現代うた景色-河野裕子の短歌案内 (中公文庫 か 82-1)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122059818

作品紹介・あらすじ

「待つ」ときめき、母と子、父と娘、失恋、桜の歌…一つのテーマに三首ずつ、意中の一八六首。自由に柔軟に、歌そのものが語り出す-

感想・レビュー・書評

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  • 選んだ歌の解説を河野さんがされることで、選ばれた歌の意味をより深く味わうことができました。

    特に印象に残った解説は、
    「どんなにしてでも人は生きていなければならないし、生はまたそれだけの価値があるものだと教えられる」
    という一文です。

  • 女性の歌は、そうなのかと納得することはあっても、深く感情移入するのは難しいと感じました。
    そんな中で心に残ったのは、長尾幹也の歌。

    籠の鳥水槽の魚小屋の馬繋がれし犬定期買う我

    私はもうすぐ完全に自由になりますが、それは野良犬として生きていくことを意味するのだと感じています。

  • 良妻であること何で悪かろか日向の赤まま扱【しご】きて歩む
     河野裕子

     男女雇用機会均等法の施行は、1986年。肩パッド入りのスーツ姿の女性たちが、経済的にも精神的にも自立して働くさまを、当時高校生だった私はまぶしく見ていたものだ。
     その2年後に発表された掲出歌は、歌壇で波紋を広げていた。30代女性歌人によるシンポジウムを経て、働く女性像や、離婚をテーマにした歌集が話題を集めていたからである。専業主婦の立場を誇らしく思う発想は、パートナーである夫の経済力への依存にすぎない、という厳しい声も上がっていた。
     河野裕子は、価値観の押しつけこそ問題だと、あえて、「良妻」として家事労働をこなす女性像を歌ったのだろう。「赤まま」はイヌタデのことで、小さな粒状の赤い花を赤飯にたとえたものだ。赤飯を炊き、家族の祝い事を支える姿が視覚的にも印象的な歌である。
     河野は学生時代から短歌を作り、夫の永田和宏とともに第一線で活躍。息子と娘も短歌を作り、一家は「歌壇の磯野家」とも呼ばれていた。2010年に64歳で病没したが、今秋、入門書や家族とのリレーエッセー「家族の歌」(文春文庫)などが相次いで文庫化されている。
     バブル景気の余波に社会人となった私は、この歌に長く違和感を抱いていたが、年を重ね、少し歌の真意がつかめたようにも思う。かつて内閣府が掲げた「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)」憲章を再読してみたい。

    (2014年10月12日掲載)

    付記・私は「悪妻」(きっぱり)なので、掲出歌の潔さに、今は素直に惹かれたりもします・・・。

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