第十四世マタギ: 松橋時幸一代記 (中公文庫 か 50-1)

著者 : 甲斐崎圭

• 中央公論新社 (1996年8月1日発売)

感想・レビュー・書評

[hy343さんの感想 · 2019年6月12日]

これまで「マタギ本」を何冊か読んで来たが、主人公の娘さんがオレとほぼ同年代、という時代まで下って来た。

主人公の松橋時幸氏は昭和9年生まれの実在の人物で、この本はかれの幼少から壮年期までを小説仕立てで描いた、正調マタギ伝である。

おそらくは本人や周辺への綿密な取材に基づいて組み上げられたものであろう。掘り下げたのか膨らましたのか執筆の詳細は不明ながら、その生い立ち、先輩からの学び、クマとの渡り合い、時代との向き合い方など、その時々の心の動きまでを含めてたんねんに、迫真の筆致で描かれる。

時代の流れとともに失われるマタギの厳しいしきたりや矜持…といった構図は当然あるが、流れの中で諦めるばかりでなく、農業大学で学んだり、猟友会を組織したり、その中でハンターの啓蒙や技術向上に取り組んだりと、現在ある環境の中でよりよいあり方を求める前向きなものを見る気がした。

[sachiさんの感想 · 2012年8月6日]

淡々と、マタギの暮らしぶりを描写。趣味のハンターとマタギは全然違うんだな、と素朴な感想。