ピカソを見わけるハト: ヒトの認知、動物の認知 (NHKブックス 747)

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  • Amazon.co.jp ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140017470

作品紹介・あらすじ

ヒトはどこまでハトか。近年、明らかにされつつある動物たちの意外な知的能力。ハトやオウム、アシカ、イルカなどの知覚・記憶・言語・推論能力を興味深く紹介し、人間の心と比較する。

感想・レビュー・書評

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  • 1995年刊行。著者は慶應義塾大学文学部教授。人間以外の動物(大半が哺乳類か鳥類で、それ以外は社会性昆虫のさわりのみ)の認知、記憶、言語(鳥の歌声やオウムの物まね)等の情報伝達(類人猿、海豚等)を通じ、人間の特殊性と他の動物との親縁性、感覚器官や発声器官の違いによる差などを解読していく。決定的な違いがあることは明らかだが、人間以外の動物が本能のみで生活しているというのも明らかに誤っていることが伺える。つまり、人間以外も、環境と遺伝との相互作用によるのだ。特に、多様な環境の中にいた鳥類の海馬が増大する点。
    人間に類似する推移的推論能力を備えている点(ただし、学習理論で説明が可能な程度)、鳴禽類はとりわけ言語野が左に偏り、また利き足が存在する点、自己と同種かどうか(つまり生殖可能性)の判別は、種により違いがあるが、嗅覚、視覚、視覚と聴覚の混合などで行っており、同種なら個体分別も可能なレベル等々。読み易いのに、色々な情報が実験過程と共に記載されている。

  • [ 内容 ]
    ヒトはどこまでハトか。
    近年、明らかにされつつある動物たちの意外な知的能力。
    ハトやオウム、アシカ、イルカなどの知覚・記憶・言語・推論能力を興味深く紹介し、人間の心と比較する。

    [ 目次 ]
    序 動物たちの心の世界
    1 ハトの見たピカソ、ハトの見たサザエさん
    2 鳥たちの記憶
    3 ハトの三段論法
    4 アレックスの世界
    5 アシカやイルカと話すには
    6 なかまを見わけるには
    7 歌を忘れるカナリアの話
    終 知性はわたしたちだけのものか

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • (2005.06.30読了)(2003.05.02購入)
    副題「人の認知、動物の認知」
    ●ハトはピカソの絵とモネの絵を見分けられるか
    「ハトを使って絵画を見分ける実験を行ってみよう。実験では10枚のピカソの絵と10枚のモネの絵を使った。ハトはおよそ20日間程度の訓練でこの区別ができるようになる。20枚の絵を丸暗記して覚えただけのことかも知れない。しかし、ハトは訓練に使わなかった、初めてみる絵を見せられた場合でも、それがモネの絵であるかピカソの絵であるかを区別したのである。先ほどのハトに、セザンヌ、ルノアール、ブラック、マチス、ドラクロアの絵を見せてみる。モネに反応する訓練を受けたハトはセザンヌやルノアールにも反応し、ピカソに反応する訓練を受けたハトはマチスやブラックにも反応した。」
    ●場所を覚える
    「ホシガラスに餌となる種を与えて、それを自由に隠させ、3,4日後にそれを探させる。ホシガラスはおよそ52から78%の成功率で隠した餌を見つけることができた。しかし、岩や木などの目標を動かしてしまうと成功率は低下するので、これらの比較的大きな目標を目印として場所を覚えているらしい。」
    ●クーリッジ効果
    「言い伝えによれば、大統領夫妻が養鶏場を視察した時に、先に訪れた夫人が、案内係から「鶏のオスが一日に何回も交尾をする」という説明を聞いたところ、「それを是非、夫に話してください」といわれた。さて、その案内係が大統領にその伝言を伝えたところ、大統領は「きみ、それはいつも同じ雌と交尾するのかね」とたずねた。係りが、違う雌と交尾する、と答えると、大統領は「今度は是非、女房にその話をしてやってくれたまえ」といった、という。」これをアメリカ大統領の名前にちなんでクーリッジ効果という。

    鳥や動物の認識や思考やコミュニケーションについていろんな人の実験をあげながら鳥や動物の認識、思考がかなり人間と近い可能性が述べられている。訓練の仕方を工夫すれば、人間とのコミュニケーションも可能なものもある。

    著者 渡辺 茂
    1948年 東京生まれ
    1970年 慶應義塾大学文学部心理学専攻卒業

    (「MARC」データベースより)amazon
    動物たちの不思議な知性の世界。ハトやオウム、アシカ、イルカ等の知覚・記憶・言語・推論能力を興味深く紹介。著者による最新データを中心に、比較認知科学から知性の起源やヒトの認知の特性に迫る。

  • あの親指の先っちょほどの脳みそで、驚くべき認知能力を披露してくれるハトさんたち。
    それを分かりやすく面白く紹介してくれる著者さんに拍手です。

    ハトはピカソとモネだけでなく、ゴッホとシャガールも、サザエさんとマスオさんも見わけます。そんなハトたちには、思考力―――即ち心があるのか?

    最終的にはその問いに向かう一冊です。

    因みにワタクシ、この論文読んだことありますけど、

    シャガールとゴッホ、見分けが出来ません。

    ・・・・・うん、
    教養って、なんでしょうね。

    サザエさんとマスオさんは見分けられます。
    大阪出身なのに、大阪弁を喋らない入り婿がマスオさんです。

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著者プロフィール

慶應義塾大学名誉教授

「2023年 『動物に「心」は必要か 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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