- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122070585
作品紹介・あらすじ
「類稀なる傑作。私たちの甘さを根底から容赦なく揺さぶってくる」(東山彰良氏「解説」より)
金だけだ。金だけがあてになる唯一のものだ――。
戦後まもない香港で、故郷を捨てた台湾人たちがたくましく生き抜く姿を描き、一九五六年、外国人初の直木賞受賞作となった「香港」。日本統治と国民党の圧政のもと、ある台湾人青年が味わった挫折と虚無を主題とする「濁水渓」。著者の青春時代が結晶した代表作に、作家デビュー当時を回顧した随筆「私の見た日本の文壇」を増補した新版。〈解説〉東山彰良
感想・レビュー・書評
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1956年の直木賞受賞作品「香港」と1954年の候補作「濁水渓」収録。
まず、増補版の表紙が秀逸!フォント、写真、デザイン、どれも好き。
諦念と虚無‥‥「儲けの神様」の起点がここにあった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
濁水渓
いや〜傑作…。東山彰良氏の解説にて「作家として生き、言葉に焦がれ、作家として死んでいこうとしない者が書いた小説など、その良し悪し以前にまったく読む気になれなかった。」とあり、その気持ちに私も深く同意するものの氏同様、偏見を持つばかりに傑作を見逃す危険性を私も改めて認識した。
政治信条を失い金儲けに走るようになる…と聞くと随分落ちぶれたように感じるものの、そこは中国の統治する地と思えば法などないも同然、思想など何の役にも立たないと察せられるので林の生き方にどうして難癖つけることが出来ようか。(この本を読む前に茂木先生の著作などで繰り返し中国において如何に血縁や地縁が大事で賄賂がまかり通っているかを読んでいたのも良かった。)
でも日本の統治下でも賄賂に値するものはしっかり要求されてるね!個人商店で代金を払わない憲兵とか、恥を知ってほしい。
しかし1955年初出とは思えない読みやすさだったのは、だいぶ改訂されているから?(私が19世紀の小説読んだ後だったからってのもある…?) -
台湾人(外国人)初の直木賞作家が描く1940年代の台湾と50年代の香港の姿は、それが著者の経験をもとにして書かれた自伝的小説であるということをひいても未知の世界であり、非常に生々しい。統治主体が変わることにより激変する社会と、自由を求めて渡った新世界で生き抜く苦悩は、半世紀以上前に書かれたとしても、現代にもその根は残っているような感じる。その時代を生きた者たちは、今の香港の信じられない変化とやはり大きく変わった台湾の姿をどう感じたのか。そしてこのような小説が日本語で書かれたことを有り難く思う。学生時代には読めなかったのだ。
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戦後まもない香港で、台湾人青年がたくましく生き抜くさまを描いた直木賞受賞作「香港」に、同候補作「濁水渓」を併録。随筆一篇を増補。〈解説〉東山彰良