シリーズ日本の近代 - 逆説の軍隊 (中公文庫 S 25-1 シリーズ日本の近代)
- 中央公論新社 (2012年7月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (390ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122056725
感想・レビュー・書評
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今日広くイメージされる日本陸軍の狂信性や非合理性の原因を、明治の建軍から緻密に説きおこし、日本陸軍の特殊性を過度にクローズアップすることなく、軍が専門性と自立性を高めていく中で道を誤っていく様を描いている。
国家の中で、また社会の中での軍事組織のあり方を考える上で有用な本。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
松本零士の「ザ・コクピット」で、兵士のセリフに「おれには、これしかないんだ!だから、これがいいんだ!」というのがあったけど、存外、陸軍が方針転換できなかった理由の一端を突いていたんだなあ。
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日本帝国陸軍ができた時から解体までの歴史を記している。
明治時代、天皇を守る軍としてできた日本帝国陸軍。
政府直轄で徴兵制で軍人を集めた。
天皇のための軍隊ということで政治的中立のため統帥権持つことになった。
日清戦争、日露戦争で運よく勝利を収めたところから軍部の勘違いが始まる。
物質よりも白兵銃剣主義の精神論。
満州事変は軍人による軍部主導の国家を造るためのクーデター。
目的が明確でないままに第2次大戦に突入。
対戦時、他国にはリーダーがいたが日本はおらず陸軍と海軍の分裂状態。
日本軍がいかに学ばない組織であったかわかる。 -
ビジネス書の名著、失敗の本質で知った著者の単独著作だったので、文庫にしては高いな〜と思いながら購読した作品。
ミリオタにとってはつまらない作品かもしれません。また、緻密すぎて一夜漬けのビジネス本でもありません。
しかし、総力戦に突入し敗戦という国家としての大失敗を緻密に過程を著述している作品。
単純な陸軍悪玉論に陥ることはなく、歴史教科書に載っている事件はモレないだけでなく国軍創設から敗戦にいたるまでの組織の進化の過程を論述しきっている。
個人的には作家買いしてもいい作者です。 -
明治時代に創設され、1945年に解体された日本の軍隊に関する歴史が詰まった本である。内容の濃さ、参考文献多さに学者による本を感じさせる。
プロローグにある敗戦時のクーデター計画や、初期の頃、藩への忠誠が天皇を中心とする国への忠誠へ変わったが、実はそんなにすんなりとはいかなかったなど、いままで知らなかった軍隊の歴史を知ることができる。
第一次世界大戦の影響なども受けながら軍隊が変容していく様を読んでいて、個人的には、この時点が悪かったという時期をピンポイントでは見つけられなかった。歴史は連続していて、様々な外的要因により影響されることを強く感じた。 -
軍部の独走とか、そんな簡単なこっちゃないんすね。
確かに、そういう見方も間違いではないのでしょうが、その時代の雰囲気とか含め、我々もその中にいたんやろなという思いです。
当時まだ生まれてなかったですが、いまの政治にあーだこーだゆうたり、会社組織にあれこれゆうたりする自分もそんな変わらへんと思うとなんとも言えん気持ちになりました。
あと、永田鐵山という人物に興味を持ちました。
今度はこの方について書かれた本を読んでみたいです。 -
「失敗の本質〜日本軍の組織的研究」の著者の一人である、元・防衛大学教授、戸部氏による日本陸軍の誕生・成長と変容の記録。明治の創設期から1945年8月まで、日清、日露戦争を経た変化、第一次大戦後のデモクラシーとの押し引き、古参と陸軍大学出身者の確執、軍縮と人事停滞による閉塞感の影響などと統帥権の位置づけの変化を詳細に述べる。
タイトルは「逆説の軍隊」とされている。成立から<b><span style='color:#ff0000;'>日露戦争の頃まで陸軍が担っていた日本の希望と未来が、世界史の流れ、日本的組織の限界のために、変わっていかざるをえなかった</span></b>。昭和に入ると陸軍は当初の目的とは変わったものになってしまった、ということを「逆説」と表しているものと思う。