武士の平氏に限られ、「平家」と呼ばれたのは伊勢に拠点を置いて京の朝廷に仕えた伊勢平氏を言う。平清盛は伊勢平氏、その正室である平時子は公家平氏である。なお、著者は「平家」を清盛から発する一族だと定義しており、森岡氏とは微妙に異なる。

    これが概要だけど、もう少しだけ詳しく知りたいというのが人情だ。この本の第1章に書かれている。まず、どうして公家と武士に分かれたのか?
    桓武天皇の子、葛原(かずはら)親王の申請により、その子である高棟王に平朝臣が賜姓され、平高棟となったのが825(天長2)年。これが公家平氏の祖。一方、葛原親王の孫である高望王に平朝臣が賜姓されたのが889(寛平元)年で、こちらは武家平氏の祖となる。ただし、武家平氏にも葛原親王流ではない3流があり、さらには桓武平氏ではない平氏も3系統ある。
    1.桓武平氏
    ①葛原親王流
    ・高棟流桓武平氏(公家平氏):平高棟が祖(825~)
    ・高望流桓武平氏(武家平家):平高望が祖(889~)
    ②非葛原親王流
    ・仲野親王流平氏
    ・万多(まんた)親王流平氏(862~)
    ・賀陽(かや)親王流平氏
    2.非桓武平氏
    ・仁明(にんみょう)平氏
    ・文徳(もんとく)平氏
    ・光孝平氏

    こんな風に整理されるが、言うまでもなく葛原親王流がメイン。
    公家と武家との分かれ道だが、最初からお前は公家、あんたは武家と分けられたのではない。9世紀半ば以降、板東の地は群盗や俘囚といった武装騎馬集団の蜂起が相次ぎ、それに対処するために朝廷が魚名流藤原北家の利仁・秀郷や、平姓を与えられた平高望といった武人的性格を帯びた貴族を派遣して、その鎮圧にあたらせた。これが始まりのようだ。

    板東に下向させられた以上、中央の貴族社会に参入する見込みがなくなったため、彼らは勲功の恩賞によって貴族社会に復帰することを夢見て、反乱鎮圧に志願したものと考えられるらしい。

    武家平氏のほとんどは、基本的に板東に拠点を置いていたが、京でも活動をして、朝廷に仕える身となることを目指していた。ただ、板東の地で反乱を起こした平将門もそうだったが、京での仕事を手に入れる前にあのような結末となってしまった者も多い。なお、武士という身分は、のちに、政府・宮廷貴族、地方国衙(こくが)が、「天慶勲功者」を武士として認知することで成立した。

    源氏もそうだが、平氏もなぜ皇族身分を離れたのか?主な理由は二つだそうで、一つは皇族の経済的負担を減らすため、もう一つはこのまま皇族身分でいても閑職に甘んじなければいけないため。雇われる身分になって実力で挽回をはかろうということらしい。

    公家平氏は、最初はよかったが、段々と高職につく数が減り、公卿から滑り落ちて100年以上もブランクが出来た。高棟王の末裔は、蔵人や検非違使など「堂上(とうじょう)平氏」と呼ばれる中下級官人となった。堂上とは、殿上間に昇殿する殿上人(てんじょうびと)のこと。

    武家平氏で天下を取ったのは、平清盛も輩出した伊勢平氏だった。祖は平維衡で、高望王の3世代下(ひ孫)。高望―国香―貞盛―維衡。その5世代下に清盛がいる。

    さて、こうした平氏の概要というか全体像を知りたいという向きには第1章だけでほとんど十分となる。2章以下は、それぞれの系統の平氏について細かく詳しく解説しているが、知らない人がほとんどであり、歴史の授業でも学ばなかったし、ドラマや映画でも聞いたことない人がほとんど。同じような名前が出てくるし、誰が誰だか分からなくなる。官職も中下級が多くて、歴史物語が浮かんでこない。ただ、5章になると清盛を中心に、公家平氏と武家平氏の邂逅が描かれ、武家平氏が後白河上皇(法皇)による院政の核となってきて、そこまで上り詰める様子、そして、後白河との仲がこじれてきて武家政権を樹立するようになる様子、さらには没落して源氏政権になる様子が描かれて興味深い。

    ただ、鎌倉幕府を樹立した源頼朝は源氏だが、取り巻きの多くが平氏である。鎌倉殿の13人も多くが平氏。著者も書いているが、鎌倉幕府は源氏の政権ではなく、板東平氏が源氏をまつりあげて天下を取ったという性格が強い。

    なかなかに難儀な本だった。

  • 高棟王からはじまる堂上(公家)平氏の血脈と、高望王からはじまる武家平氏の血脈。

    二つの平氏の血統が、清盛と時子(二位の尼)の代で一つになって、一門の最盛期を迎えるのは、歴史の凄みを感じる。

    武家平氏の政権は、短い期間で終わってしまった。

    けど、公家の平氏は、中下級の貴族として、平安から幕末まで、長きにわたって朝廷を支えていたというのも、なかなかに面白い。

    頼朝の蜂起を支えた、坂東武者たちのほとんどが平氏の流れを汲むというのも、歴史の皮肉というべきか。

    北条、千葉、上総、大庭、梶原、三浦、畠山、土肥、和田、みんなルーツは平氏を自称してるんだよね。

全19件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1958年、三重県津市生まれ。東京大学文学部国史学専修課程卒業、同大学大学院人文科学研究科国史学専門課程博士課程単位修得退学。博士(文学、東京大学)。国際日本文化研究センター教授。専門は日本古代政治史、古記録学。主著に『平安朝 皇位継承の闇』『皇子たちの悲劇』(角川選書)、『一条天皇』(吉川弘文館)、『蘇我氏』『藤原氏』『公家源氏』(中公新書)、『藤原道長「御堂関白記」全現代語訳』(講談社学術文庫)、『藤原道長の日常生活』(講談社現代新書)などがある。

「2023年 『小右記 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

倉本一宏の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×