大連ダンスホールの夜 (中公文庫 ま 28-1)

著者 : 松原一枝

• 中央公論新社 (1998年5月1日発売)

感想・レビュー・書評

[yumecoさんの感想 · 2017年6月5日]

　先日読んだ「幻の大連」と内容的に重複するところがあるが、こちらは膨大な資料を基に書かれている。「幻の大連」が主として思い出話であるのに対し、こちらは歴史観を表に出した内容。大連在住の時に何も知らないままだったことに対し、戦後詳細な調査を経て解明しようとしている。真摯な姿勢に胸を打たれた。
　調査を重ねても不明なままの事柄について、著者独特の解釈を交えているのも特徴的。若い頃に様々な要人と顔を合わせていた著者ならではの渾身の作と言えようか。
　日本が歩んだ誤った道すじについて、原敬暗殺事件にさかのぼって解釈しており、たいへんわかりやすかった。さらに深く知りたい気持ちにさせられた。