化城の昭和史 上: 二・二六事件への道と日蓮主義者 (中公文庫 て 6-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122027176

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  • 青空文庫で、石原莞爾の『最終戦争論』を読み、北一輝の『日本改造法案大網』を読み、満州事変、2・26事件について考えていたところで、井上日召の血盟団が引き起こした「一人一殺主義」のテロリズムによる犬養毅内閣総理大臣の暗殺、井上準之助大蔵大臣の暗殺、三井財閥の総帥だった團琢磨の暗殺、などの暗殺事件、日蓮会の「死のう団」の事件などのカルトの引き起こした事件について調べていたら

    これって、よーするに、戦前のファシズムに向かう日本において、「日蓮主義」という、とってもカルトな思想が、政治に大影響を及ぼしていた、という話じゃない?

    つまり、今現在と同じ。

    カルトな、アブラぎったタヌキが、政権与党にもぐり込んで、うごめている、という。
    現在と同じ状況が、既にここで現実に行われていた、ということだ。

    それって、オウム事件より、すごい。
    チャールズ・マンソン事件よりも。

    だって、殺した相手が、総理大臣だったり、大蔵大臣だったり、三井財閥の総帥だったり、するんだから。

    明らかに、赤軍事件よりもすごいし、オウム事件よりも、スゴイ!ということだ。

    こういう過激な思想を生んだ法華経、日蓮主義とはなんであるのか?

    それが、この小説の中では探求されている。

    水俣病問題で、患者の足下で土下座させられた石原慎太郎とかいう桁外れのアホも、法華経を崇拝するサルだしね。

  • この本を知ったのは『二十世紀を読む』(丸谷才一、山崎正和、中央公論新社)のなかの「近代日本と日蓮主義」である。丸谷才一氏の批評を読むと、批評で取り上げられた本を読みたくなる。この本を読むと、昭和史の前半は熱烈な日蓮宗徒たちによって動かされた、ということがわかる。まったく知らなかった事実で、これには唖然とした。

    北一輝、西田税、井上日召、石原莞爾、5・15事件、2・26事件の将校達、いずれも熱烈な日蓮宗徒である。軍国主義という言葉で括られていた昭和前半史の背後を知ることが歴史を反省するうえで欠かせない。日蓮主義者は一人一人の折伏ではなく、国家を丸ごと日蓮宗に改造してしまうという教義から、国家と結びついて「八紘一宇」(アジア侵略)の夢を果たそうとした。国民的人気作家の宮沢賢治も熱烈な日蓮宗徒であったことは昭和史を考えるうえで感慨深い。日本の精神史(政治と宗教)を考察する上でまたとない好著である。

  • 378夜

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