- Amazon.co.jp ・本 (543ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122053243
感想・レビュー・書評
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20世紀後半、経済的繁栄の一方で、資本主義と共産主義の対立、脱植民地化の苦闘、人口増加や環境破壊など、かつてない問題が生まれていた。冷戦の始まりから東西ドイツ統一まで、発展と停滞、疾走する50年を迫力の筆致で語る。
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東西冷戦は、「キューバ危機」(1962年)の経験、中国のソ連離れ(アメリカとの接近を促した(中ソともに)[p249] )などからデタント(緊張緩和)へ向かった[p137]。とはいえ、これ以前も以後も、20世紀後半はソ連陣営(東)とアメリカ陣営(西)の対立、競争を背景に、インドなどの第三世界の台頭[p162]や地域差の濃淡があったものの[p159]全世界規模でグローバル化が進行した。それはその記述の多さや重要性からもわかるように、経済的側面が大きい(例えば、EUはまず経済統合からはじまった[p426など])。そして、この流れがやがて東西ドイツの統一(1990年)とともに冷戦を終わらせるのである[p480]。
また、ほぼいずれの国でも(主に西側)、<戦後の経済的低迷(アメリカは除く)→復興→高度経済成長(「開発独裁」もみられる)→停滞や低迷、急落など>という流れが共通してみられる。日米の経済摩擦などにみられるように、アメリカの経済的優位は低下し[p404]、国家を超えた企業の合併などのグローバル化がますます進行した(企業の「国籍喪失」[p423])。
経済の流れを変えたのは、二つの石油危機(オイル・ショック)あった。それ以降インフレと失業率の増加が同時進行するという前代未聞の「スタグフレーション」に世界が悩まされ、国家が財政政策を制約されると、世界的に低成長期に入った。そして、低成長期、安定期に入るとようやく環境問題が意識され始めた[p429]。これは新しいより高次の「超国家的」[p428]な流れの萌芽であろうか。
途上国では、植民地時代の負の遺産や独立闘争での疲弊などから経済的自立が立ち遅れ、先進国よりは高度経済成長の時期がズレる(遅い)。また、工業偏重の開発で農業をないがしろにしたため[p331]、農業の衰退や食料危機にも繋がった[p335]。とはいえ、さまざまな問題を抱えながらも第三世界などとして独自の路線を模索しつつある、かつてのヨーロッパやアメリカがそうであったような、ポテンシャルの高い地域であろう。