- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122072343
作品紹介・あらすじ
村山由佳氏、おすすめ!
「作家・中江有里の真摯な声が聞こえてくる。人生からは逃げられない、けれど人は変われる、と」
30歳の大倉玉青は、人材派遣会社に登録し大手通信系企業の受付として働いている。大学時代は、演劇サークルに所属していた。愛読書の『走れメロス』をバッグに放り込み、苦行のような満員電車に乗り職場へ通うのは、ただ生活のためだけだ。その生活が空虚で、何のために生きているのかわからない。彼女は、5年前の自らの選択が生んだ「秘密」を抱え、それに関わる者の存在を「希望」と感じながら、ただ日々を過ごしていた。
そんなある日、劇的な邂逅から生活が急転。玉青は思う。この出会いを、わたしは信じていいのだろうか――。
女優・作家・歌手として多彩な才能を見せる著者が、二人の女性の交錯を軸に現代的テーマに迫った、温かでミステリアスな物語。
『トランスファー』改題。
〈巻末対談〉松井五郎(作詞家)×中江有里
歌手活動の再開は、この小説がきっかけだった
感想・レビュー・書評
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著者が、10代の頃から清純派女優として活躍して来たことは良く憶えている。実際に視聴した出演作も少なくない。その彼女がここ10年ほど「作家」としても紹介されたり、テレビに出演する姿も見ていた。でもその彼女の著作を実際に手に取って読んでみたのは本作が初めて。
読者を自然に惹き込み、著者自身の創作世界を表現豊かに紡ぐ力量があることには、正直少し驚いた。単に創作を趣味とする素人が書いてみた習作の類とは明らかに一線を画した、周囲が認める一定の完成度を持っていることは間違いない。その意味で、本作を読むこと自体は楽しく、最後まで一気に読み終えることが出来た。
ただ作品として「面白かったか?」と問われれば、話は違う。正直、あまり面白くはなく、読み終えた後、その内容や深みの物足りなさに少なからず失望してしまった。
一言で云えば、物語そのものが、すでに読んだこと/見たことのあるストーリーや種明かしの幾つかの寄せ集め的に思えてしまい、著者ならではのオリジナリティを強く感じることが出来なかった。それが残念。 -
派遣社員として空虚な毎日を送る三〇歳の大倉玉青は、五年前の自らの選択に端を発する、ある「秘密」を抱えていた――。〈巻末対談〉松井五郎(作詞家)