わたしたちの秘密 (中公文庫 な 79-1)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 62
感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122072343

作品紹介・あらすじ

村山由佳氏、おすすめ!
「作家・中江有里の真摯な声が聞こえてくる。人生からは逃げられない、けれど人は変われる、と」

30歳の大倉玉青は、人材派遣会社に登録し大手通信系企業の受付として働いている。大学時代は、演劇サークルに所属していた。愛読書の『走れメロス』をバッグに放り込み、苦行のような満員電車に乗り職場へ通うのは、ただ生活のためだけだ。その生活が空虚で、何のために生きているのかわからない。彼女は、5年前の自らの選択が生んだ「秘密」を抱え、それに関わる者の存在を「希望」と感じながら、ただ日々を過ごしていた。
そんなある日、劇的な邂逅から生活が急転。玉青は思う。この出会いを、わたしは信じていいのだろうか――。
女優・作家・歌手として多彩な才能を見せる著者が、二人の女性の交錯を軸に現代的テーマに迫った、温かでミステリアスな物語。
『トランスファー』改題。

〈巻末対談〉松井五郎(作詞家)×中江有里
歌手活動の再開は、この小説がきっかけだった

感想・レビュー・書評

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  • わたしの秘密からわたしたちの秘密へ。「走れメロス」へのオマージュも織り込みつつ。入れ替わりものやファンタジー要素は、個人的にはちょっと苦手とする要素だったけれど、生きる気力をなくしかけていた玉青が、偶然運び込まれた病院で出会った、いるはずのなかった姉妹。入れ替わることによって、お互いの見方も、世界観も影響を受けて、親、恋人、同僚、子供との関係もすこしずつ変わっていき…と。きっかけもパターンもわからず、気がつくと入れ替わり、思念があふれてまざりあいそうになる不思議。繊細で謎めいた物語だった。

  • 著者が、10代の頃から清純派女優として活躍して来たことは良く憶えている。実際に視聴した出演作も少なくない。その彼女がここ10年ほど「作家」としても紹介されたり、テレビに出演する姿も見ていた。でもその彼女の著作を実際に手に取って読んでみたのは本作が初めて。
    読者を自然に惹き込み、著者自身の創作世界を表現豊かに紡ぐ力量があることには、正直少し驚いた。単に創作を趣味とする素人が書いてみた習作の類とは明らかに一線を画した、周囲が認める一定の完成度を持っていることは間違いない。その意味で、本作を読むこと自体は楽しく、最後まで一気に読み終えることが出来た。
    ただ作品として「面白かったか?」と問われれば、話は違う。正直、あまり面白くはなく、読み終えた後、その内容や深みの物足りなさに少なからず失望してしまった。
    一言で云えば、物語そのものが、すでに読んだこと/見たことのあるストーリーや種明かしの幾つかの寄せ集め的に思えてしまい、著者ならではのオリジナリティを強く感じることが出来なかった。それが残念。

  • 派遣社員として空虚な毎日を送る三〇歳の大倉玉青は、五年前の自らの選択に端を発する、ある「秘密」を抱えていた――。〈巻末対談〉松井五郎(作詞家)

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著者プロフィール

俳優、作家、歌手。1973年大阪生まれ。89年芸能界にデビューし、数多くのTVドラマ、映画に出演。俳優業と並行して脚本の執筆を始め、2002年「納豆ウドン」で第23回「NHK大阪ラジオドラマ脚本懸賞」最高賞受賞。06年には第一作となる小説『結婚写真』を刊行し、小説、エッセイ、書評など文筆活動も積極的に行う。NHK-BS『週刊ブックレビュー』で長年司会を務めた。NHK朝の連続テレビ小説『走らんか!』ヒロイン、映画『学校』、『風の歌が聴きたい』などに出演。近著に『万葉と沙羅』(文藝春秋)、『残りものには、過去がある』(新潮文庫)、『水の月』(潮出版社)など。文化庁文化審議会委員。19年より歌手活動再開。

「2023年 『北條民雄『いのちの初夜』 2023年2月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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