吉村昭の人生作法-仕事の流儀から最期の選択まで (中公新書ラクレ 766)
- 中央公論新社 (2022年6月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121507662
作品紹介・あらすじ
『戦艦武蔵』『破獄』などの作品で知られる作家・吉村昭(一九二七―二〇〇六)は、公私ともに独自のスタイル貫いた。「一流料亭より縄のれんの小料理屋を好む」が、「取材のためのタクシー代には糸目をつけない」。「執筆以外の雑事は避けたい」一方、「世話になった遠方の床屋に半日かけて通う」。合理的だが義理人情に厚く、最期の時まで自らの決断にこだわった人生哲学を、吉村自身の言葉によって浮き彫りにする。
目次
第一章 日々の暮らしの中で――日常の作法
第二章 これは小説になる、を探して――仕事の作法
第三章 生活の中に文学を持ち込まない――家庭の作法
第四章 書斎と家庭を離れて――余暇の作法
第五章 幸せだなあ、と毎朝つぶやいて――人生の作法
感想・レビュー・書評
-
地方紙の書店員がオススメする本のコーナーで、紹介されていたので読んでみた。 「仕事の流儀から最期の選択まで」とのサブタイトルであるが、日常の作法、仕事の作法、家庭の作法、余暇の作法、人生の作法と五つの章からなっている。
第一章の「毎日の暮らしの中で‐―日常の作法」を読んだだけで、吉村氏の生真面目さ、律義さ、堅実さと合理性が伝わってくる。さらに読みすすめると、堅実さだけではなく、時には賭けに出ることもあったのがわかる。肺の難手術や定職もないのに結婚に踏み切ったことなどだ。
「おわりに」にもあるが、確かに堅実さだけではなく、順調とは言えない状況からの挑戦は、読んでいて勇気を与えてもらった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
気配りの達人、厄介なトラブルからは、うまく距離をおくという処世術、“世の中お互い様” “人間は神様ではない”という、相手を咎めない寛容の精神、“所詮は気持ちの持ちよう”という、ある種の諦観の持ち主・・・『戦艦武蔵』『関東大震災』など高名な作品を発表し続けた作家・吉村昭氏(1927-2006)の、合理的だが義理人情に厚く、最期の時まで自らの決断に拘った人間・吉村昭を浮き彫りにした、筆者<谷口桂子>さん渾身の人物像評伝。 〝私は、歴史上著名な人物を主人公にする小説を書くよりは、全く世に知られてはいないが、歴史に重要な係りをもつ人物を調べ上げて書くのを好む〟〝文学の仕事に自分の生活を賭けるようになった理由は、正直言って私にはわからない。ただ私にとって、創作という仕事は、私の生命感を十分満足させてくれる内容を持つし、しかもその作業の成果は、創作者の死後も生き続ける可能性も孕んでいる〟
-
池波正太郎の「男の作法」のような、小さなこだわりから、凛とした生き方を窺い知れる内容で非常に興味深かった。
この著者の、吉村昭に関する書籍はもう一冊、小学館文庫から出ているようなのでそちらも購入しようと思う。今から楽しみだ。 -
先日読んだ『吉村昭と津村節子――波瀾万丈おしどり夫婦』が面白かったので、同じ著者の“吉村昭本”の前作を読んでみた。
こちらは、吉村の著作などの文献を渉猟し、彼の仕事の作法・日常の作法などを抽出したものだ。
「仕事の作法」――つまり小説家としてのルールを浮き彫りにした章がいちばんよかった。
吉村昭は何と立派な作家だったことか。
受けた恩義は終生忘れず、読者を大切にし、〆切は必ず守る。生活のすべてを小説中心に設計し、雑事は極力排除し、己を厳しく律する。小説家の鑑だろう。 -
東2法経図・6F開架:B1/5A/766/K
-
吉村昭氏が私の読書との大きな出会いと言っても過言ではない。
祖父の家にあった「戦艦武蔵」を中学生の頃に読んで以来、私の蔵書記録の中では断トツの58冊(たぶんそれ以上)を読んでいる。
ちなみに2位は司馬遼太郎氏の27冊。3位は宮脇俊三氏の19冊。
今後の人生においても吉村氏を超える作家に出会うことはないのではないだろうかと思っている。
どの作品も私にとっては読みやすく、氏の書く世界にどっぷり入り込み、歴史の奥深さを知ることができた作品の数々であった。
また、氏のエッセイなどにも書かれていたが人生の流儀、仕事の作法などひと際こだわりの強い作家でもあった。
ファンとして読んでおかなければいけないだろう。
吉村昭を知るには笹澤信氏の「評伝 吉村昭」と共に手元に置きたい1冊である。 -
七九年の生涯で小説三七一作を残した作家の生き方の極意とは。仕事の流儀から最期の時の選択まで、吉村自身の言葉で浮き彫りにする