徳川家康 (中公文庫 M 200)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122010048

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  • 領国統治の体験的反省と政権をめぐる苛烈な闘争をつみかさねながら、生死の関頭において全エネルギーを燃焼しつくした七十五年の生涯。
    近世史の泰斗が、組織者としての家康の人間像を浮き彫りにする。
    昭和58年発行。元本は昭和38年刊の中公新書。
    著者は、文学博士、日本近世史。

    今となっては、古典的な見方であるが、徳川家康の生涯を俯瞰することが出来る著書である。
     松平家の起こり、清康横死以降の松平武士団の苦闘、今川義元敗死に伴う家康の自立、本能寺の変、5カ国時代、小牧長久手の戦い。小田原攻めなど60ページほどの駆け足で解説している。そのため、桶狭間の合戦はわずか4行であり、合戦での家康の動きには触れられていない。逆に三河一向一揆との戦いにページを割いており、記事が偏っているが、メリハリのある書き方をしている。長篠の合戦は当然3千挺の鉄砲説。ただし、3段撃ちとは言っておらず、勝頼も鉄砲の重要性は知っていたとしている。(一昔前には勝頼が無能だったという見方が当然のようにされていた事を思うと、著者の見方には、おやっとさせられる。)
    本能寺の変後の甲信平定について、信濃平定は、なかなかうまくいかなかった事が良く分かる。河尻秀隆を近畿の出身としていたりいくつかの誤りがあるのは残念なところ。
    良く言われるエピソードに、秀吉に対し「長久手の敗北を忘れたもうたか」
    と言ったというものがある。本書でも、家康がことあるごとに皮肉ったとしているが、このエピソードを聞くたびに、いくらなんでもありえないと思う。
    朝鮮出兵に家康は反対したという話を聞くが、著者は「家康とて表面切って反対できる立場にはない」としている。妥当な見方であろう。本心を窺わす最上義光の書状は面白い(p119)
    それにしても秀吉、利家死後の家康の動きはエグイ。家康贔屓の身であっても、弁解の余地の無いような動きをしている。
    それにしても、関ヶ原合戦から、江戸幕府を開くまでの間は、豊臣秀頼の代理人という立場にすぎないと思うが、何故ここまで親藩譜代大名の取り立てが出来たのだろうか。今更ながらその権力の源が気になるところである。関ヶ原で功があったもの(結城秀康や松平忠吉)なら論功することはできようが、武田信吉はどうなのか。

    元本の刊行年を考えると、古びているが、それを踏まえて読むと再発見することがあり面白い。

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