- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122069411
作品紹介・あらすじ
2018年本屋大賞2位!
著者渾身の慟哭のミステリー、ついに文庫化!
昭和五十五年、春。棋士への夢を断った上条桂介だったが、駒打つ音に誘われて将棋道場に足を踏み入れる。そこで出会ったのは、自身の運命を大きく狂わせる伝説の真剣師・東明重慶だった――。死体遺棄事件の捜査線上に浮かび上がる、桂介と東明の壮絶すぎる歩み。誰が、誰を、なぜ殺したのか。物語は衝撃の結末を迎える! 〈解説・羽生善治〉
感想・レビュー・書評
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これは面白かった!
読む手が止まりません。
将棋の世界に生きる男たちの人間ドラマ、生きざまが語られる物語。
下巻では、
賭け将棋「真剣師」の東明重慶との出会い。
東明の将棋に魅せられ、東明と東北で大きな賭け将棋の旅へ。東明との出会いが桂介の運命を変えていきます。
って、東北についていくか...(笑)
その戦い後、東明は姿を消します。
桂介は大学卒業後、外資系会社に就職、そして独立してIT企業の社長として成功。
そんな中、クズの父親が現れて金の無心。ありがちの展開(笑)
どうなる桂介!
ふたたび東明も現れて..
という展開です。
そして、いまいま、桂介はプロの棋士になって世紀の一戦へ。
一方、警察も白骨死体の身元を特定、さらに桂介が駒を持っていたことを突き止め、タイトル戦の会場へ。
白骨死体は誰?
誰が殺したのか?
その動機は?
そして、明らかになる真実...
唸ります。
また、向日葵については、ゴッホの向日葵が出てきますが、「盤上の向日葵」とは桂介が見出す最善手のこと。
盤上に向日葵が現れるのか?
世紀の一戦で見出した最善手とは!
これまた、唸ります。
とってもお勧め!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本作品での将棋の場面はほとんどがアマの真剣師による賭け将棋で、昭和のヤバイ闇社会を垣間見ることができる。
本作品で登場するプロ棋士は、6冠を保持している24歳の壬生芳樹(みぶよしき)であるが、このモデルが羽生善治(はぶよしはる)であることは明らかだ。
下巻で登場するアマの真剣師・東明重慶(とうみょうしげよし)は物語の中で「鬼殺しのジュウケイ」の異名を持っている。
こちらも小池重明(こいけじゅうめい、本名:こいけしげあき)という「新宿の殺し屋」との異名を持つ実在の真剣師がモデルだということは容易に想像できる。
壬生芳樹と東明重慶が絡むシーンはなかったが、羽生善治と小池重明は接点があったことを解説で羽生さん本人が語っている(小池の名前は出していないが明白)。
羽生善治さんは9歳の時に小学生ながらアマ名人戦に出ていて、東京都下大会の予選を勝ち上がり本選にも進んでいる。
本選で敗れた羽生少年は決勝戦で記録係を務めているのだが、そこで優勝したのが小池重明だ。その後小池は全国大会も2連覇している。
タイトルの"向日葵"も下巻でいろんな意味を持って登場する。
ゴッホの"向日葵"も関係している。
"盤上の向日葵"は、今ならAIが示す最善手を象徴したものだ。
"盤上"に"向日葵"が現れるか否か…、それが勝敗に大きく影響する。
この物語は、なぜこのようなことになったのかを、登場人物の生い立ちと関係性を詳しく示すことで明らかにしていく。
天才棋士・上条桂介が主人公という設定だが、本当の主役は東明重慶で上条桂介は東明の分身のようにも感じた。
東明と上条の最終局の勝敗を決する手がまさかの●●と、同じであることが両者の関係性を物語っている。
将棋を題材とした物語で、二人の生き様の総括にもなっている●●を最後の一手に選んだ柚月裕子さんの発想は凄い。
佐野・石破コンビの刑事のキャラも良かったし、期待を裏切られることなく面白かった。 -
男たちの描写が鬼カッコいい! あなたは真剣に生きていますか? そんな命題を突き付けられる人生の一冊。
不遇な環境に育った少年が将棋の面白みと恩師に出会い、成長とともに棋士の頂点を目指していく。さらに、ならず者である伝説の棋士との巡り合いにより、さらに血の通った勝負師として成長していく。
彼がトップ棋戦に挑む中、警察では身元不明の死体の捜査を行っていた…
また名作を読んでしまった… 面白すぎですよっ
テーマの組み合わせがうますぎ。
警察小説の少しずつ真相がわかってくる感じ、社会派ミステリー「人の運命」の提示、魂のぶつかり合いを繰り広げる棋戦描写。これを柚月さんが書いたら超絶面白くなるでしょ! もう最高。
名駒を中心に話が進みますが、話の組み立てが超絶お上手。プロなんだから当たり前なんでしょうけど、ホント話の進め方がうまい。
そして例によって男たちの描写がカッコいい!
柚月さんの文章は、人間を描くときに血が通ってるのがわかるんですよね。
棋士、真剣師、刑事、先生、父。そして忘れてはならない母… 力強く生きているさまがビシビシ伝わってきました。
終盤がまた最高です、素敵すぎて胸がうたれました。
どんなことも真剣に生きることを実践してきたからこそ、最後に咲いた向日葵。ものすごい因果のある人生ですが、こんなにも重厚な人生が全う出来たら、死さえも受け入れられる気がしますね。強く生きる、幸せに生きるとはどういうことなのか。自身の生き方について気づきを与えてくれる、そんな作品でした。
なお将棋がわからなくても、問題なく読めます。
そして読み始めると最後まで止まらなくなるので、マジで気を付けてください。-
2023/01/18
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おおおっ、shukawabestさん
コメントありがとうございます。
楽しんでいただいたようで、なによりです!おおおっ、shukawabestさん
コメントありがとうございます。
楽しんでいただいたようで、なによりです!2023/01/20
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下巻も一気読みできた。将棋の戦いは盤面はわからないが独特の緊張感が伝わってきた。過去と現在が繋がってきて、後半になって被害者が判明する。そっちかー。その後の話は辛かった。タイトル戦の結末も。切ないな。
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辛い過去は、最後までその人の人生にのしかかっていくのかと、複雑な思いで読み終わりました。下巻は、石破刑事に代わって存在感を示した東明重慶に上条同様に翻弄されながら読み進めました。上下巻、続きが気になって一気読みでした。
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盤上の向日葵 上、下
「起きた事象そのものに意味はない。
それを幸と思うか?または不幸と思うか?は
自分自身だ。」
1.物語
7歳の少年。
【生い立ち】
母親は憔悴し、自殺。
父親は酒そしてギャンブルに溺れ、さらに暴力を振るう。
【出会い】
そんな環境の中の少年の唯一の楽しみが将棋であった。
駒、盤を買うお金もない少年は、1人の師となる人物と出会う。
そこで、少年は、将棋含めて、知識を学ぶ楽しさを知る。
2.盤上の向日葵。上、下セットである理由
【上巻】
少年含めて、1人ひとりの登場人物とその関係を丁寧に描く。
【下巻】
その関係が過去から現在にかけて、どのように変遷し、事件に帰結したのか?が明かされる。
冒頭/刑事が容疑者に対峙する現在のシーンから、容疑者の過去、生い立ちにさかのぼり、思想させる展開は、⭐️五個では足りない構成力と言えるのではなかろうか、、、。
3.主人公の生き様を読み終えて
【何を重ねるか?】
ミステリーとして読むか?
1人の成年の苦慮した人生として読むか?
読了して1週間経過した。
ノートに記載した内容は後者であった。
【拠り所】
青年は、幼少期に命を投げ出さず、勉学に励み、東京へ。奨学金、アルバイトで卒業する。
頼るもの、信用するものは、己のみ。
ゆえに、己の拠り所が崩落したとき、生きる足場を失ってしまう。
【盤上の向日葵】
生きる。
自陣と相手方とのやりとり、駆け引きと言う意味で、盤上と類似である。
自身が手詰まりならば、投了するか?または、再戦の機会あらばお願いするか?も盤上と類似である。
その生きるにおいて、光をくれる向日葵、指針に会えるか?いなか?は、著書にあるとおりかとしれない。
「ものを知らないことほど恐ろしいことはなし。
無知は人に恐れを抱かせるか?
または、恐れ知らずにさせるか?のどちらかである。」
「正しい知識をもたなければ、正しい判断は下せない。」
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なんだか美しい話だ。この人は人物を魅力的に書くのがうまい。個人的な好みとして、映画でもなんでも、ストーリー云々よりも魅力的な人物が出てくるものが好きである。そしてストーリーもおもしろい。上巻のはじめのほうで壬生芳樹という名前の棋士が出てきて、羽生善治がモデルかなとおもったが、その羽生善治が最後に解説を書いてるところがまた良い。
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少し前に読んだ蟻の菜園でも、ろくでなし親による子どもの虐待があって、本書の上条桂介もそうだった。
将棋の才能が高い桂介は元教諭の唐沢の支援を受ける。上京して奨励会に入る手前でろくでなし父親の妨害で挫折するが、成長して持ち前の頭脳明晰さから東大合格、やがて起業して成功する。
自分では、真剣師の東明重慶との旅打ちの章が引き込まれた所かな。なぜ名品の駒と一緒に埋葬したのか。。。読みながら考えてました。
東明重慶と石破刑事のクセの強いオッサン臭いところがヨシ。
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埼玉県の山中で発見された白骨死体には有名な職人による将棋の駒が一緒に埋められていた。事件を担当することになった若手刑事と一癖或るベテラン名刑事のコンビによる捜査風景と、東大卒、実業家という異色の経歴を経てプロ棋士となった天才棋士の独白が交互に織りなす物語。
絡み合う壮絶な人間関係と、息を呑む将棋の真剣勝負の描写。最後に明かされる真実に慟哭。
ベージを捲るのももどかしいくらい読みだしたら止まらなかった。上感で一息入れるつもりだったが、勢い止まらす下巻に突入。久しぶりの一気読み。