桃夭記 (中公文庫 い 92-25)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 56
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122050051

作品紹介・あらすじ

博陵郡王の屋敷で怪異が頻発する。桃の木のたたりと断じる道士の騙りを見破り、眠りから醒めなくなった娘を救うのは、式神を操る青年・陶周明。はたして彼の正体は?(表題作)他に、孤独な少年帝に忠誠をつくす虎、竜王の甕が見せる夢幻、墨に命を賭けた名匠を描いた、心ゆさぶる幻想的な珠玉の短篇を収録。中国傑作小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 2017/11/20 19:16:27

  • 同じ作者の「朱唇」を先に読んでいて、これで2冊目です。
    今回は短編集ということで、全て中国モノの幻想怪奇譚。

    たくさんレビューを書いてきたのに、
    こんなにレビューが難しいご本も珍しいです。

    面白い小説だったかと言われれば、文句なくどれも面白い。
    漢詩のお好きな方や中島敦など好まれる方にもお勧めです。

    多分、中国モノの良い読み手であるだけでなく、漢詩などにも
    お詳しいのだろうなと想像できる著者の筆致は冴えていて。

    品のよい、清雅な印象と、闊達・叙情が入り混じって
    本当に楽しい時間を過ごしました。

    でも、細かくあれこれ言おうと思うと、どれも饒舌な気がして。

    それだけ惑溺して読んでいたのでしょうか。
    邯鄲の夢のようでご本を閉じたらぼうっとしてしまって。

    それと、関係ないことですが。
    梅のお香でも焚いて読みたい、となぜか思いました。

  • 中国を舞台にした短篇集。四話のうち三話が幻想怪異譚で、最後が墨匠の話なのだが、術者のバトルアクションあり、人間の醜い欲が引き起こす悲憤と悲哀あり、どこまでも捕らわれて出口の見えないうすら寒さありと、魅力的なテイストに酔わせてもらった。

  • メモ
    「桃夭記」博陵郡王の屋敷で怪異に式神を操る青年が挑む話。
    「嘯風録」少年帝に忠誠を尽くす虎の話
    「迷宮譚」竜王の甕が見せる夢の話
    「墨匠伝」墨に命を賭けた名匠の話
    という4つの短編集

  • 4編の中華系短編収録。妖し物も切なかったり痛快だったりとよいですが、「墨匠伝」が絶妙でした。コミカルでシニカルで予想外のハッピーエンド。楽しく読み終えました。

  • 井上祐美子さんの中国モノは何冊か読んでますが、これはもともとは講談社文庫に入っていたもののようです。今回は中公文庫に移ったわけですが、そういう文庫の移動ってのもどのくらいの時間をおけばアリなのでしょうか? それはともかく、これは短篇集です。清末の杭州を舞台にした一編がやや異色ですが、あとはちょっとした伝奇小説、今風に言えばミステリー(?)、オカルト(?)とでも呼べばよいのでしょうか、そんな作品です。どの作品も有名な歴史上の有名人が主人公というわけではなく、ごくごくふつうの人ばかりです。中でも「墨匠伝」は古今東西変わらぬ人間の欲と見栄を描ききっていて秀逸です。決して褒められた主人公ではなく、むしろとても嫌な奴です。でも、実に人間楽し描かれているために、しまいには逆に共感してしまいます。

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著者プロフィール

井上祐美子
姫路市生まれ。神戸大卒。『長安異神伝』『桃花源奇譚』
などで人気を博した後、本格的な中国歴史小説に取り組み、『桃夭記』で吉川英治文学新人賞候補となる。『五王戦国志』『非花』『海東青 摂政王ドルゴン』『臨安水滸伝』『公主帰還』『紅顔』『朱唇』『青天 包判官事件簿』ほか著作多数。

「2022年 『新装版 桃花源奇譚4 東京残桃夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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