人間はウソをつく動物である: 保険調査員の事件簿 (中公新書ラクレ 313)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121503138

作品紹介・あらすじ

興信所、バッタ屋、そして損害保険調査員。"日常生活では隠す傾向がある"これらの仕事を著者は約30年続けた。彼だけが体得できた「他人を疑い、自分が疑われない術」を、本邦初公開。

感想・レビュー・書評

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  • 高校教師や興信所の調査員・さらにはバッタ屋などの職を経て損害保険会社の調査員として20年もの経験を積んだ著者がまとめた「他人の疑い方」の集大成。盗難・交通事故・自殺・火事など、保険が絡む事件においてその受益者となる受取人がうっかり見せる「スキ」を見逃さず、相手を追い詰める手法を紹介し、善良な市民である読者が騙されたりしないために「疑い上手」になるためのノウハウを提供する。 最も大事なのは真相を100% 解明して真犯人を突き止める事ではなくて「8割を解明した時点で両者の妥協点を見つける」のが最善としているのが面白い。趣味と実益を両立させた著者は今では推理作家となって数多くの作品を出している。

  •  著者は社会派ミステリを中心に作品を発表している小説家(らしい。正直言うと私は知らなかった)で、デビュー前には30年にわたって保険調査員として働いていた経歴の持ち主。
     本書は、保険調査員時代に経験した印象的なエピソードを綴ったノンフィクションである。

     新書という形式上、ハウツー書的な側面ももたせたいという意向(おそらくは編集者側の)があるようで、「はじめに」では、本書を通じて「“他人の疑い方”のノウハウ」を身につけ、「トラブルの発生を予防」して身を守ってほしい、なんてことを書いている。

     しかし、本書で開陳された著者の調査技術はシロウトがおいそれと真似できるようなものではなく、ハウツー書的な意義はごく薄い。
     もっとも、そのことは本書の価値を少しも減じてはいない。単純に読み物としてバツグンに面白いからである。

     事故や盗難を偽装したり、「アフロス」(アフターロス=事故後に保険契約を結びながら、契約後に事故が起きたかのように偽ること)で保険金をだまし取ろうとしたり……さまざまなウソをつく顧客を相手に、著者が真相に迫っていくプロセスがスリリングだ。
     刑事とはちがって捜査権がないから、保険調査員は人情の機微をつく形でソフトにウソを暴いていかなければならない。だからこそ、その調査は駆け引きの勝負、息づまる心理戦となるのだ。

     全編面白いが、圧巻は4章「疑惑の女はときに般若となる」と、5章「火はすべての疑いをご破算にするか?」。
     前者は、夫を自殺で亡くした妻が、保険金を得るためにどうしても自殺を認めまいとする(自殺では保険金がおりないケース)姿を、3つの事件から描いたもの。後者は、保険金目当ての放火事件(当然、相手は放火を認めようとしない)を扱ったもの。いずれも、ノンフィクションでありながらミステリのような面白さがある。

    「このような豊富な体験が、著者の作家としての引き出しになっているんだなあ」と納得。

  • 社会
    思索

  • この世の沙汰は金と交渉。保険金のためなら、女は愛した自殺夫を覗き屋に仕立て上げる。性善説っていったい。。。

  • 科学的な観点による分析ではなく,著者の体験の報告である。保険調査員としてウソをつく相手とどう対峙したのかを読みやすい文章で綴る。テレビや新聞で特集されるような内容。

  • 人を疑い調べることに白い目を向ける日本の中で、色々誤魔化しにかかる人々を調べる保険調査員の事件簿的な話。
    金にからんだ人の本性が出るリアル話の満干全席なので普通にシリーズ小説やドラマにしても受け入れられそう。
    薄っぺらい正義よりも、こうした本音の考え方の方が妙に現実味があり面白かったです。

  • [ 内容 ]
    興信所、バッタ屋、そして損害保険調査員。
    “日常生活では隠す傾向がある”これらの仕事を著者は約30年続けた。
    彼だけが体得できた「他人を疑い、自分が疑われない術」を、本邦初公開。

    [ 目次 ]
    序章 人を疑うのは実に難しい
    第1章 疑う前に損得を考えよう
    第2章 真相究明は八割方にしておこう
    第3章 医者や弁護士とはなるべくうまくつきあおう
    第4章 疑惑の女はときに般若となる
    第5章 火はすべての疑いをご破算にするか?
    終章 この世の沙汰は交渉次第で変わる

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