三日月の花 - 渡り奉公人 渡辺勘兵衛 (中公文庫 な 65-5)
- 中央公論新社 (2016年10月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122062993
感想・レビュー・書評
-
戦国期までは“渡り奉公”という考え方は広く普及していたと言い得るモノだった。「召し抱える」側というより、「召し抱えられる」側に“選択権”が在るとするような立場…と言えば好いのか?「仕えるに値する主君を選んで仕え、活躍をして見せる」という在り方…それが“渡り奉公”である。渡辺勘兵衛はそういう在り方を実践し続けた男だ…
本作では、この渡辺勘兵衛が関ヶ原合戦の後始末という段で、当時仕えていた増田家の城、大和郡山城の明け渡しに関して一暴れする辺りから始まり、藤堂家に召し抱えられ、やがて大坂の陣を巡る事等で軋轢が起こってしまう顛末が描かれる…
渡辺勘兵衛は“渡り奉公”という価値観を貫き通そうとするが、彼を召し抱えた藤堂家の藤堂高虎もまた、その“渡り奉公”という価値観の下に歩んで来た男であった。しかし…徳川体制下で必ずしもそうではなくなった…そして軋轢が起こるのだ…
本作の渡辺勘兵衛が貫こうとした“渡り奉公”という価値観…或いは現代でも「受け入れられ悪い」ようなモノなのかもしれない…または、そういう価値観が排され、江戸時代の永い経過が在って、今日では「思い付きさえしない」モノになっているのかもしれない。が…「胸中の“花の声”を頼みに」と表現される渡辺勘兵衛の流儀、「“権威”とされている」という“だけ”の理由で盲従するのではなく、「正しい!」と思える道を貫こうとする在り方…単純に時代モノのエンターテインメントとして痛快で愉しいに留まらず、或いは「かく在りたい…」という感も漂う…
何か余韻が深いような作品だった…詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
単行本タイトルは「恥も外聞もなく売名す」の文庫版の「三日月の花 渡り奉公人 渡辺勘兵衛 」
槍の勘兵衛こと渡辺勘兵衛の生き様の様な作品。
単行本のタイトルにもある恥も外聞もなく売名すや、おのれを尊べぬ者は、他からも尊ばれぬぞ。権門にへつらうために死人のように生きる者は、用済みとならば塵芥のように捨てられるばかり、など個人的に良い言葉も多くあり、渡辺勘兵衛のキャラクターも豪快の中にも涼やかさがあり楽しめました。
歴史小説、時代小説の世界の中で現代にも通づる問題を上手く融合させている所など中路啓太さんの作品は初めてでしたが読みやすくまたのめり込み易く感じました。
解説にもあった様に渡辺勘兵衛を描いた作品に池波正太郎さんの戦国幻想曲という作品がある事を知り興味が湧きました。
渡辺勘兵衛の様な生き様の作品を読みたくなれば読んで見ようと思う。
2023/1
-
御恩ー奉公という形式は江戸時代に作られたもので、勘兵衛のマインドは今とかなり似ているなと実感。いつの時代も上の顔色を窺いすぎる上司の下にいると窮屈になるもんだ。
-
「許せぬ」
官兵衛の五体の血は一気に沸騰した。
勝負は時の運と肝に銘じつつ、負けた相手にも情けをかけ、その名誉を守ってやるのが武士というもの。
勝負となったからといって無体な振る舞いは許されない。 -
時は関ヶ原の合戦直後。『もののふ莫迦』で「本屋が選ぶ時代小説大賞2015」に輝いた著者が描く、反骨の武将・渡辺勘兵衛の誇り高き生涯!