ルネサンスの歴史 (下) 反宗教改革のイタリア (中公文庫)

  • 中央公論新社
3.88
  • (9)
  • (13)
  • (8)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 101
感想 : 12
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122011939

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 28 イル・モーロとシャルル八世
    29 サヴォナローラ
    30 ボルジア家の人びと
    31 ユリウス二世
    32 レオ十世
    33 統一世界の終焉
    34 ウィクリフ
    35 フス
    36 エラスムス
    37 ウィッテンベルグ 一五一七年
    38 反逆者
    39 二つのドイツ
    40 破門
    41 ウォルムス
    42 大暴動
    43 カール帝とフランソア王
    44 ローマ劫掠
    45 英国教会の分離
    46 ルターの勝利
    47 ツヴィングリ
    48 カルヴァン
    49 苦悩する知識人
    50 イタリアの展望
    51 マントヴァ―イザベラとマンテーニャ
    52 宮廷人―カスティリオーネとアレティーノ
    53 アリオスト
    54 チェリーニ
    55 マキアヴェリ
    56 グイッチアルディーニ
    57 レオナルド
    58 ヴェネツィアの画家たち
    59 ラファエッロ
    60 イタリアの異端者たち
    61 レーゲンスブルグ
    62 ロヨラ
    63 トレントの序章
    64 パウルス四世
    65 公会議
    66 反宗教改革の戦争
    67 破り得ぬ敵
    68 斜陽のイタリア
    69 ミケランジェロ
    70 タッソ
    71 ブルーノ

  • この下巻は元々、『反宗教改革のイタリア』という本。宗教改革とそれへの反動として15世紀、16世紀のイタリアを描いている。人物としてはミラノ公のルドヴィーコ・スフォルツァ(1452-1508)とフランス王シャルル8世(1470-1498)から始まり、ジョルダーノ・ブルーノ(1548-1600)の火刑まで。イタリア史の本ではあるが、この本の中心となるのはドイツの宗教改革、そしてプロテスタントの広がりを巡る神聖ローマ皇帝、フランス王、スペイン王(ハプスブルク王朝)である。ローマ教皇庁はその関わりで出てくる。というのも著者の見立てでは宗教改革を機に、ヨーロッパ史はイタリアから(むしろ地中海から)離れる。イタリアは自律性を失い、他国の大きな影響下にある舞台装置になっていく。

    宗教改革はあまりイタリアでは主流にならず、むしろ反動が多く見られた。イタリアにも宗教改革の機運が無かったわけではない。例えばフィレンツェを一時期メディチ家の支配から抜け出させたサヴォナローラ。この人物の活躍は中世の終りを示すと見られるようだが、教皇に真っ向から反対し、聖者のように生き、自らの信念と信仰に死するこの人物を、著者は20年後の宗教改革の先取りと見ている(p.21f)。ちなみにかのチェーザレ・ボルジアはこのサヴォナローラに次いで扱われるが、評価が高い割に教皇軍総司令官としての活躍しか描かれていない(p.36)。

    ヨーロッパを宗教改革に巻き込んでいく背景について、著者はいくつものことを書いている。例えば、次の三つ(p.53-58)。(1)都市化。都市の住民、とりわけ商人と職人はそれまでの農民たちの素朴な信仰ではなく、科学的な目、因果律で考えだしたこと。(2)文化の自律。とりわけルネサンスの成果により知識が世俗化したこと。(3)教皇庁に対抗しうる、都市国家中央権力の確立。国家共同体が宗教共同体を浸食する。あるいは、ドイツ農民の反乱と、鉱業の発展によってフッガー家など富裕層が誕生し不平等の拡大への不満が募っていったこと、ドイツの中心がミュンヘンやアウグスブルクなどの南部から、ブレーメンやハンブルクなどイタリアの影響を受けない北部へ移動したこと(p.100-105)。また、メディチ家出身の教皇レオ10世は世界の首都としてのローマを蘇らせるべく、文化事業に多くの資金を投じた。前教皇のユリウス2世から引き継いだ資金もやがて空になり、免罪符を多発する。これがルターの批判の的となる(p.86)。

    宗教改革に関してルター、ツヴィングリ、カルヴァンなどの記述が大きい。またカール5世とフランソワ1世の対立、それを利用する・利用される教皇庁とイタリア都市国家(ただしヴェネツィアを除く)、という構図がずっと続く。この合間にエラスムスを筆頭とする知識人たち、ダヴィンチやラファエロなど芸術家も登場する。カール5世とフランソワ1世の話に戻れば、ランツクネヒト軍団によるローマ掠奪(1527)の描写はかなり印象的で面白い(p.149-152)。芸術家の中では、悪徳の限りを尽くしつつも権力者に保護された芸術家チェリーニが光る。ルネサンス期のイタリア冒険児の典型とされている(p.239-244)。

    イタリアで宗教改革が広まらなかったことについては、次の三つが書かれている(p.286-288)。これらは北ヨーロッパで宗教改革が拡がった理由の裏返しだ。(1)経済の利害対立の不在。イタリアは全欧のカトリック教会から十分の一税などを徴収して金が集まっていた。困窮して教皇庁に反感を抱く動きはない。(2)宗教問題を真剣に考える契機がない。イタリアの寛大な精神風土や、多神教的な聖人崇拝。イタリア知識人は確かにカトリック教会の支配に反抗したが、その先はヒューマニズム、ギリシャ古典研究であって、聖書研究ではなかった。(3)最大の理由として、教会に対抗できるだけの世俗権力がなかったことである。

    宗教改革に対するカトリック教会の立場を定めたトレント公会議(1543-1563)への評価は低い。そもそもこの公会議自体、開催しては中断しを続けて結論までに20年を要した。その結論にあったのは、ハプスブルク王朝の世俗権力と、ローマ教皇庁の精神権力の結託だ。個人の宗教的良心はまったく考慮されず、精神世界の思想犯を世俗の権力を借りて取り締まる体制。ローマ教皇は世俗権力の力を得て、自由の圧殺が可能になったのだ。

    外国の力を大幅に借りることになったイタリアはついに、スペインの支配に屈すことになる。しかしその支配によってイタリアは数百年の争乱から脱した。これにより、イタリアは外国の歴史の単なる反映となったのだ(p.356-358)。

  • 今日佳代ではあっさりと終わるルネサンスについて、人物と当時の社会情勢との関わりから解説。日本ではなじみのない人物が多く出てくるが、それもまた新鮮。
    (執筆当時の)イタリアの現況についての皮肉も有り、あっという間に読み終わる

  • 後半は宗教改革中心ですが、ミケランジェロのような有名な人も取り上げられていて、読みごたえがありました。上巻に比べると、ちょっと難しく感じる所もありましたが、とても面白かったです。この時代に興味ある方は是非とも呼読んでほしいです。

  • 著者がイタリア人だけに、上巻と打って変わって、この巻は悲劇的です。サヴォナローラ、カルヴァン、マキアヴェリ、グイッチアルディーニ、塩野七生作品でも取り上げられた人々が出てきますが、自国の歴史だからこその視点情感があるのだな、と感じさせます。特にサヴォナローラ、グイッチアルディーニの項目は宗教的偏見に毒されない素晴らしい文章です。悲劇の時代を「絶望した時には笑う」というイタリア人らしいのか、軽やかなな文章で読ませます。

  • サブタイトルに宗教改革とあるように、この下巻は宗教と教会がメイン。
    フス、ツヴィングリ、ルターやカルヴァン、イグナティウス・ロヨラなど聞いたことのある人物が活き活きと描かれていた。そこに潜んだ関係性や事情を知ると、単なる出来事に過ぎなかった事件がより意味が持ってくるように感じた。

    ただ、細かい国際関係や教会の思惑の記述が多く、世界史をある程度学んでいない人には難しいと思う。

  • 同じ作者の「ローマの歴史」が面白かったので読んだが、これはちょっと厳しかった。知らない人ばっかりの上に、似たような名前の別人が何度も出てくるのでこんがらがる。俯瞰図を得たくて読んだが歯が立たず。人物にフォーカスした点描を読んでからもう一度?

  • 副題は「反宗教改革のイタリア」。
    上巻に引き続き、イタリアを主軸としたルネサンス期のヨーロッパ世界を、人物に焦点を当てながら描く。上巻がイル・モーロ(ロレンツォ・ディ・メディチ)とサヴォナローラの対決で幕を閉じたが、下巻は上巻末尾で権力を握ったサヴォナローラの失墜と火刑に幕を開ける。また、上巻は地理的な舞台はイタリアが主体だったのに対して、下巻ではルネサンスの潮流がイタリア外へ移行するのと軌を一にし、イタリア以外のヨーロッパ各国を舞台とする。それは宗教改革と反宗教改革の舞台と重なる。
    宗教改革のうねりに揺さぶられながらもルネサンス期をもがいていたイタリアは、最後にミケランジェロ・タッソ・ブルーノの3巨人を輩出して終焉を迎える。
    各章が比較的短く、その中で各人物にスポットを当てながら小気味よく文章が流れるので、ルネサンスを網羅的に概括するのにお勧めできる好著である。

  • やっと読み終わった。訳者が言っているようにルネサンスが芸術に留まらず、イタリアの歴史、そして宗教改革までも詳しく網羅的に述べている。
    その分範囲が広すぎて、初心者には厳しかった。ある程度の知識を持ってから帰ってくるといいのかな

  • 下巻の主題は宗教改革(総ページの半分ぐらい)
    「宗教改革=近代の始まり」的説で解説してある。
    高校時代、クリスチャンでもなく、普通に宗教どうでもいい日本人であった私は、宗教改革なんてルターとカルヴァンの名前だけ暗記して終わりだったが、極東の異教徒の国の世界史の教科書にも宗教改革が載っている理由が、この本を読んで初めて理解出来たような気がする。
    古い本なのでその後別の説も沢山出ているのだろうが、専門家で無い自分にはこれで充分である。
    例によって語り口がちと皮肉も効いていて読み易く、気に入っている。

全12件中 1 - 10件を表示

I.モンタネッリの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×