線形代数の世界: 抽象数学の入り口 (大学数学の入門 7)

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130629577

作品紹介・あらすじ

現代数学を支える線形代数.本書は,ジョルダン標準形や,双対空間,商空間,テンソル積などを解説した,さらに進んだ線形代数を学びたい人たちのための教科書である.数学特有の「ことば」や「考え方」についても随所で説明.基本的例・問題も多数.

※本書について斎藤先生が「UP」にエッセイをご執筆されています.こちらのPDFファイルをご覧ください.

感想・レビュー・書評

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  •  数学科志望の友人に薦められた本。前書きにあるように、読者が「ベクトルや行列、行列式といった、基本的対象にはある程度慣れている」ことを前提にしている。
     普通の線形代数の入門書(例えば僕が持っている本で言えば齋藤正彦先生の線型代数入門とか)で扱うであろうジョルダン標準形などの内容は3章までで、4章以降は双対空間やテンソル積といった、より発展的・抽象的な話題を解説している。

     3章までの内容は既に完璧だと信じ(そんな筈は無いのだが…汗)、僕がちゃんと読んだのは4章から。また、6章も知っている内容だったので飛ばした。とは言っても、線形写像の完全系列(§2.5)は完全に知らない内容だったし、長い間モヤモヤしていた部分空間の和と直和の関係は、この本の解説で漸く得心がいった。結局、抽象的な直和と部分空間としての直和の間に自然な同形写像があるので、それによって同一視していた訳だ(p.22)。これを解説してくれている本はあまり無い気がする。4章以降は抽象的と書いたが、記述が分かりやすく読み進めるのにそこまで苦労しなかった。8章のテンソル積の定義のややこしさには流石に面食らったが。
     ちょうど勉強している相対論の共変/反変やそれらの縮約はまさに本書の内容で、非常に勉強になった(それを期待して読み始めたのだが)。本文の随所にある「余談」もまったく余談などではなく、大事なことが書いてある。演習問題も豊富かつその解説もかなり丁寧で、名著と思う。

    1 線形空間
    2 線形写像
    3 自己準同形
    4 双対空間
    5 双線形形式
    6 群と作用
    7 商空間
    8 テンソル積と外積

  • 線形代数のうち,代数学から見たときの性質に焦点を当てた教科書,今後必要になる知識を身につけるのに良い。一通り群環体を学習した後に本書を用いると効果的だと思う。

  • 初斎藤毅先生。
    歯ごたえはかなりある。
    圏論的な扱いは難しいけど新鮮。

    慣れてくると、とんとんとかなり先まで行ける。
    通して10日間、のべ6日間で読了。

  • 札幌の地下歩行空間と渋谷のスクランブル交差点とどちらが狭くて人が多くて不快かと訊かれたら渋谷である(主観だけど)。一方で通行人同士でぶつかりそうになる頻度はどちらが多いかと訊かれたら札幌である(これも主観か)。ブルバキのスタイルを踏襲した本書。そもそも線形代数がブルバキの産物かも知れないが、それにしても他の教科書に比べて異彩を放ち云わば哲学書。ベクトルと行列の演算練習のためだけなら違う本が沢山ある。しかし札幌と渋谷を比べて分かるように自由の為にはそれを可能にする秩序が必要で自由に数学をやる為の1ステップ。

    東大の全関係者に申し訳なく悪気はありませんが、東大って良くも悪しくもアカデミックだなと思う。60年代生まれ、自分より4つ年長に過ぎない著者にしてこの著述。線形代数というよりブルバキの本だ。そりゃフランス流に何でもエレガントに整理し構築出来たら格好いい。線形代数はピッタリな体系だ。だけど普通の物事はそんなに格好良くいかない。泥臭く計算して答えを出すそんな力仕事も世の中には必要だと思うのに、それを否定されている気分になる。かといってパラパラと捲って全頁から漂うアカデミックな薫りは心底心地好い。

  • 2010 前期「線形代数学続論」(藤野修) 教科書.

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著者プロフィール

東京大学大学院数理科学研究科教授

「2020年 『数学原論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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