物語 チベットの歴史-天空の仏教国の1400年 (中公新書 2748)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027481

作品紹介・あらすじ

軍事国家であったチベットはインド仏教を受容し、12世紀には仏教界が世俗に君臨する社会となった。17世紀に成立したダライ・ラマ政権はモンゴル人、満洲人の帰依を受け、チベットはアジアの聖地として繁栄した。しかし、1950年人民解放軍のラサ侵攻によりチベットは独立を失い、ダライ・ラマ14世はインドに亡命した。チベット仏教が欧米社会で高く評価されているため、チベット文化はかろうじて維持されているが、チベットの未来は今後どうなるのか?

感想・レビュー・書評

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  • 白雪姫と七人の小坊主達
    https://shirayuki.blog.fc2.com/

    チベット学者・石濱裕美子の部屋
    https://ishihama.tibetan-studies.net/okamenomori/ishihamayumiko/index.html

    物語 チベットの歴史 -石濱裕美子 著|新書|中央公論新社
    https://www.chuko.co.jp/shinsho/2023/04/102748.html

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    ダライ・ラマ謝罪、少年の唇にキスし「私の舌を吸って」──性的虐待と批判浴びる|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
    https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/04/post-101371.php

  • ふむ

  • 古代の軍事帝国から政教一致の仏教国家となり、現代は中国の侵攻により受難の歴史を歩んでいるチベットの通史。
    チベットの人名や仏教用語が満載で、特に第1章、第2章はすっと頭に入ってくる内容ではなく、正直、読み進めにくかったが、あまりよく理解していなかったチベットの古代から現代までの歩み、そしてチベット仏教の思想を知ることができ、有意義だった。
    古代チベット帝国が仏教思想のフィルターを通した歴史として語り継がれているので、本当かどうかよくわからない話も多かったが、神話のようで面白く感じた。また、仏教国家といっても、内部の権力争いなど、俗っぽい歴史も結構あるなと感じた。
    これまで清朝の頃からチベットはいわゆる中国の支配下にあったという認識だったが、本書を読んで、チベット側の「中国とチベットの歴史的な関係は『高僧とそれを後援する施主』の関係であり、主従関係ではない」という主張も十分妥当するのではないかと思った。また、今日まで続く中華人民共和国によるチベットの侵略は、本当に酷いものだと感じた。
    本筋からはそれるが、19世紀後半の西欧でキリスト教にかわる普遍宗教として仏教に着目する動きがあり、神智学協会が設立され、ガンディーをはじめ多方面に影響を与えたというのは本書で初めて知り、興味深かった。

  • 【請求記号:222 イ】

  •  教義や大半の人名には馴染みがなく、政治面を中心に読む。ただそれでも、不思議に思っていた転生相続制も、継承の安定化、幼い頃からの教育、先代と同一人物であるため異論が出にくい、一般人を巻き込む布教、といったメリットがあることを知った。
     チベット自体では17世紀ダライ・ラマ五世の時代に政教一致政権の樹立。19世紀後半にはオリエンタリズムが混じったような欧米の関心があり。また英露による情報収集・進出と20世紀初頭の英露協商による不可侵合意にチベットは振り回される。
     これに先立ちチベット仏教がモンゴル帝国を「虜にした」要因は本書からは今ひとつ分からない。ただその後、モンゴル人を通じて満洲人も受容。清朝のダライ・ラマ北京招請にみられるようにモンゴル懐柔、更には清朝がチベット仏教の政教一致体制を継承したとアピールする手段にもなったわけで、その後への影響は大きかった。
     よくある清朝の版図を見ると、チベットは1720年、清の進軍で領土に入ったとされる。しかし、20世紀初頭の英軍侵攻に際し駐藏大臣は役立たず、また同時期数年間の四川軍の侵攻とラサ占領を除けば、歴史的に中国の支配下に入った認識はチベット側にはなく、宗教者と施主との関係だとする。
     中国併合以降ではチベット・チベット人の置かれた状況が本書からよく分かり、また著者は中国政府に批判的。欧米の関心(これは19世紀から)と支援も。ただ、ダライ・ラマ十四世の存在感があまりに大きいため、その後はどうなるのだろうか。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/563942

  • 登録番号:142099、請求記号:222.9/I74

  • 仏教国チベットの知られざる歴史を概説。「物語」と冠しているのは、とくに古代は仏教思想のフィルターを通じて語られているからのようです。17世紀以降は転生僧の歴代ダライ・ラマが政教一致の統治をしてきました。歴史の山場はダライ・ラマ5世、13世、現14世の3つの時代。とくに70年前に人民解放軍による侵攻を受けて中国に併合され、14世がインドに亡命し現在に至るくだりは、なんとも生臭い展開。
    チベットという国家は今や存在しません。しかし著者は、この転生僧のシステムが次の15世へとバトンタッチできれば、〈おそらく「チベット」は国として存在するしないにかかわらず、消えることはない〉といいます。14世の言葉とされる「仏教の歴史は二五〇〇年であり、中国共産党の歴史よりはるかに長い」この歳月がそれを実証しています。

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著者プロフィール

 早稲田大学文学部文学研究科後期課程中退。1997年、早稲田大学より博士(文学)取得。現職は早稲田大学教育・総合科学学術院教授。
専門はチベット仏教世界(チベット・モンゴル・満洲)の歴史と文化。
著書に『図説チベット歴史紀行』(河出書房新社)、『チベット仏教世界の歴史的研究』(東方書店)、『チベットを知るための50章』(明石書店)、『世界を魅了するチベット』(三和書籍)。『清朝とチベット仏教』(早稲田大学出版部)。訳書に『ダライラマの仏教入門』(光文社)、『ダライラマの密教入門』(光文社)、『聖ツォンカパ伝』(大東出版社 共訳)。

「2012年 『チベットの歴史と宗教』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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