灘中 奇跡の国語教室 - 橋本武の超スロー・リーディング (中公新書ラクレ 394)
- 中央公論新社 (2011年8月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121503947
作品紹介・あらすじ
橋本武の伝説の授業は、中勘助『銀の匙』一冊を中学3年間かけて読み込む。遠藤周作、東大総長、多くの医師などを育て、灘校の「東大合格日本一」に貢献。教え子が教育の本質を問う。
感想・レビュー・書評
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「恩師の条件」の増訂復刊.「銀の匙」を中学3年間をかけて読む授業の紹介.伊藤氏貴「奇跡の教室」が授業自体の紹介に関して物足りないので,実際にその授業を受けた著者によるこの本は貴重.
授業の内容を知るには一章から三章までを読めば良い.簡単に言えば,銀の匙の基本的な読解をするとともに,文章に出てきたことからその背景にある日本の文化や歴史を掘り下げていく授業ということ.準備には膨大な時間がかかるし,調べた知識を自分のものにして,生徒に伝えるにもまた努力と時間がかかる.その上,生徒には本を読んで書く宿題を頻繁に出し,それにすべて目を通すというのだから,頭が下がる.
しかし,よく考えれば,ある一つのテキストから,派生した問題を掘り下げていくというのはまさに学問の王道なのである.王道を歩く,あるいはそれに導くには,とんでもない忍耐が必要なので,普通学校ではやれないし,やらないだけ.それが灘中のハイレベルな生徒たちを背景に実現しているということだろう.最近は,このように本を深く読み込むのは大学ですら難しくなっているように思われる.詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
内容は橋本武さんの人物紹介がメイン。予想と若干異なった。
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中勘助『銀の匙』を中学3年間かけて読み込むという国語授業。大学の授業(研究)に似ている気がした。このことが、東大進学率向上にどう結びついたのかは、よくわりませんが、楽しい授業を準備するのは大変なだと、感じました。
又、人生において恩師や師匠などと呼べる人をモテることは、この上なく幸せなことなんだと感じました。 -
次は、『銀の匙』
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こういう授業受けてみたかった。
銀の匙、気になったらとことん脱線する -
著者の黒岩祐治さんの緊急医療に対する仕事は、素晴らしいし、そのわずか2年で恩師の命を救うなどという運命的な巡り合わせも特筆に値する、が、本人が運命、また運命と騒ぎ立てるのは、いささか品がない。前書きを読んで、残念な気持ちになった。牽強付会である。彼の医療に対する貢献が素晴らしかったという事実を示すに過ぎない。落ち着きなさい、大人になりなさい、師匠を超えて行きなさい。
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兵庫県で生まれ育った自分にとって、灘中は雲の上の存在だった。目指すことすらはばかられて、そこに入った児とか出ようもんなら、物凄い騒ぎになっていた気がする。これ読んでて、名門たる理由の断片が垣間見えた気がした。国語って、特に才能に負う部分が大きくて、努力とか学習ではどうにもならん印象が強いけど、こういう授業を受けたら、本当の意味での地力みたいなのが養われるだろうと思う。でもおそらく、エリート集団だからこそ成り立っているのも確かで、ピンきり全員に対して教科書なし、ってのはあり得ん話だろうけど。国語の学び方として、これもひとつの選択肢だろうとは思いました。
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多少売れっ子らしい著者が自意識全開で、国語教育を受けた自分をアピールしているが、このような無様な取り上げ方をされる橋本氏に同情します
著者のジャーナリストや文筆家としての能力は疑い様もないほどの酷さであるが、プロフィールには地方自治体の首長をしているようなことが書いてある -
こういう先生が灘中高に居たんだなぁ…という印象を覚えただけでした。
逆に、最後に書かれていたゆとり教育に対する考え方の方が印象に残りました。 -
一冊の本を三年間かけて読み込む。
作中に出てきた単語や、表現、気になることがあれば徹底的に調べ、横道に大きくそれながら学んでいく。
まさに知るを楽しむといった授業。
とても面白そうな授業です。
私も学生の頃、こんな授業を受けたかった、と思います。
また、先生自身が学ぶことが好きで、凝り性で、そして子供が好きなのでしょうね。
全力でぶつかってきてくれる先生なら、生徒だって本気で向かい合うのではないでしょうか。
やる気なく教科書を読むだけの先生を尊敬することはできませんから。
橋本先生のような先生が各学校に一人でもいれば、そしてその先生のやり方をおおらかに見守れる環境があれば、生徒にとって学校は魅力的な場所になるのかもしれません。