東大の教室で『赤毛のアン』を読む 増補版: 英文学を遊ぶ9章+授業のあとのオマケつき

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130830652

作品紹介・あらすじ

村岡花子の名訳『赤毛のアン』には,原文のある重要箇所がカットされている.その「なぜ」を追うことからみえてくる,「小説というくわだて」を構成するいくつかのカギ…….「アン」のほか,ホビット,ジェイン・エアなどを題材に,英文学を楽しむポイントを講義.翻訳論の「オマケ」を増補した決定版.

感想・レビュー・書評

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  • 「赤毛のアン」に関する部分だけを読んだ。最後のクライマックスである「マリラの告白」(マリラがアンに、愛していることを口に出して言う)を村岡花子がバッサリ省略した理由について、考察している。
     マリラを「怖くて厳しいお婆さん」という位置づけにしてしまい、この物語をアンのシンデレラ物語に絞って、新しい物語として創作したのだという。 
     この山本先生も、村岡花子を尊敬していて、この選択を肯定している。

    しかし、私は裏切られたという気分を拭い去れない。子どもの頃あれほど繰り返し読み、一番の愛読書として親しんできた「赤毛のアン」が、モンゴメリーの作品から離れて村岡花子の作品だった…。そして、大人になって原書を読んだ時にマリラに共感して号泣したのは私が歳を重ね経験を重ねてきたから感じ方が変わったのだと信じていたのに、実は違う物語を読んでいたからだったのだ!

     でも、一方で、日本の子どもたちがあれほど夢中になったのは、村岡花子を通った「赤毛のアン」だったからかもしれないという説も認めざるをえない。 そのあたりはどうなんだろう。
     大人気だったアニメは私は見ていないが、そちらはモンゴメリーの原作に忠実で、村岡花子の省略した場面もしっかり含まれていたという。
    だとすれば、省略する必要はなかったのではないか。
    アニメのマリラの口調はどうだったのだろう。マリラの性格はどのように描かれていたのだろう。村岡花子が苦渋の決断で(?)省略した部分を難なく入れたアニメを、見てみたい。

  • しばし積読

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著者プロフィール

東京大学名誉教授、順天堂大学健康データサイエンス学部特任教授。1954年生まれ。1997年東京大学大学院総合文化研究科教授、2019年昭和女子大学国際学部特命教授。『東大の教室で「赤毛のアン」を読む』(東京大学出版会、初版2008年、増補版2014年)、『東大講義で学ぶパーフェクトリーディング』(DHC、2010年)、『名作英文学を読み直す』(講談社選書メチエ、2011年)、『読み切り世界文学』(朝日新聞出版、2015年)、『翻訳の授業』(朝日新書、2020年)ほか。翻訳に『ホビット ゆきてかえりし物語』(原書房、1997年)ほか同シリーズ、ブレンダン・ウィルソン『自分で考えてみる哲学』(東京大学出版会、2004年)など。

「2023年 『翻訳論の冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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