駅名学入門 (中公新書ラクレ 682)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121506825

作品紹介・あらすじ

そもそも駅名とはどういうものか。その歴史的変遷から浮かび上がってくる、思想、そして社会的・経済的・文化的背景とは。さらに、「高輪ゲートウェイ」のようなキラキラ駅名はいかなる文脈から発想されるのか。駅名の命名メカニズムを通して、多くの発見が得られる、知的刺激に満ちた本。地図・地名・鉄道研究のエキスパートによる、初めての「駅名学」。

感想・レビュー・書評

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  • 日本全国、いや世界の駅名の名付け方、改称の傾向や歴史を丹念にまとめた、まさに「学」を極める1冊。著者の調査の徹底ぶりは、巻末の付表のボリュームを見ただけでも分かります。

    土地の名をイメージだけで変えてしまった「五月台」や、逆に地名が整理されても駅名として残ったゆえに世間に定着した「原宿」など、地名と駅名の着かず離れずな関係がうかがい知れるのも興味深い所。

    著者は高輪ゲートウェイのネーミングセンスに疑問を提示していますが、あれだけの騒ぎもあっという間に忘れ去られ(流行語大賞にノミネートすらされませんでしたね)、数年後には駅名としてもエリア名としても完全に定着してしまうのでしょうね。かくも駅名の影響力は偉大な訳です。

    京葉線の幕張新駅、高輪に懲りて公募はしないようですがどんな名前になるのでしょう。「イオンモール前」とか嫌だなあ。

  • 地図や地名に造詣の深い著者による一冊で、鉄道駅の命名を通じて、歴史ある地名の継承、また消失にまで論を展開しています。

    全国津々浦々の駅の命名に関する傾向を紐解きつつ、自治体名や町名としては消失してしまったが、駅名として残り、その結果、地域の名称として現代に継承されているケース、また逆のケースなど、駅名が地域の名称に与える影響の大きさについて考察された内容となっています。

    また、高輪ゲートウェイをはじめとするカタカナ交じりの駅名や○○台、○○が丘といった憧れの高級住宅街的名称が、古くからある歴史的地名に優先してしまう現状について警鐘を鳴らしています。

    このあたりの図式は地名においても駅名においても非常に類似したものがあると思います。それゆえ、著者の主張も地名に対するそれと同じ構図であり一貫したものとなっています。

    駅の命名は私企業によるものであり、商業的な戦略などさまざまな事情を踏まえた結果ですから、尊重すべきものではありますが、これが行き過ぎた結果となり、古くから言い伝えられてきた由緒ある名称がなくなり、駅名も町名も味気ないものばかりになってしまうとすれば、大変さみしいものといえるでしょう。

    事実、京都の街を旅する時に目にする、古風な町名やバス停名にあこがれてしまうこともあるわけでして…。

  • 地名が先か?駅名が先か?
    時代とともに変わる駅名のつけ方、変遷の動向を、地図の専門家が解き明かします。

  • ちょっと前に話題になった「高輪ゲート
    ウェイ」駅。この名前の公募順位は100位
    以下だったにもかかわらず、JRが命名しま
    した。

    その評判は周知の通り。しかもその後の
    コロナ禍で、ほとんど忘れ去られた存在に。

    そもそも駅名はJRという企業に命名権が
    あるのは分かりますが、一方で公共的な
    建物に対する名称なので、そんな勝手なこ
    とが許されるのかが疑問です。

    一時期、よく聞かれた市町村の合併により
    その新しい市町村の名称をどうするかで、
    結局地名や歴史とは全く関係ないひらが
    なや、幼稚園のクラスのような名称に行き
    着くという「キラキラネーム」地名もよく
    見られます。

    「高輪ゲートウェイ駅」がキラキラネーム
    に値するかは意見が分かれるところですが
    駅名に関して言えば、以前から「新」や
    東西南北を付けただけの安易な命名が散見
    された歴史があります。

    そんな駅名の全てがわかる一冊です。

  • 「駅名の歴史」、「駅名史」といった題名の方が内容に相応しい。

  • 駅名に地名が引っ張られることは分かるが、確かに「商業」駅名に地名があまりに引っ張られるのはどうなのかなとは思う。

  • キラキラ地名に警鐘を鳴らす。高輪ゲートウェイ駅の開業を機に駅名とその元となる地名について体系的にまとめた画期的な本。

    駅名をどうするか、鉄道開通からの問題、自治体名だったり広域地名、大字や名所旧跡など。全国、手荷物の誤配を防ぐためにあえて地名に方角をつけたり旧国名を冠したり。

    戦争の進展とともに軍施設を表す駅名や観光地の駅名は改称を余儀なくされ、戦後は住宅開発により○○ヶ丘(実は戦前からあるというが)や〇〇台の駅名、地名。

    キラキラネームと同様に駅名、地名もひらがな、カタカナが増えるのが最近の傾向のようである。

    戻元は高輪ゲートウェイ駅のネーミングに違和感を感じたことが本書執筆のきっかけとのこと。

    普段何気なく接する駅名の実はディープな世界を胆嚢できる作品。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5A/682/K

  • 駅名から、その場所の歴史や風土が伺い知れる。はずなのだが、「私企業」により運営されているがゆえ商業的思惑が介入する。かつては軍事的意向が反映されることもあった。
    単なるうんちく以上に考えさせられるものがある。

  • <目次>
    まえがき
    第1章   駅とは何か
    第2章   駅名に採用される地名とその階層
    第3章   在来線の駅名
    第4章   路面電車の停留場
    第5章   新幹線の駅名
    第6章   寺社仏閣の駅名
    第7章   数多い「前の駅」
    第8章   東西南北と中、そして新
    第9章   駅名が変わるとき
    第10章   観光のための改称
    第11章   防諜のための改称
    第12章   住宅地系の駅名はブランド化する
    第13章   これからの駅名はどうあるべきか

    <内容>
    山手線に50年ぶりに生まれた新駅「高輪ゲートウェイ」。能町みね子さんが駅名の反対署名をしていたが、著者もこの駅名に大反対。そのあたりにインスパイアされたか、かなり真面目に「駅名学」を論じている。私は基本的に著者の考え方に賛成。地名は歴史であり、文化財なのだから、ヘンな改変や新しい珍名を作るなら、その地の大字名や古くからの通称名を使えばいい。京急も今年6つの駅名を変えたが、いま一つの気がする。ぜひ、みんなに考えてほしい問題である。

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著者プロフィール

今尾 恵介(いまお・けいすけ):1959年横浜市生まれ。地図研究家、エッセイスト、フリーライター。中学生の頃から国土地理院の地形図に親しみ、時刻表を愛読する。音楽出版社勤務を経てフリーライターとして独立、イラストマップ作成や地図・鉄道関連の著作に携わってきた。著書に『日本の地名おもしろ探訪記』『日本地図のたのしみ』『ふしぎ地名巡り』(以上ちくま文庫)、『地名の楽しみ』(ちくまプリマー新書)ほか著書多数。

「2023年 『ふらり珍地名の旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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