- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122073999
作品紹介・あらすじ
関東大震災から100年。震災直後から、雑誌メディアを中心に、多くの作家が手記、証言を残した。ジャーナリズムの最前線に立った文豪たちの記録は、私たちに何を語りかけるのか。鏡花、荷風、志賀、谷崎、芥川、与謝野晶子、野上弥生子、平塚らいてう、吉野作造ら、作家・文化人・著名人による文章から、関東大震災のさまざまな局面が映し出される。すぐれた筆致と眼差しが描く震災のリアル。
感想・レビュー・書評
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石井正己・編『関東大震災 文豪たちの証言』中公文庫。
関東大震災から100年目となる2023年。様々な文豪たちが雑誌や新聞に残した手記や証言から当時の様子を紐解く。文豪たちの残した記録は様々な場所、視点で描かれており、リアリティがある。
日本は、関東大震災、阪神淡路大震災、東日本大震災とこの100年だけで、3度の震災を経験している。日本列島が大陸プレートの狭間に存在している以上は、この先も大きな震災に見舞われるのだろう。これらの記憶を風化させないためにも、このような記録は大切にしていきたい。
関東大震災で失われた日本の伝統や文化の復興を願う永井荷風の『震災』という詩から幕開けする。一方、武者小路実篤は『用意はいいか』と題した詩の中で、職や生活を失った被災者の復興を訴える。萩原朔太郎が『近日所感』で朝鮮人の虐殺に怒る。
泉鏡花と久米正雄は自宅で被災したようだ。谷崎潤一郎は箱根の温泉で乗合自動車の中で被災するが、前日に宿泊した箱根ホテルの惨状を知るや、自身の無事を幸運だったと記している。志賀直哉は京都で関東大震災を知り、自宅に居る家人の無事を気に掛け、大変な思いをして帰京する。
小泉登美は火災旋風により多くの人が命を落とした被服廠跡で九死に一生を得る。野上彌生子は東京帝国大学が燃えたことを、知識の宝庫を失ったと憂う。与謝野晶子は自宅で被災し、16年来の原稿を焼失してしまう。
平塚らいてう、中西伊之助、吉野作造らは朝鮮人虐殺事件を悲しみ、芥川龍之介、菊池寛、寺田寅彦、夢野久作は被災した東京の街を見て、悲しみを覚えると共に復興を願う。
本体価格900円
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文庫 -
関東大震災から百年。荷風、志賀、谷崎、芥川、与謝野晶子、野上彌生子……文豪たちは何を見たのか? 彼らが書き残した巨大災害の諸相。文庫オリジナル。