鷗外の坂 (中公文庫 も 31-2)

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  • 中央公論新社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122056985

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  • 森鷗外のライフヒストリーを、住んだ家の変遷、往来した道や街並、家族や友人、そして鷗外自らの作品から辿る評伝。

    明治の文豪として日本人なら知らない人はない、ちょうゆうめいさっかであるが、本業は帝国陸軍の軍医。軍医総監まで出世の階段を登り詰めている。
    ドイツ留学し、世紀末芸術の香り高い欧米文学を日本に翻訳紹介し、それと同時に近現代の日本文学の新文体を創出したのみならず、劇渋な時代物小説も残した。
    「舞姫」や「雁」など、自分の恋愛歴をリアルに反映したような恋愛小説もあり。

    私生活では2度の結婚、5人の子供をなし、子煩悩、家族思いの反面、妻との確執も。
    弟とは雑誌創刊、文学仲間との交流、創作以外にも翻訳や劇評、文学活動とは別に医学や衛生関係の著述もこなすという、60歳かそこらまでの人生でこんなにたくさんのことができたということが驚きである。

    鷗外の作品を読むだけでは見えてこない、背景を丁寧に辿りながら、明治という時代、伝統的な家父長制家族観、近所に住う人々との交際、散策好きだった鷗外の創作の源泉などが、千住や千駄木の街角の息吹からひょこりひょこりと現れる。

    著者は膨大なエピソードや人物相関の中から、鷗外の歩いた街並みや、周辺の人々の姿をいつくしみながら浮かび上がらせる。

    最近たまたま、団子坂付近を散策する機会があり、鷗外記念館にも立ち寄ったので、親近感もひとしおで楽しく読んだ。

    浅草、上野を中心とするエリアは、今まであまり行ったことがなかったが実は江戸、戦前の東京の歴史や文化が満載の風情あるエリアである。これからも歴史散歩にハマりそう。




  • 文学
    ノンフィクション

  • 団子坂、三﨑坂、三浦坂、S字坂、無縁坂、芋坂、暗闇坂、へび道・・・、文豪森鴎外が暮らした坂のある町。その足どりを辿り、創作の軌跡と家族の肖像をたずねた評伝、元「谷根千」編集人、森まゆみさんの傑作だと思います。本当によく調査されてると思います。441頁にわたる大作です。森鴎外、散歩の楽しみは古本屋だったそうです。森まゆみ 著「鴎外の坂」、2012.9、中公新書発行。

  • 鷗外を取り巻く土地と地形から、鷗外の人生を追っていく感じ……。

  • 森まゆみ先生は丹念に森鴎外について調べられており、読んでいて楽しいです。この本だけみていると、森林太郎は好感度高くてよい人という感じをうけますが、実際は同時代の人の書物を見ると、嫌な人だったんだと思います。新しく文庫で出されるにあたって、新しい鴎外記念館の写真が挿入されていたりして、嬉しいです。千駄木の往来堂書店にて著者サイン本購入。森さんの本は千駄木の往来堂か、日暮里駅構内のリブロで買うに限ります。

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著者プロフィール

1954年生まれ。中学生の時に大杉栄や伊藤野枝、林芙美子を知り、アナキズムに関心を持つ。大学卒業後、PR会社、出版社を経て、84年、地域雑誌『谷中・根津・千駄木』を創刊。聞き書きから、記憶を記録に替えてきた。
その中から『谷中スケッチブック』『不思議の町 根津』(ちくま文庫)が生まれ、その後『鷗外の坂』(芸術選奨文部大臣新人賞)、『彰義隊遺聞』(集英社文庫)、『「青鞜」の冒険』(集英社文庫、紫式部文学賞受賞)、『暗い時代の人々』『谷根千のイロハ』『聖子』(亜紀書房)、『子規の音』(新潮文庫)などを送り出している。
近著に『路上のポルトレ』(羽鳥書店)、『しごと放浪記』(集英社インターナショナル)、『京都府案内』(世界思想社)がある。数々の震災復興建築の保存にもかかわってきた。

「2023年 『聞き書き・関東大震災』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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