月人壮士 (中公文庫 さ 74-3)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 410
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122072961

感想・レビュー・書評

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  • 平安時代が舞台ということで、螺旋プロジェクトみたいな企画でない限り、自分からはなかなか手に取らない小説で、とっても新鮮でした。

    海と山の争いと、血の争いをもとにしたストーリー、かつ主人公の帝(聖武天皇)の周りの人の一人称を中心に描かれる複雑な人間関係は、ミステリーみたいな要素もあって終始ドキドキしながら読めました。

    学生時代は歴史の授業が苦手で全く興味をもてなかったのだけど、こういう話を読むと、今さらながらに歴史にも興味がでてきて、学び直してみようかなと思わされます。

    面白かったです!

  • ひたすら一人称。

  • 聖武天皇の苦悩を妻や官人たちが語る。3章あたりから面白くなってきました。今にも通じる皇位継承問題や心の葛藤が描写されています。特に最後の最後はドラマを感じました。歴史を学び直すいい機会でした。

  • 奈良時代の話がまず新鮮だった。固有名詞が難しすぎるけど慣れたら読みにくくない。100ページくらい進んでからやっと、「首さま」が聖武天皇だって気づいて自分でも遅すぎると思った。

  • ここらの時代は血縁関係が本当にややこしい。誰が誰のなんだっけ?と何度も家系図を見直しながら読んだ。
    対立というテーマを面白い形に落とし込んでいると思う。この苦悩があっての後の時代、という風に次作は書かれているんだろうか。同時執筆というから、触れられずに進むのかな。

  • 螺旋プロジェクト4冊目。

    聖武天皇崩御に際し、すでに明らかになっている遺詔のほかにあるのでは?と周辺に聞きまわる物語。

    章立ては話を伺った人が一人称で話している。

    山の一族天皇家に海の一族藤原家が絡みついていく様子が生々しい。

    この時代から藤原摂関家が席巻していく。

  •  聖武天皇の死後、その遺詔を探そうと道鏡と中臣継麻呂が各関係者を回り、首という人物の輪郭を明らかにしていく。
     漠然と聖武天皇には好意を抱いていた。東大寺や盧舎那仏を造ったイメージだろうか。澤田氏の『与楽の飯』からいかに現場が苦労を重ねていたかを知ってもなお悪い感情は生まれなかった。本作の各人物の証言はいずれも事実だけをとれば「愚君」と思える内容。ただそれでも首の「孤独」への同情と憐れみが感じられ、そこには澤田氏の思い入れを深く感じられた。
     藤原氏の血を受け継いだ初めての混血の天皇。それゆえに全き天皇になろうと苦心した孤独な天皇。一般的には認識されていない聖武天皇の姿に心が動かされた。今わの際に娘への愛情を想起する(これこそが彼の遺詔)演出は非常に心憎い。彼自身は娘への愛情はなかったと否定しているが、自身の苦悩を娘へ伝えないという信念に父の深い愛情を感じた。その選択が結果として恵美押勝の乱や道鏡事件を生んだのだとしても、政の正解と親子の正解は時に矛盾すると思う。孝謙天皇(阿倍)は悪いイメージが染みついているが本作を読んで彼女サイドの物語も読んでみたいと思った。
     全体を通して各人物の評価を読者に委ねている形式だと感じた。あからさまに良い/悪い人物はなく、だれもが人間らしく欲望と情で動いている。塩焼王や光明子がまさにそうで、小さい人物に見えるがそこに良さと彼/彼女の信念を感じられてよい。
     螺旋プロジェクト作品は本作のみだが、単体として非常に良い作品だった。

  • 螺旋シリーズとして読みました。
    内容も難しかったので表現はもっと現代的にしてもらったほうがよみやすかったかもしれない。

  • 母への想いと、出自の葛藤に引き裂かれる帝――国のおおもとを揺るがす天皇家と藤原氏の綱引きを背景に、東大寺大仏を建立した聖武天皇の真実に迫る物語。

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著者プロフィール

1977年京都府生まれ。2011年デビュー作『孤鷹の天』で中山義秀文学賞、’13年『満つる月の如し 仏師・定朝』で本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞、’16年『若冲』で親鸞賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、’20年『駆け入りの寺』で舟橋聖一文学賞、’21年『星落ちて、なお』で直木賞を受賞。近著に『漆花ひとつ』『恋ふらむ鳥は』『吼えろ道真 大宰府の詩』がある。

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