日本の近代 9 逆説の軍隊

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124901092

作品紹介・あらすじ

時代を牽引した巨大組織は、なぜ「反近代の権化」となったか。

感想・レビュー・書評

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  •  『近代日本と軍部』で先行研究として言及されていたので読んだ。『近代』に比べ内容を軍に絞り、また省略すべきはしており読みやすい。先にこちらを読めばよかった。軍への全般的評価は概ね、他の主要な研究者と変わらない。
     書名の「逆説」とは、軍の近代化と成長、専門化が却って後に非合理性や狂気を生んだこと等を指している。具体的には、軍の政治不関与のための統帥権独立が後に軍の政治的行動に繋がったこと。軍の専門職化により政治勢力との出自の共通点を持たなくなり、対立するようになったこと。また専門職としての軍の自意識故に、「自らの考える国益」を追求するようになったこと。日露戦争で白兵戦に苦しみ攻撃精神の不足が出たからこそのこれらの重視が、後に非合理的な精神主義に転化したこと等。
     なお、宇垣一成については宇垣軍縮のためリベラルなイメージを持っていたが、陸軍省軍事課長時代には軍部大臣現役武官制擁護のため怪文書を配布したり、参謀本部作戦部長時代には外交調査会に対して軍事を知らない輩が口出しするのは言語道断と批判したり、とやはり傲慢な軍事テクノクラートでもあったようだ。

  • このシリーズはテーマ別の歴史を書いたもので、非常に新鮮な切り口で歴史を知ることが出来ます。教育・都市に続き、軍隊を明治維新以降の逆説続きの陸軍史を通し、統制派と皇道派の対立、仮想敵国のソ連とではなく、米英と不本意に戦うことになってしまう経緯、そしてどうして8/15には最終的に天皇にさえも弓を引こうとする狂気の集団になっていったのか、司馬遼太郎が「坂の上の雲」で明治と昭和の軍の考えの変化を書いていたのとは、ちょっと違った観点から考えさせてくれます。

  • 「歴史」分野第4位

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授

「2020年 『戦争のなかの日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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