ケータイ小説のリアル (中公新書ラクレ 279)

著者 :
  • 中央公論新社
3.20
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本棚登録 : 101
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121502797

作品紹介・あらすじ

ベストセラー上位を占めたケータイ小説。既成の文壇からヒステリックに否定されるこの新文芸は、いかなる構造をもつのか。80年代の文化にまで遡り、その内実を歴史的に描きだす。

感想・レビュー・書評

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  • 私は常に「読む消費」側の人間なので、まずその視点からの感想を。
    『恋空』映画化で話題になっていた頃、当時読書とは縁遠かった私もさすがに読んどかないとヤバイかな?と思って、放課後一気に読みました。←ミーハーな奴w
    そして不覚にも物語終盤でボロ泣きした思い出があります…。+(≧ヘ≦。)
    でも今読み返そうと思ったら、結末わかってるし純真無垢な心も消えちゃった(?!)んで、たぶん泣けないだろうなあ。笑
    あれは青春の思い出だから“良いもの”だったんだと思います。
    あと、読書が趣味と化した今となっては、たぶん横書きの小説は読みづらいだろうなと。(現にケータイ小説は『恋空』以外読んだことないかも。)
    たしかに本読むの苦手な子にとっては、とっかかりやすいジャンルかもしれませんね♪

    一方、「書く消費」側のことについて考えてみますと…、
    素人が躊躇なく不特定多数の人に、ぜひ私の書いた文章を読んで~って公開できちゃうのは、やっぱり匿名性のなせる技じゃないかなと思います。
    でもそれはあくまで創作物(小説など)に限ったことで、Twitterやfacebookなんかは個人を特定できるし…となると、やっぱり人は純粋に「書くこと」「伝えること」が好きなんじゃないかな?と思います。
    ただし、この「書く消費」は単に書いてスッキリ!!っていうんじゃなくて、それに対する読者の反応もセットで一つの消費行動なんじゃないかなと。
    それもできれば反論じゃなくて、共感とか肯定とか…自分自身や自分の考えを理解して支持してくれる意見が欲しいと思うところじゃないでしょうかね。(´∀`〃)”
    本文中に、ケータイ小説は作者と読者が一緒に作っていく感覚がある~というような記述がありましたし、作者としてもそこは気になるところなんじゃないかなと思いました。
    とはいえ個人的には、たとえ素人といえどプライド持って書いてると思うので、それはもう妄想なんかじゃなく立派な作品だし、読者の顔色窺ってコロコロ設定や結末を変えるようなことはしてないと思うのですが…どうなんでしょ?笑

    機会があったら、またケータイ小説を読んでみようかなと思いました☆

  • 本書の最初に著者が示している、ケータイ小説を書籍化した本は都市部よりも地方で売れているという事実は、まったく予想していなかったので興味深く読みました。日本中どこにいても同じ情報を手にすることのできる携帯電話という媒体を通じて広まった「ケータイ小説」に、都市と地方の格差がはっきりと示されているというのは意外です。

    これまでの文芸書が「読む消費」を想定してつくられてきたコンテンツだとすれば、ケータイ小説は「書く消費」を求める人びとが作り出したコンテンツだというのも、納得のできる見方でした。ブログを書く延長にケータイ小説を書くことがあるという著者の理解に沿って考えれば、ケータイ小説を従来の文芸書のように「作品」として理解するのは間違いであり、むしろわれわれが気に入ったブログを読むように、おなじような感性をもつ著者と読者が作り出しているコミュニティの空間として、ケータイ小説という文化装置をとらえるほうが正しいのかもしれません。

    読者投稿との連続性の指摘や、恋愛をテーマにした女性向け自己啓発書との類似点についての指摘は、それなりに納得はできるものの、ケータイ小説にとってそうした観点がどれほど本質的なものなのかということが論じられていないところに不満がのこります。

  • なんとなく書棚で見つけて読んでみたもの。
    電話連絡用でしか使用しないので、携帯でケータイ小説を読んだことはありませんが、本としてはケータイ小説とは知らず読んだことがあります。
    確かに本屋に行くと「ケータイ小説」というコーナーが、バーンと目立っていた時期はありました。この本は2008年発行なので、そんなに昔のブームなのかとびっくりしました。
    第4章「妄想が走り出す」のところが、面白かったです。
    10代の頃から2次創作を読み続けてきたので、活字を読む量はプロ作品よりも同人誌やpixivのほうが多いです。
    女性がなぜ2次創作をするのか、腐女子論の本は他にもありますが、この本は読みやすかったと思います。
    2次創作は男性も活動しているので、女性と男性の妄想の比較を論じた本が読みたい。
    こういう妄想論、私は好きなんですよね。

  • ケータイ小説は学生時代とっても夢中になった過去がある。
    どうやってケータイ小説が人気になってきたのか。

  • ケータイ小説に関して、外部からその動向を語った一冊。

    実際に書籍化して売れた本の内容の分析や、都会よりも地方で売れてるといった情報は、既に語られててるので特に真新しさはなかった。

    けど、ケータイ小説という新しいジャンルについて深く言及してるので、その点で非常に参考になった。

  • 卒業研究用の資料文献として。

    ケータイ小説が全盛期に比べほぼ騒がれなくなった今、改めて読んでみると、地方の方が売れていたことなど、知らなかったことが意外とあったのだなあと感じられた。
    着眼点がやや多く、あっちこっち、というかんじはあったが、優性思想など、参考になる点はあった。あとがきがいちばん参考になった。

    2013.06.17

  • 2008年当時における、人気上昇傾向にあったケータイ小説について、読者層、書かれている内容を、これまでの紙媒体発行の文学作品比較分析した秀作。書かれていることの多くは、業界にいると薄々感じ取っていることなのではあるが、それをズバリ活字にして世に問うたところに好感が持てる。ケーター小説に書かれた「妄想のリアル」に共感する読者たち、都市と地方でのケータイ小説の受け止められ方の違い、プロと素人の書き手側意識による作品に注ぎ込められた勢いの差(内容的の優劣とは違った意味で)。書かれてからすでに5年以上経っている現在の状況を、スマホ小説あるいは電子書籍リーダー小説といった続編として読んでみたい気持ちもあるが、実は2008年と今とでも大きな差はないのではないかと思ったりして・・・。現実主義的ロマンチストの女性達に受ける作品ならば、人気のある(売れる)ケータイ小説は今後の続々生まれ出てくるのだろうなぁ。

  • おいっ――どうなってんじゃ!
    1割位は面白く、2割位は勉強になり、後は……

  • [ 内容 ]
    ベストセラー上位を占めたケータイ小説。
    既成の文壇からヒステリックに否定されるこの新文芸は、いかなる構造をもつのか。
    80年代の文化にまで遡り、その内実を歴史的に描きだす。

    [ 目次 ]
    第1章 「ブーム」の現在(ケータイ小説「ブーム」の異質さ;ケータイ小説はどのように売れていくのか)
    第2章 恋愛、セックス、売春(王道少女漫画の世界;素人のリアル;少女小説からケータイ小説へ;なぜ、援助交際小説は減っていったのか)
    第3章 『恋空』はなぜ特別なのか(妄想の中のリアル;疲弊の風景;自己啓発本としての『恋空』)
    第4章 妄想が走り出す(日本人は世界で最も「書くこと」が好きな国民だ;妄想語りが商品になる;ケータイ小説作家には美人が多い?;匿名性作家の時代)
    第5章 「ケータイ小説」のゆくえ(「ケータイ小説」書籍は売れ続けるのか;大人も楽しめるものをめざして;「ケータイ」は作家を育てるのか;美しい時代へ)

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • >どんなに上から優生思想をおしつけようと、若者たちはそれをするりと通り抜けて、新しい価値観で新しい文化を作っていくのだろう。

    この最後の一文が好き。

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著者プロフィール

ノンフィクションライター。会社員や専門学校講師などを経て、2005年からライターとして活動を開始。『AERA』『婦人公論』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、現在は『文春オンライン』などで教育やジェンダーなどの記事を執筆している。『女子校力』(PHP新書)、『ママの世界はいつも戦争』(ベスト新書)など著書多数。

「2022年 『中学受験 やってはいけない塾選び』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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