西洋学事始 改版 (中公文庫 か 19-4)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (396ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054707

感想・レビュー・書評

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  • 西洋の学問の正統からややはずれたところに位置するさまざまな分野について、比較的自由な形式で解説している本です。

    占星術・光学・紋章学・系譜学・古銭学・古文書学・カノン法・官房学・分類学・修辞学・言語学・図象学・美味学・心理学・詩学という15のテーマがとりあげられており、ヨーロッパの科学史ないし精神史にかんする著者の蘊蓄が語られています。

    フーコー的な意味でのエピステモロジーに近い内容ではありますが、参考文献などはあげられておらず、エッセイに近いスタイルになっています。この点についてはすこし残念に感じましたが、多くの読者が比較的気軽に読むことのできる内容になっており、それが著者のねらいなのだとすれば成功しているといってよいのではないかと思います。

  • あとがきの、「名老舗店の学問は上澄み」という言葉に反対である、それがすべてであると思う。知らない知識を知ることや、王道から外れたものに目を向け、そこから世界を見ることも大事だ。しかし、西洋学を語る上で、裏通りが王道にとって変わることは不可能である。「メインの思想家を外した」と言いつつプラトンとアリストテレスを外せないのがよい証拠であろう。
    王道の知識を抑えた上で深みと広がりを持ちたい人が読むべき本としてとてもよいものだと思う。しかしそれでは事始ではない。

  • 後書きにあるように、西洋知の原形質のようなものカタログ。西洋においては事象の関連性が深く、既存のものが発展して新しいものを生み出している。教会内部の統制のためにあったカノン法が国家の行政法の母体となったり、イコンのための学であった図象学が、絵画にコードを埋め込む技法となり、ロマン主義、象徴主義、シュルレアリスムへと受け継がれたこと、古代ローマのアプレイウスが書いたクピドとプシュケーの話がフロイトを経て心理学になり、ユングはヘルメス主義者の錬金術師と繋がるなど。また様々なところで新プラトン主義が顔を出しているところも興味深い。古典古代に種があり、近代に入って芽吹いたものがほとんどだが、唯一ヨーロッパ独自に生まれたものが美味学。単なる料理のレシピだけでなく思想を取り入れたことがヨーロッパ的な感じがする。
    占星術、光学、紋章学、系譜学、古銭学、古文書学、カノン法、官房学、分類学、修辞学、言語学、図象学、美味学、心理学、詩学と幅広い。

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著者プロフィール

 印刷博物館館長。東京大学名誉教授。専門は、西洋中世史(フランス中世史)、西洋文化史。
 1941年東京都生まれ。1965年東京大学文学部卒業、1968年東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。1969年京都大学人文科学研究所助手。1976年東京大学助教授、1990年東京大学教授、2001年退官。この間、文学部長(1997年4月〜1999年3月)、史学会理事長(1999年6月〜2001年5月)を歴任。2001年国立西洋美術館館長を経て、2005年10月より現職。2005年紫綬褒章受章。
 東京大学在学中は、日本における西洋史学研究について、その文明史的な存在意義を主張して西洋中世史研究の「中興の祖」とされる堀米庸三の下でフランス中世史を学ぶ。12世紀中葉からの北フランスに勃興した大聖堂などの宗教建築様式で知られる「ゴシック」を生み出した中世思想をテーマとして研究者歴を刻む。次第にその後、研究領域を西洋文化史全般へと移行させていったことから、おのずと対象とする時代も拡張されて近世・近代にもおよぶ。風土や町、身体や美術、とりわけ絵画などを題材とすることにより、斬新な視点から西洋史の読み取りに挑戦していく。こうした新しい歴史記述の試みは、その平明な記述とあいまって、研究者だけでなく多くの一般読者にも支持されている。

「2015年 『ヨーロッパ近代文明の曙 描かれたオランダ黄金世紀』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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