- Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122060449
作品紹介・あらすじ
辛亥革命に身を投じた北一輝が帰国後の一九二三年に著し、国家改造の青写真を示して発禁処分になった『国家改造案原理大綱』。一部を伏せ字とし改題して刊行された本書は、昭和の青年将校を魅了し二・二六事件の引き金となったが、一方で私有財産制限、華族制廃止、財閥解体を訴え戦後改革の先駆けとも評される。
感想・レビュー・書評
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著者、北一輝、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。
---引用開始
北 一輝(きた いっき、1883年〈明治16年〉4月3日 - 1937年〈昭和12年〉8月19日)は、戦前の日本の思想家、社会運動家、国家社会主義者。本名は北 輝次郎(きた てるじろう)。二・二六事件の皇道派青年将校の理論的指導者として逮捕され、軍法会議で死刑判決を受けて刑死した。
日蓮宗と労働者の主権、社会主義を結び付けた独特の思想を発表したことで知られる。
---引用終了
で、本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
辛亥革命に身を投じた北一輝が帰国後の一九二三年に著し、国家改造の青写真を示して発禁処分になった『国家改造案原理大綱』。一部を伏せ字とし改題して刊行された本書は、昭和の青年将校を魅了し二・二六事件の引き金となったが、一方で私有財産制限、華族制廃止、財閥解体を訴え戦後改革の先駆けとも評される。
---引用終了
本作には、次のように書かれた箇所があります。
「我が日本亦五十年間に倍せし人口増加率によりて百年後少なくも二億四五千万を養ふべき大領土を余儀なくせらる」
つまり、2019年には日本の人口は2億4千万人になると予想できるとの内容です。
大きく外れてしまいましたが、100年前の人口増加率には勢いがあったことが分かります。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦前右翼を代表する著者北一輝の思想が本書に詰まっている。これは、二・二六事件で決起した青年将校たちのバイブル本として読まれた本で、それが結果的に北一輝の処刑に繋がってしまった。そのような背景をもつ本書は、現代から見て奇妙だ思う箇所が見られる一方で、北の国家改造に 対する鋭い洞察がいくつかある。
個人的に、巻五「労働者の権利」と巻六「国民の生活権利」に関しては、戦前の日本の時点でそのような発想に至るのは、北が先見の明がある人物だとわかる。巻五では、「幼年労働の禁止」や「婦人労働」など、年齢制限や性差を公平に見たりと、労働者側の立場を考慮した思想が垣間見れる。また、巻六は全体を読んでいくと、国民目線で様々な保護の必要性を訴えている。このように、北は右翼的思想の持ち主であったが(本書を読むとわかるように天皇を絶対視する立場である)、一部は現代のリベラル的思想と通じるものがある。しかし、皮肉なことに、日本が太平洋戦争で敗北して、その後、GHQ占領時に北の思想が次々と実現してしまったのはなんだかやるせない(戦後の時点で北は既に亡くなっている)。 -
以前から、気になっていたので、購入しました。一言で表すと、『ぶっ飛んでる』という感想です。
皇室財産の処分、私有財産の制限、土地所有の制限、企業の資本金限度額などを掲げています。また、英語を廃止して、エスペラントを第2国語とすると主張しています。私有財産の制限を破ったら、最悪、死刑になります。北一輝という人が、誰と会い、何を見て、このような結論に至ったのか、知識を持ち合わせていないので、なんとも言えない。ただ、北一輝が主張する国家社会主義というのは、どこをどう読んでも受け入れがたい。国家の権力がかなり強力になるが、権力を握った人物が、間違った思想を持てば、国家を破滅に追い込む可能性がかなり大きい。同時期に読んだ石原莞爾の最終戦争論と比べても、惹かれる部分に乏しかった。ただ、ぶっ飛んだ思想に触れること自体は刺激はある。時間があれば、時代背景を調べて、再度読んでみたい。
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収録内容は以下の通り。
大川周明: 北一輝先生碑文
日本改造法案大綱
対外国策に関する建白書
嘉戸一将: 解説
朝鮮の歴史的経緯や、良妻賢母教育、大日本帝国が国家有機体説を採用しているという解釈は、当時の状況における分析としては充分当を得ていると思う。分析力はあるが、その結果導き出した答えが、クーデターを起こして社会主義国家にしようというのが甚だ疑問である。
二・二六事件が成功していたら、敗戦したのちに天皇が処刑されていた可能性が高い。右派運動が結果的に天皇を危険に晒したという事実を受け止めるべき。
カバーデザインは鈴木正道。 -
社会主義者。天皇を中心とする社会主義国家を主張。富の平等。天皇と国民を隔てている元老・財閥・政党を除去して、天皇と国民を直結させたい。▼3年間の憲法停止。私有財産は上限100万まで。資本金1000万以上の企業を国有化。国家による市場介入。私企業の純利益を労働者に還元。児童・女性・老人の擁護。朝鮮人に参政権を与える。自衛の権利・他国のために開戦する権利・不法占拠する者への開戦の権利。北一輝(1883-1937)
※影響を受けた青年将校がを高橋是清などを襲撃殺害(二・二六事件1936)。北一輝は首謀者として処刑。
欧米文明の盟主である米と、アジア文明の盟主である日本が衝突し、勝者が世界の覇者になる。石原莞爾(1889-1949)
※満州事変(1931)は陸軍の課長クラスが計画・実行した。
*日蓮宗系・国柱こくちゅう会。宮沢賢治・石原莞爾・近衛文麿の父。
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●皇道派。国家社会主義。国粋。北一輝
●統制派。国家社会主義。親ソ連。
◯伝統保守派。親英米 -
2・26事件の理論的指導者にして国家社会主義者北一輝は、ファシズムの反動思想家としての否定的評価が一般的だが、通念の意表を突く鋭角的な論理が放つ妖しい魅力によって、今も読書界の根強い人気と研究者の高い関心を保っている。それは毀誉褒貶甚だしいナチスの桂冠法学者カール・シュミットにどこか似てもいる。実際二人を比較した研究も存在する。(宮本盛太郎『北一輝研究』)主権者とは例外状態において決断する者に他ならない、と喝破したのはシュミットだが、北も本書において、国家の危機という非常事態を前に、三年間の憲法停止と抜本的な国家改造を提案する。二人は現実の歴史の成り行きでは敗者の烙印をおされる結果となったが、矛盾を露呈しつつあった民主主義を民主主義によって止揚せんとして、ともに時代の最先端で格闘した思想家であることは間違いない。
シュミットとの比較論はさておき、北の政治理論は極めて「モダン」なものである。『国体論及び純正社会主義』においては、古色蒼然たる国体論と国民が天皇の臣民であることを前提とする天皇主権説を否定し、国民の総代表としての天皇観に立った国家主権説を唱えたが、これは当時のリベラル学説であった天皇機関説にほぼ等しく、戦後の象徴天皇制にあと一歩とさえ言える。本書で提示される改革案も、皇室財産の国家への帰属、労働者や婦人の権利保護を含めた種々の社会保障政策、義務教育の強化・充実など、いずれも国民を主役に据えたものであり戦後に実現したものが少なくない。また大資本の国家による統合を柱とする社会主義的経済政策は、資本主義の矛盾が先鋭化した当時の国際情勢に多分に規定されたものではあるが、独占資本の利点を活かしながら、それを国家・国民の利益に振り向けようとする優れて国民主義的な政策であった。
本質からやや逸れるが、北の破天荒とも言うべき独特の文体に直接触れるのも本書の楽しみの一つである。一例を引く。「米人の「デモクラシー」とは社会は個人の自由意志による自由契約に成るといいし当時の幼稚極まる時代思想によりて・・・その投票神権説は当時の帝王神権説を反対方面より表現したる低能哲学なり。・・・国家の元首が売名的多弁を弄し下級俳優のごとき身振を晒して当選を争う制度は、沈黙は金なりを信条とし謙遜の美徳を教養せられる日本民族にとりては一に奇異なる風俗として傍観すれば足る。」