- Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122045187
感想・レビュー・書評
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何冊読んでも、谷崎潤一郎はいい!
これは、戦国時代が舞台。最初は漢文の序章でスタート。戦死者の首の髪を、微笑みながら結う女。それを取り巻く静寂の空間、戦の興奮の残り香を伝える部屋に漂う匂い。そのすべてに飲み込まれた少年。それを再現するまでと、長い妄想を描く。
たまたま、今、谷崎さんの「文章読本」を並行して読んでおり、谷崎さんが源氏物語を好きである理由を悟ったとこ。それを踏まえて読むと、なお味わい深い。
源氏物語に因んだ、和歌などが出てくる。そして、文の長さが気にならない工夫をされて、長々と続く一文なども出てくる。
最後の終わり方も、安逸にメロドラマの様な展開でないところもいい。続きが気になって気になって、夜寝るのが嫌だった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
変態性癖の武将の秘話。女首、鼻もげなど、少年期に体験した、曲がった興奮を、密かに持ち続け、それが大人になっても。
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谷崎小説でいちばん好きな話。
よく「性癖を歪められる」という表現を目にするが、この小説によれば、性癖は歪められるものでなくて、自分の生まれ持った要素のひとつで、それを秘匿する井戸のようなものの蓋を開けるような刺激に出会うか出会わないか、ということで、たしかに自分の中にそれを快とする要素がなければ、普通であればヘンテコだったりグロテスクであったり、あるいは不快感すら覚えるわけであるから、それはそうだと思う。
そしてこの小説によってわたしも身を乗り出して井戸の奥底に眠るものを正視せざるを得なかった。これを初めて読んだ日から、わたしもめでたくマゾヒストの仲間入りを果たした。きっかけが『薄闇の中で生首を弄る美女』だったので、安吾の『桜の森~』や『生首を抱くサロメ』など、意外とありふれたモチーフかなとも思っていたのだが、生首(鼻欠け)が出てくるのは、知り得る中ではこれだけで、定期的に読み返さないと気が済まないときがある。
終盤、生死のかかった緊迫した場面なのに、唇が兎のようであるから間の抜けた声でしか話せない則重のセリフも面白ければ、それに対し「はっ、何? 何と仰います?」と思わず聞き返してしまう輝勝も面白い。この場面だけでもみんなに読んでほしい。そしてあわよくば全編を通読し、同じ趣向を持つ同志が目の前にいてほしい。 -
・顔面破壊
・人に迷惑をかけるSM
・はたから見るとS、だけど本人はドM
が好きな人に超オススメの小説。
挿絵もついててお得だよ!
わたしの中で「殺し屋1」と並ぶグッドSM作品です。