読む・打つ・書く: 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々
- 東京大学出版会 (2021年6月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130633765
作品紹介・あらすじ
ようこそ、みなかワールドへ! 理系研究者を生業としながら,数多の本を読み,新聞やSNSなどさまざまなメディアで書評を打ち,いくつもの単著を出版してきた〈みなか先生〉からの〈本の世界〉への熱きメッセージ.さあ,まずはたくさん本を読もう!
感想・レビュー・書評
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理系研究者であり、一般書の著作も多い著者が、本との関わりを振り返った本。
書名はもちろん「飲む・打つ・買う」をもじったものだが、この場合の「打つ」は「書評を書く」ことを指している。
ふつう「書評を打つ」なんて言い方をするかなァ……と首をかしげてしまう。まあ、「書評を書く」としてしまうと3つ目の「書く」とダブってしまうし、強引に「飲む・打つ・買う」に引っかけるため、あえて「打つ」としたのだろう。
全3部構成。第1部「読む」は読書論、第2部「打つ」は書評論、第3部の「書く」は本を著すことをめぐる執筆論となっている。
いずれも、著者自身の体験をふまえた実践的考察である。
第1部の読書論、第2部の書評論にも卓見はあるものの、私は第3部をいちばん面白く読んだ。
著者は理系研究者だから、ライターの私とは書く本も立ち位置も異なる。それでも〝本を書く者〟という意味では同業だから、著者の方法論から学ぶべき点も多かったのだ。
四半世紀前に初の単著を書いたときには「脱稿するまで何年もかかってしまった」という著者が、本書は「たった3ヶ月で」書き上げたという(「謝辞」)。それくらい、著者は本の書き手として成長したわけだ。
何年もかかったプロセスを3ヶ月に短縮した(本が異なるから単純比較はできないにせよ)ほど、書籍執筆の生産性を向上させた舞台裏が、第3部で明かされているのだ。
そのノウハウは、「細分目標」「公開加圧」「拙速主義」という3つのモットー(意味はなんとなくわかるはず)を中心としたもの。そして、もう一つのキーワードが「整数倍の威力」だ。
《本を書こうとするならば、唯一たいせつなことは「飽くことなく毎日続けること」だ。たとえ一日一枚(400字)しか書く時間がなかったとしても、一年間続ければ365枚で新書一冊の分量に、さらにもう一年続ければ700枚を超えるので本書と同じくらいの厚さの単行本になるだろう。読者のみなさんにはこの単純きわまりない〈整数倍の威力〉によりびっくりするほどするすると本が書けてしまうことをぜひ体験してほしい。》(「本噺納め口上」315ページ)
理系研究者ならとくに学ぶべき点が多い本だろうが、それ以外でも「本を書いてみたい」と思っている人なら一読の価値あり。 -
物性研の所内者、柏地区共通事務センター職員の方のみ借りることができます。
東大OPACには登録されていません。
貸出:物性研図書室にある借用証へ記入してください
返却:物性研図書室へ返却してください -
ストイック過ぎて私にはと思うけれども、そう建設的な批判や執筆ができればとも考えるきっかけになった
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#HaKaSe+×自然科学系図書館
金沢大学附属図書館所在情報
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https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BC08100186?caller=xc-search -
「書く」に関して、単純なことだが、はっと気付かされる指摘があった(ネタバレを避けるためあえて具体的には書かない)。
注に関する著者の考え方にも納得。
ところで、書評を「打つ」っていうかな。 -
↓貸出状況確認はこちら↓
https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00288485 -
読む本の探し方、読み方から執筆まで。本の探し方、読み方がわからない方、まずはこの本から始めてみては。
所蔵情報:
品川図書館 407/Mi36 -
読売読書委員も務めていた研究者による「本との向き合い方」についてまとめた本。この本は、著者が宣言しているとおり「自分のため」に書いたもの(著者は、本は自分のために書くものだ、と主張している)なので、専門書の評や、活動につなげていくための読書記録をどうしようか、試行錯誤のヒントとして繙いた。
専門書を読みほぐし、再構築するというのは研究そのもの、しかも(すでに出来上がった当該図書が扱う)すでに仕上がったテーマを再度研究することに相当するので、普通の本のように読みこんで評をするというのは難しい。一方で、(数学分野に限ってみれば)専門書の書評というか、紹介や批判というのはほとんど見ない。何から手を付けていいか…という点から考えると、専門書の拾い読み(と言って悪ければサーベイ)をして概要整理、評価までの論評を積極的に出すべきではないか、そのための仕組みというか、やり方を整理する活動も価値があると感じ、意欲がわいてきた。
本書で気になった点として、資料としての本の扱いに関する記述がある。紙の本は(いち研究者)一世代で終わってしまうような扱いはまずいと思う。つまり、大学・研究所の図書館の本は汚す…書き込みや付箋・ドックイアー…ことなく大事にすべきではないか。ただ、本は大きさ、重量、高温多湿である日本の気候に見合った保管方法、検索閲覧手段方法を考慮すると、非常に管理コストのかかる資源・資産であることには間違いない。電子化された図書資源の扱いについても、実状と課題は述べられているものの、これはインターネット時代以前から分かっていた話で、解決法に着手できていない/着手しない理由も掘り下げて考える必要があるだろう。
本書はしばらく手元に置いて、読む/打つ活動のたびに参照することになると思う。気づいたことはまた追記する。
日本の古本屋 / 『読む・打つ・書く —— 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々』
https://www.kosho.or...
日本の古本屋 / 『読む・打つ・書く —— 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々』
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