- Amazon.co.jp ・本 (504ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122001527
感想・レビュー・書評
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「レイテ戦記(下)」大岡昇平著、中公文庫、1974.11.10
476p ¥480 C1193 (2019.10.05読了)(2018.11.08購入)(1978.04.15/2刷)
(10月2日)
下巻を読み始めました。
転進、敗軍、を読み終わったところです。
撤退、退却を転進と言っていましたので、アメリカ軍をレイテ島から追い落とすことをあきらめて退却を始めました。日本本土も危なくなってきたので、援軍を送ることを取りやめ、永久抗戦をレイテ島で戦っている日本軍に本部から命じてきました。硫黄島と同じようなことに……。
(10月12日)
下巻を読み終わりました。470頁の内、本文は、320頁ほどで、残り150頁ほどは、索引、年表、書誌、解説、等です。
永久抗戦を命じられてレイテ島に残った人たち、セブ島へ転進する人たちの様子を記しています。転進するにももはや日本の船はないので、現地の5人乗りぐらいの小さな船や竹でいかだを組んでの脱出で大変な目に遭っているようです。
日本兵の中には、戦うのをやめて自活して暮らす遊兵も多数いたとか。
「終戦までの米軍損害、戦死370、負傷1025。8月15日山を降りた日本兵は6150であった。約7100の日本兵が山中の戦いと飢えのために命を落としたことになる。」(267頁)
「フィリピンは1895年から1945年までの50年の間に4度主人を変えたことになる。1898年までのスペイン、1941年までのアメリカ、45年までの日本、その後の再びアメリカである。」(301頁)
8月下旬から読み始めて、10月上旬にやっと全三巻を読み切りました。著者は、フィリピンで戦って、捕虜となって生き残りました。その様子は、『俘虜記』『野火』で書いています。
同じフィリピンで戦った人たちの戦いぶりを書き残して、鎮魂したかった、ということのようです。そのために、日本の記録、アメリカの記録をつきあわせて戦いの様子をできるだけ正確に再現しようとしたのです。
アメリカ軍の記録も日本軍の記録も戦果は過大に、都合の悪いことは口をつぐんで語らない、というところは、共通している、と著者は書いています。
アメリカ人も、日本人も人間心理は、似ているということでしょう。
【目次】
二十六 転進 昭和19年12月12日~21日
二十七 敗軍 12月22日~31日
二十八 地号作戦 昭和20年1月1日~20日
二十九 カンギポット 1月21日~4月19日
三十 エピローグ
付録
太平洋戦争年表
レイテ島作戦陸軍部隊編成表
書誌
あとがき 敗戦26年の夏
改訂版あとがき 1974年10月
解説 菅野昭正 1974年10月
地名索引
人名索引
部隊名索引
☆関連図書(既読)
「レイテ戦記(上)」大岡昇平著、中公文庫、1974.09.10
「レイテ戦記(中)」大岡昇平著、中公文庫、1974.10.10
「太平洋戦争 日本の敗因(5)レイテに沈んだ大東亜共栄圏」NHK取材班、角川文庫、1995.08.10
「レイテ沖海戦」半藤一利著、PHP文庫、2001.09.17
「野火」大岡昇平著、新潮文庫、1954.04.30
「俘虜記」大岡昇平著、講談社文庫、1971.07.01
「ながい旅」大岡昇平著、新潮文庫、1986.07.25
「大岡昇平『野火』」島田雅彦著、NHK出版、2017.08.01
(2019年10月15日・記)
(表紙カバーより)
太平洋戦争の〝天王山〟レイテ島に展開された日米両軍の死闘を、厖大な資料を駆使して精細かつ巨視的に活写し、戦争と人間、環境と個の問題を、鎮魂の祈りをこめて鋭く追及した戦記文学の金字塔。毎日芸術賞受賞作。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦記文学。
生還率3%とされるレイテ戦について、日米双方の記録や証言に基づいて構成されている。
周知の通り著者はミンドロ島の戦役に従軍している。巻末で死んだ戦友に触れている通り、悲惨な光景を知っている。しかし本作で描く「死」は、感情を一切排したものである。死者数を統計的に述べていくくだりは、漢数字の文字裏にひそむ著者の言い知れぬ悶え苦しみが透いて見えるよう。鬼気迫るとは、このことかと感じた。
その中で数百ページに1回の割合で挟み込まれる、特攻兵や斬り込み部隊に対する哀惜の一文が、ズシリと心に重く、読むペースを乱す。
本書が版を続けることに、希望を感じる。 -
4122001528 504p 1995・8・25 15版
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上巻に同じ
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「歴史とは過ぎ去った事件に対する愛情だ」
師である小林秀雄の言葉を忠実に実行したであろう著者大岡昇平の代表作だ。
第二次大戦に従軍した体現者でもあった大岡が、世界に散らばるレイテ戦に於ける膨大な資料をかき集め
それを基に
その事実だけを整然とぶれることなく語り続けるその姿勢は驚愕に値するといえるだろう。