小説陸軍 下巻 (中公文庫 ひ 22-2)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122036963

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  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(佐藤優選)83
    文学についての知識で、想像力、構想力を豊かにする
    戦前、戦中の普通の日本人の戦争観を知るためにも最適の書。

  • 高木家三代を軸にして日本陸軍の70年を描こうとした超力作。戦中に新聞連載され、1945年8月15日印刷の奥付で発行された(されようとしていた)数奇な運命の作品。<br>
    <br>
    「麦と兵隊」と同様に当時の国民がどう兵隊として生きたかを、力強く、迷い無く伝えてくる。その底には兵隊へのとても優しい視点が常にあるのも見逃しちゃいけない。<br>
    <br>21世紀の今になって読んでみると、なんつーの、「当時はこんな感じで狂信的に国民一丸とされて戦争に向かわせられたんだ」なんて思いがち。ついそう考えてしまいそうになる。けど、「異人にお国をけがされてたまるか」という幕末の気風が脈々と継がれていった、その連続性や情勢を考えてみると、少しもおかしいなどとは思えなくなる。よほど今の戦争=軍国主義=悪といった風潮の方がどうかしてると思える。なにしろ皮肉なのは、この戦争、陸軍、軍人精神賛歌とも言える小説を連載していたのが朝日新聞だって事。この事実だけで、全ての価値観の180度転換が良〜く見て取れる。山田風太郎の日記を読んでも思ったけど、日本人ってのはあらゆる意味で、この柔軟性も含めてやっぱり凄い。だから、今の日本人もウソだとは言わないし、戦中のこの感覚もウソだとは絶対に言えない。<br>
    <br>
    そして、やはりこの兵隊達の姿勢には崇高な物を感じずにはいられないし、この人達の子孫であること、その魂が俺に少しでも繋がっていること(そうであると信じたい)を思うと、体の奥からの震えを感じずにいられないのである。右だと言われようが何だろうが、熱いものがこみ上げてくる。これを失ったらもう日本人じゃないとまで思えてくるのだ。

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著者プロフィール

1907年1月、福岡県若松市生まれ。本名、玉井勝則。
早稲田大学文学部英文科中退。
1937年9月、陸軍伍長として召集される。
1938年『糞尿譚』で第6回芥川賞受賞。このため中支派遣軍報道部に転属となり、以後、アジア・太平洋各地の戦線に従軍。
1960年1月23日、死去(自死)

「2016年 『青春の岐路 火野葦平戦争文学選 別巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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