- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122050051
作品紹介・あらすじ
博陵郡王の屋敷で怪異が頻発する。桃の木のたたりと断じる道士の騙りを見破り、眠りから醒めなくなった娘を救うのは、式神を操る青年・陶周明。はたして彼の正体は?(表題作)他に、孤独な少年帝に忠誠をつくす虎、竜王の甕が見せる夢幻、墨に命を賭けた名匠を描いた、心ゆさぶる幻想的な珠玉の短篇を収録。中国傑作小説集。
感想・レビュー・書評
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2017/11/20 19:16:27
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同じ作者の「朱唇」を先に読んでいて、これで2冊目です。
今回は短編集ということで、全て中国モノの幻想怪奇譚。
たくさんレビューを書いてきたのに、
こんなにレビューが難しいご本も珍しいです。
面白い小説だったかと言われれば、文句なくどれも面白い。
漢詩のお好きな方や中島敦など好まれる方にもお勧めです。
多分、中国モノの良い読み手であるだけでなく、漢詩などにも
お詳しいのだろうなと想像できる著者の筆致は冴えていて。
品のよい、清雅な印象と、闊達・叙情が入り混じって
本当に楽しい時間を過ごしました。
でも、細かくあれこれ言おうと思うと、どれも饒舌な気がして。
それだけ惑溺して読んでいたのでしょうか。
邯鄲の夢のようでご本を閉じたらぼうっとしてしまって。
それと、関係ないことですが。
梅のお香でも焚いて読みたい、となぜか思いました。 -
中国を舞台にした短篇集。四話のうち三話が幻想怪異譚で、最後が墨匠の話なのだが、術者のバトルアクションあり、人間の醜い欲が引き起こす悲憤と悲哀あり、どこまでも捕らわれて出口の見えないうすら寒さありと、魅力的なテイストに酔わせてもらった。
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4編の中華系短編収録。妖し物も切なかったり痛快だったりとよいですが、「墨匠伝」が絶妙でした。コミカルでシニカルで予想外のハッピーエンド。楽しく読み終えました。
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井上祐美子さんの中国モノは何冊か読んでますが、これはもともとは講談社文庫に入っていたもののようです。今回は中公文庫に移ったわけですが、そういう文庫の移動ってのもどのくらいの時間をおけばアリなのでしょうか? それはともかく、これは短篇集です。清末の杭州を舞台にした一編がやや異色ですが、あとはちょっとした伝奇小説、今風に言えばミステリー(?)、オカルト(?)とでも呼べばよいのでしょうか、そんな作品です。どの作品も有名な歴史上の有名人が主人公というわけではなく、ごくごくふつうの人ばかりです。中でも「墨匠伝」は古今東西変わらぬ人間の欲と見栄を描ききっていて秀逸です。決して褒められた主人公ではなく、むしろとても嫌な奴です。でも、実に人間楽し描かれているために、しまいには逆に共感してしまいます。